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「Japandi」という私の新しい暮らし方

自宅のキッチンとリビングのリノベーションを思い立った2020年、準備のために最初に手をつけたのが、インスタグラムでの情報収集だった。#interior #roomdecor #kitchen など引っかかりそうなそうな#タグをつけて検索してみる。すると10年ぐらい前はわざわざ雑誌や書籍を買い求めなければ収集できなかったような、海外のおしゃれなキッチンや家のビジュアルが次々と出てきた。

『ELLE DECOR』をはじめ海外インテリア雑誌の各国アカウントも参考になった。そこから建築家やインテリアデザイナーなど、雑誌がフォローしている(されている)アカウントを辿って探し、気になる投稿を保存していくのも有益だった。直感で心に響いた美しい部屋のポストを、ただただ保存していく。気がつけば私のインスタグラムの「保存済み』ページは世界中の素敵なキッチンやリビングの写真で埋め尽くされていた。

"インテリア好き”ではあったものの、私はこの分野に精通していたわけではない。当時は幼稚園児の子育てにまっしぐらの専業主婦で、建築やデザインの予備知識もなく、自分の勘だけを手掛かりに収集を続けた。しかし、いざ集まってきたものを眺めてみたら、どれも似たようなルームデザインで共通の特徴があったのだった。

ベージュやグレージュ、オートミールをメインに、白やグレーなどのシンプルな色でまとめられたカラーパレット。木をメイン素材にした家具やキッチン。シンプルでミニマルなルームデザイン。一年後、設計会社に提出した私の「インスピレーションマップ」には気づけば、同様のトーンでまとめられた写真ばかりが並んでいた。

海外が注目する「Japandi」という新しい暮らし方

私がリノベーションに望んだインテリアデザインが「Japandi(ジャパンディ)」という名前で、海外で注目されていたことを知ったのは、それから3年が過ぎた2023年、つまり今年に入ってからのことだ。「Japandi」とは「Japan」と北欧を意味する「Scandi」を組み合わせた造語。日本の美意識・伝統と北欧のデザインが融合し、互いを尊重しながらも補完し合って生み出された新しい暮らしのスタイル。主にインテリアや建築の世界で使われている。

海外ではいくつか本も発売されている。
『JAPANDI STYLE』Agata & Pierre Toromanoff著

「Japandi」という言葉に出会うまでは、私は自分のことを謂わゆる「北欧インテリア好き」な人間としてしか捉えていなかった。北欧のモノが好き、デザインが好き、暮らしが好き。しかし今ではその認識は変わり、「Japandi」という新しいスタイルの中に自分が最高にフィットする心地良い居場所を感じている。暗いトンネルの中を何十年も彷徨ったあげく、アラフィフにしてようやく運命の場所(言葉)に出会えたような感覚を今味わっている。

フラットに広がる、美しい融合の世界

私が「Japandi」に惹かれるのは、「日本」や「北欧」という固有のエリアの”モノ”を”所有”することではなくて、地理的・物理的概念を超え、目には見えない互いの"価値観"を互いに尊び合い、自然な流れの中でそれぞれが助け合いながら成立する場所と共にいられる幸せを感じるからだ。

自然を尊ぶこと。手仕事を慈しむこと。純粋な形を愛すること。細やかなディテールへの注意深さ。仕上げの繊細さ。心の静けさ。

これらは日本と北欧のモノに囲まれた暮らしに限定されるものではない。実際に我が家には北欧の家具、日本の骨董なども多くあるけれど、韓国の工芸品、東欧の骨董花器など、同じ価値観をもつ様々な国のアイテムが自然に馴染みながら部屋の中で調和し、静かに佇んでいる。

北欧の照明、薩摩焼の花瓶、韓国の乳瓶などが並ぶリビング。花はアムステルダムスタイルと呼ばれるオランダのアレンジで。
アメリカ・オレゴン州で買い求めた丸太、日本の木工作家の時計などが静かに調和


東欧の骨董花器、デンマークの照明、イギリスのテーブルも一つの世界に自然に馴染む


そしてそれは、これからの新しい「世界の繋がり方」を示唆するようでもある。今、私が自身のInstagramというグローバルフラットなプラットフォームを通じて、価値観を共有し、世界の様々な人々と急速に交わりを広げているように。

地理的・物質的にとらわれず、フラットな心で交わり合い、助け合う世界。
どこに暮らしても、そんな美しい生活が今、目の前に現れている。

SNSがバーチャルな世界だとすれば、Japandiはリアルな世界で。



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