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【工事中】 これはDHLのTシャツではない、あるいは2010年代のファッションにおけるアイロニー - 21世紀のロゴマニア(III)

秘密は、自らを閉ざそうとするのと同じように自らを開陳する。秘密はモード(ファッション)のようだ。モードは際限なく下の階級に自らを写し取らせるに任せ、そして自らを秘教的なものにとどめるためメニューを、ワードローブを刷新し、際限なく他の場所に逃げ込む。モードとは伝播と引き潮の交代であり、新奇さを追い求める模倣なのである。(ヴラジミール・ジャンケレヴィッチ『イロニー』) この一節自体に然程の面白さはもはやない。モードはトリクルダウンし、下の階級は上の階級を模倣する。ウェブレン以来

    • SNS時代のポップ・アイロニスト、ジェレミー・スコット

      注:以下の文章は、「これはDHLのTシャツではない、あるいは2010年代のファッションにおけるアイロニー - 21世紀のロゴマニア(III)」というテキストの一部として書かれました。従って、この文章の前半で行ったアイロニーに関する説明など不十分なところがあります。工事中の本文を公開していますので、アイロニーとファッションとの関わりや、私の(暫定的な)理論的立ち位置など知りたい方は参照してください。 --- イタリアのジャン=ポール・ゴーティエと呼ばれたフランコ・モスキーノ

      • 「女だから」は波打ち際の砂の表情のように消えていくのか

        西武・そごうの元旦広告が話題になっているようだ。 パイ投げのパイを顔面にぶつけられた後であろう女性のイメージに3つのコピーが重なる。女性の右の余白には大きな文字で縦書きの、「女の時代、なんていらない?」(①)そして左下にはそれより小さな文字で、以下の文言(②)。 「女だから、強要される。 女だから、無視される。 女だから、減点される。 女であることの生きづらさが報道され、 そのたびに、「女の時代」は遠ざかる。 今年はいよいよ、時代が変わる。 本当ですか。期待していいので

        • 21世紀のロゴマニア(II) - ロゴにとってREALとは何か

          (✳︎ 非常に分量が多く読みづらいと思われるので、前書きとして要旨をまとめておく:本稿は、現代ファッションにおけるロゴの使用を考察する論考『21世紀のロゴマニア』の一部として書かれた。Iでは新たなロゴの美学を象徴する例としてシュプリームを取り上げたが、IIではロゴ使用の意味と意義をその歴史を振り返って掘り下げ、現代におけるロゴ使用を代表する例としてグッチを取り上げる。そこでは、現代におけるロゴが、ロゴそれ自体に対する批判性を中に含みこんでいるというテーゼが取り出されるだろう。

        • 【工事中】 これはDHLのTシャツではない、あるいは2010年代のファッションにおけるアイロニー - 21世紀のロゴマニア(III)

        • SNS時代のポップ・アイロニスト、ジェレミー・スコット

        • 「女だから」は波打ち際の砂の表情のように消えていくのか

        • 21世紀のロゴマニア(II) - ロゴにとってREALとは何か

          21世紀のロゴマニア(I)

          1974年生まれのケイト・モスは、アンチ・スーパーモデル・スーパーモデルであった。彼女がモデルとしての仕事を始めたのは1988年のことである。クロイドンに育った少女は、すきっぱで、幾分斜視であり、80年代的な美のスタンダードに比べるとファニーフェイスといえたし、グラマラスであることが美しいという価値観が支配的であった時代に、その肢体は少年のようにほっそりとしていた。しかしこの透き通ったヘーゼルの眼をした少女に、なぜか誰もが惹きつけられたという。1992年、カルバン・クラインは

          21世紀のロゴマニア(I)

          Vaporwaveと革命の A E S T H E T I C

           Vaporwaveという音楽の存在について少し調べていた。音楽的には、1980-90年代の大量消費社会から生まれた耳馴染みの良い音楽を、ピッチを変え、スローにするなどした(こうした変形の様式をスクリュウと呼ぶ)形でサンプリングし、ループさせるといったていのものである。聴いているとノスタルジックな気持ちになると同時に、なにか不安をかきたてるところがある。  サンプリングソースは害のないポップス、企業のCFなどのBGM、あるいはショッピングモールで流れているような平和な音楽(ミ

