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【フリー台本】心に咲く奇跡の花



◇アイリス…盲目の少女
◆アステル…異形の少年

少年、少女の設定ですが、青年でも構いません。

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↓↓以下、台本

心に咲く奇跡の花


◇…アイリス
◆…アステル


◇「ねぇ、どうしてそんなに離れているの?」

◆「…だって、近寄ったら、怖がらせるから」

◇「おかしいなぁ、全然怖くないのに」

◆「…本当に、怖くない?」

◇「本当に、怖くない」

(少しずつ近寄る)
◆「………わっ!」

◇「ほーら!怖くないって言ったでしょ?」

◆「…あれ…君…」


◆彼女の名前はアイリス
この辺りを治める領主様の娘で、静養(せいよう)のためにこの村に来たそうだ

◇「お父様が心配性でね、私が辛(つら)い目に遭わないようにって、村の人ともあまり交流させてもらえないのよ」

◆話す彼女と僕の視線は合わない

◇「目が見えなくても、こうやって会話は出来るのにね」

◆生まれつき盲目であり、身体も弱かったんだそうだ

◇「毎日暇で暇で仕方なかったの。だから、あなたと会えて良かった」

◆彼女は明るくて、綺麗で…本当は、僕なんかが触れていい存在じゃないのに



◇「今日は、私の1番好きな花を教えてあげる」

◆「花の種類なんて、わかるの?」

◇「見えなくても感じるの、匂いや感触で」

◆「へぇ…そうなんだね」

◇「むぅ、その言い方、信じてないでしょ?」

◆「そんなことないよ」

◇「これがガーベラ、こっちがネモフィラ、そしてこれが“アイリス”。どう?合ってるでしょ」

◆「…ごめん、僕、花の名前知らなくて」

◇「…そうなの?じゃあ、私が教えてあげる!」



◆君はどうして、僕に優しくしてくれるんだろう。

◇「ほら、こっちよ」

◆僕の手を取って、今だって身を任せて

◇「…ん、いい匂い…この花はね」

◆僕は…こんなにも醜いのに




◇「…なんでそんな事を言うの?」

◆あれは、僕が君と出会って少し経(た)った頃

◇「彼は私の友達よ?凄く優しい人よ。怖い事なんて何も無いんだから」

◆彼女に言い募(つの)る人々は皆、どこか怯(おび)えた目をしていた

◇「彼と会う事はお父様も許してくれてるもの。これ以上、彼の事を…私の大切な友達を悪く言わないで」

◆その日は、溢(あふ)れる涙で前が見えなくなるくらい泣いて、泣いて…

◇「なんだか、涙の匂いがする…」

◆なんて、鋭すぎる彼女に心配されたりして



◇「…ねぇ、そろそろ名前を教えてくれても良いんじゃないかな?」

◆「…名前…よく呼ばれてるのは、化け物とか」

◇「こんなに優しいあなたのどこが、化け物だって言うの」

◆「君は…僕の姿が見えないから」

◇「…見た目って、そんなに大事なのかな」

◆「大事、だと思う。花だって、醜いものより綺麗なものの方が好まれるから…」

◇「うーん…でもね、それって勿体無(もったいな)いと思うけどなぁ」

◆「勿体無い?」

◇「私には綺麗かどうかなんてわからないもの。香りだったり、感触だったり、心地良いと感じられるのは見た目だけじゃないでしょ」

◆「…うん」

◇「どんな見た目なのか知らないけれど、知らなくても構わないもの。私はここに咲く花が好き。そして、あなたの事も好き」

◆「…っ……」

◇「そうだ!あなたの名前“アステル”なんてどうかしら?」

◆「えっ…」

◇「星を表す言葉…あなたにぴったりだと思うの!」

◆君はどうして、こんなにも綺麗なんだろう



◇「あなたは、幻の花を知ってる?」

◆「…ううん、どんな花なの?」

◇「私が小さい頃、お母様が読んでくれた絵本に出てきたの。それはね、どんな望みでも叶えてくれる幻の花なんだって」

◆「それは…奇跡みたいだね」

◇「そうなの!それは、物語の中でこう呼ばれているのよ。“全てを癒す魔法の花”」

◆奇跡を起こす幻の花

◇「その花を見つけたら、私の目も見えるようになるかしら…」

◆僕は…それをよく知っている



◇「もし、私の目が見えるようになったら」

◆君の目が見えなければいい

◇「…あなたの顔を見てみたいわ」

◆僕の事なんて見えなければいい…

◇「見えるようになっても、私は絶対、あなたを嫌ったりしない」

◆怖いんだ…君に、知られる事が

◇「だって…こんなに好きなんだもの」

◆僕を、人として扱ってくれる君に

◇「…ねぇ、アステルって呼んでもいい?」

