久しぶりの読書ネタ。
文章ボリュームも多かったこともありますが、
内容が内容だけにページを捲る手がいつもより遅かった一冊でした。
遅かった、とはいっても、例えば移籍の交渉ごとのシーンのような、先が気になってしょうがないパートなんかは、
イッキに読みたい衝動から、サクサク読み進めてしまいました。
ただ、どうしても、本人の心理描写が深みにはまっていったり、またその時の
家族や身近な人々の葛藤を描いたシーンは、淡々と書かれているが故に
その重さがひしひしと伝わってくるように感じて、つい立ち止まりながら、
読み進めなくてはなりませんでした。
言い訳をすれば、身近に「うつ病」を患った方がいなかったために、この症状についてよく知りませんでした。
今回、読了してみて気づいた事は、「『うつ』は『病(やまい)』である」ということです。
気のもちようでしょ、と今までの自分は恥ずかしながら思っていました。
ヤなことあっても気分転換して、切り替えればいいんじゃないの、と。
でも、この病は神経系の動きが原因で「物事を悪い方に解釈する」ように、自分の意志とは違うところで
コントロールされてしまっているんだそうです、ざっくりですが。
腕を折ったら動きが制限されるように、目をケガしたら視界が制限されるように、
うつ病に罹ったら思考が制限されてしまう。
自分自身、まだこの考えが腑に落ち切っているわけでは、正直ありません。
ただ、将来、身近な人が同じような状態に陥ってしまったとき、
「気にすんなよ」と笑い飛ばすことが、必ずしも良いことではない、ということに
気づけたことは小さいけれど大きな気づきだったと思っています。
訳者が仰っているように、読後の"落としどころ"はいろいろあることと思います。
この本を、悲劇のヒーローの伝記、の一言で片づけることなく、
誰しもが「この病と関わる可能性がある」ということを改めて考えるキッカケになったらいいな、と感じました。