          Vaporwaveと革命の A E S T H E T I C

          『オーセンティシティについて』について

          ファッション批評誌Vestojの第8号特集は『オーセンティシティについて(On Authenticity)』であった。「オーセンティシティ」は「オーセンティック」であることであり、「オーセンティック」というのは「起源のはっきりとした」「真正な」という意味を表す(OED)。ファッションをこの言葉で分析しようというのは面白い試みに思える。実際に、現代ファッションにおいて「オーセンティック」であることは重要なことのようだからだ。マルジェラはレプリカにその起源を示すラベルを貼り付け、

          『オーセンティシティについて』について

          翻訳 :「オーセンティシティについて」 « On Authenticity » (Vestoj)

          この記事は公開を終了しましたが、個人的なアーカイブとして置いてあります。理不尽な値付けはそのためです(設定できる最高額にしてあります)。万が一にも無いとは思いますが、購入はご遠慮ください。

          ¥10,000

          翻訳 :「オーセンティシティについて」 « On Authenticity » (Vestoj)

          ¥10,000

          携帯

          携帯でつねに繋がっていないというのは、ふわふわとして変なものだ。自分がなにも変わっていないにもかかわらず変わったような心地がする。それは気づかないほど緩やかだが、忘却のようにある時点からは決定的で不可逆的な変化で、例えば僕らが明日から二次元に生きるとして、今日まで生きていた三次元の思い出を明日からは奥行きを失ったものとして思い出すのだろう。そんなことを考える。 色々な消去あるいは上書き保存の中で僕らは生きているのであって、この感慨も変化の波に洗われて消えていく砂上の文字に対

          ノームコア派なるものはない - K-Hole再読

          かつて、いわゆるノームコアに、我々は服の未来と終着点を夢見た。しかしその死が言われて久しい。現在は装飾的なファッションが台頭し、普通でないことを誇りとするストリートウェアが勝鬨をあげている。ノームコアというのは言われるように死に絶えたのだろうか。そもそも、それが意味するのはそもそもトレンドの死ではなかったか。トレンドの死がトレンドとして消費されるとはどういうことなのか。ノームコアというコンセプトは間違っていたのか。 本稿の主旨は、ノームコアという概念を、記号による差異化とい

          ノームコア派なるものはない - K-Hole再読

          Vêtements 2017 AW - ソーシャル・ユニフォームズ

          “I think of uniforms quite a bit,” said Demna, 35, referring back to a childhood spent in the Soviet Union. "I love social uniforms – what the message means for somebody. I used to wear security T-shirts and people would think I am a securi

          Vêtements 2017 AW - ソーシャル・ユニフォームズ

          Raf Simons インタビュー

          ラフシモンズのインタビューについてHYPEBEAST経由で知ったので、自分が面白いと感じた箇所を載せておく(大部分がKvadratとのコラボレーションのことだったので、全て読まなくても良いと思う)。 http://www.wmagazine.com/story/raf-simons-kvadrat-2017-collection-new-york-art-dog https://amuse-i-d.vice.com/raf-simons-material-boy/ "S

          Raf Simons インタビュー

          岡崎京子展@伊丹市立美術館

          はっきり言って期待していなかったが、良かった。最初に作者の人生をコンパクトに紹介し、そこから時系列順に作品を並べていくオーソドックスな構成。変化がわかりやすくてよかった。漫画の内容と特色を都度都度キャプションで簡潔に説明していたのも親切。そして、時代を感じさせる資料の充実。一応貶しておくと、正直こういう原画の展覧会においてタッチやマチエールを鑑賞することにどれだけの意味があるかわかんないから、展覧会としてどれだけの意義があるのか疑問だった。だけど、画業を整理して提示するってい

          岡崎京子展@伊丹市立美術館

          私が服を好きになった理由

          #私が服を好きになった理由 素敵なバトンですよね。先人たちの文章から溢れ出すファッションへのパッションを眩しく見ていたところ、ねこぱんさん(@catandloaf ; cat loafをねこぱんとするセンス!)からバトンを頂いてしまいました。お引き受けしたはいいのですが、適任なのかどうか…。初めにお断りしておくと、僕はファッションを生業としているわけでもなければ、可処分所得をほとんど服にぶっこむという生き方をしてきたわけでもありません。服に人生を救われたわけでもなければ、ファ

          私が服を好きになった理由