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『The Days After 3.11』原発事故は福島だけの課題?:和田智行さん#6

多種多様な人が集まって各々自己実現のために突き進む場、それが小高ワーカーズベース。
会社のビジョンや和田さんの今後やっていきたいことを聞いてみた。

「今の会社を大きくしようとか、そんなこと全然興味なくって。 どんどん社会が変わってく中で、その変化に応じた事業を自分自身も最前線で立ち上げられるような、そういうプレイヤーでずっと居続けたいなっていう風に思います。
将来的には僕らがここでやってきたこと、地域の課題の捉え方や向き合い方、あり方、そういったものを他の地域に役立てていきたいです。例えば少子高齢化がめちゃくちゃ進んでる地域に、僕らはうまくここでやってることを伝播させていくような、そういうことができたらいいかなという風に思います。」

避難生活中に大きく価値観が変わったということであったが、東日本大震災はどのように捉えているのだろうか。

「これは非常にセンシティブな話になってしまうかもしれないのですが。 もちろん、震災自体はとても不幸なことです。
僕自身もいろんなものを失ったり、辛い思いとか、恐怖も含めて、いろんな感情と対峙しながらやってきたので、思い出したくないこともいっぱいあります。
しかし、いずれにせよ、日本全体が衰退に向かっている中で、僕としては何かやり直しをするチャンスが与えられた、そういう災害だったかなという風に捉えています。」

「特に原発事故が起きて住民がゼロになるなんてことは、 恐らく今後もないと思うし、まああったらいけないことなんですけど…。そうなった時に住民ゼロからこれからの地域が持続していくために、どんな社会、どんな町を作ればいいのかを考え、実際行動に移すきっかけを作ってくれたという意味ではプラスに捉えています。被災したからには、しっかり活かさなきゃいけない機会だなという捉え方をしてますね。」

ネガティブとかポジティブとかではなく、起こった現実と向き合い、もがき苦しみながらも今の自分に何ができるのかを真剣に考え、取り組んでいる様子は、地域衰退に向かっている現地の人は学ぶことができるチャンスだ。
ふと疑問に思ったことがある。
なぜこのような課題先進地の活動がそこまで世の中で知れていないのだろうか。もっと大きく取り上げられても良いのではないかと感じてしまう。
メディアにはどのように取り上げられているのだろうか。

「メディアが報じている復興も現実です。
しかし僕たちが伝えたいことは、今後日本、世界で起こる現実に向き合っているということです。
南相馬や福島の知名度が上がる、応援したいという人たちに情報を届けてくださる意味では非常にありがたいなと思っています。
一方、僕らが伝えたいこととか、届けたい価値観みたいなところは無視されてしまうことが往々にしてあります。」

確かにテレビや新聞は、最初から構成やイメージがあって取材やインタビューすることが多い。大変な思いをした被災者が復興のために前向きに頑張っています!や打ちひしがれた辛い経験の中でも地域のために何とかやっています!といったストーリーが多い。
「店も仕事もゼロのまちに暮らせないよね」、「商売なんて成り立たないよね」そういった避難者の声を大きく取り上げて、復興のために動いているヒーローものを作りたがるメディアも多い。

「僕らは地元のためにもやってます。
ただそれは結果として、地元が良くなるという話であって。僕らがやりたいのはもっとその先というか、この地域だけ復興しても、世の中良くならないと思っています。」

福島で起きた原発事故を福島の課題だけにするのでなく、日本、世界の課題として各自が自分ごととして捉えていく。
被災地が復興してよかったねという単純な話ではない。
世界のありとあらゆるところで自然災害、人的災害は起きている。

「世界中の人たちがこの問題を考えなければいけないからこそ、僕らは世の中がこれから良くなっていくための社会のあり方やモデルケースを作っていかなきゃいこうと思ってます。
僕らとしては、広く伝えて、共感してくれた人に協力してもらったり、仲間になってもらったりしたいんですよね。
しかし、どうしてもその手前の福島というところでその先が伝わらない。
震災12年経った今でも当時からメディアの捉え方は変わってません。」

視野が広い。
先に人を帰還させるのか、商売を作るのか。
そんなトピックをメディアが論じている間に、仕事と暮らしを同時に実現させる行動を起こしているのだ。
一部の住民には強い諦めがあったが、若者がまちに足を運ぶ姿が増えてきたことによって、地元の住民も両方を同時に実現できるかもしれない、そう思い始めてきたようだ。

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小高ワーカーズベース・和田智行さん

福島県南相馬市小高区にて、宿泊できるコワーキングスペースやガラスアクセサリーの工房を運営。また創業支援も手掛ける。
『地域の100の課題から100のビジネスを創出する』をミッションに掲げ、
震災後、人が居住できない時から様々な事業創出に着手する。
南相馬市小高区は、東日本大震災の原発事故で避難指示区域となり、2016年に避難指示解除される。

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