◆「…もちろんだよ。ありがとう、アイリス」


◆君と過ごす時は、生きていた中でも最良(さいりょう)の幸せで…


◇「アステルっ!!」

◆君の為なら、恐ろしい魔物の前にも進んで歩み出た。


◇「大丈夫?何が起こったの?魔物?魔物が出たの?」

◆目が見えない君は、1人では逃げ切れない

◇「…血の匂いがするわ。アステル、無事なの?ねぇ…」

◆返り血を浴びた化け物のような僕を、見る事もない



◇「あなたと初めて会った時も、魔物から助けてもらったよね」

◆「…そうだったね」

◇「アステル、お願い。側に来て」

◆「…うん…えっ」

◇「頬が冷たくなってる」

◆「お願いっ、離れて!君が汚れてしまう」

◇「…どこも怪我してないよね?」

◆「大丈夫だからっ!」

◇「ふふっ、それなら良いの。ありがとう、アステル」

◆「っ!」

◇「?アステル?」

◆もし、君の目が僕を映したなら…

◆そうか、今わかった
僕は…君に嫌われるのが怖かったんだ



◇「ゴホッ、ゴホッ!」

◆それから少しして、君はよく体調を崩すようになった

◇「…ありがとう。大丈夫よ、お父様」

◆医師の話だと、流行病(はやりやまい)にかかったらしい

◇「…会いたいなぁ…アステル」

◆「…早く会いたい…アイリス」



◇「…アステル…きてくれたのね」

◆移らないようにって、窓越しの逢瀬(おうせ)

◇「ゴホッ、ゴホッ…ごめん、なさい」

◆君はどんどん弱っていった

◇「…ね、アステル…わたし、あなたが好きよ」

◆もし今、君の目が見えたなら

◇「…大丈夫、すぐ元気になるわ」

◆…そうだ…“奇跡”を、起こせばいいんだ



◇「元気になったら、あなたと花畑に行くの」

◆僕の鋭い爪は、この為にあったんだ

◇「まだ、あなたに教えてない花があるのよ」

◆僕の心臓は、この為にあったんだ

◇「そうして、たくさんの花の名前を覚えたら」

◆僕の命は、君の為のものなんだ

◇「今度は、あなたが好きな花を教えてね…」


◆「…僕が好きなのは…ずっと変わらない。“アイリス”…どうか、幸せになって」

◆胸を抉(えぐ)り 核(かく)を取り出すと、
少しだけガラスを割って窓際(まどぎわ)にそっと置いた

◆この音を聞いた誰かが、きっとこれに気づくはず

◆…身体が崩れてきた、核を失った僕は人のように身体を遺(のこ)せない


◆「…ねぇ、アイリス。僕の命が花になるって知ったら、君はどうしたかな?」



◇「ねぇ、アステル
奇跡って本当に起こるものなのね
私、元気になったのよ」

◇「私のいた世界って、
こんなにも色鮮やかだったのね」

◇「ねぇ、アステル
…あなたに会いたい」

◇「もう息苦しく無いの、
目だって見えるようになったの、
なのにどうして…
どうしてこんなに、涙が止まらないの?」

↑↑台本ここまで
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ちょっと設定

◇生まれつき盲目で、体が弱い
おとぎばなしの中の幻の花の存在を信じている。
見えない事を悲観しておらず、感じられる事から様々な事を読み取ろうとしている。
◆と隠れてふれあい、少しずつ惹かれていく。
あまり表面化してなかっただけで、恐ろしい病魔に蝕まれていた。

のちに幻の花にて快復するが、◆の存在を感じられなくなり、涙をこぼす。


◆人と魔物のハーフ
魔物の外見も引き継いでいるため、人と呼ぶには恐ろしい見た目をしている。
温厚な性格であるが、その見た目ゆえ嫌われ、魔物と呼ばれ虐げられる事が多かった。

ある日、家を抜け出してきた◇と出会い、積極的に話しかけられ触れられる事に戸惑いを覚えるが、目が見えない事を知って納得する。
多くの生気や魔力を吸った花の形をした核を持つ魔物のハーフであり、本人も同じ核を持つ。
のちに◇を助ける為に、自ら核を取り出し…

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ちょっとした読み物↓


『魔物』
それは自分のことを指す言葉なんだと、幼い頃の僕は本気で思っていた。
違うとわかったのは少し経ってから、村が魔物に襲われた時。

血走った目、凶暴性、言葉も通じなかったし、人を襲う生き物…それが『魔物』。

自分が人より少し強靭だということがわかっていたから、率先して前に出て人を助けた。
…こうしたら、助けた人は自分に優しくしてくれるんじゃないかと思ったからだ。

目論見はうまくいった。

優しい声の君は、微笑んで…
僕に、「ありがとう」って言ってくれたんだ。

それから度々2人で会った。
君は暖かな春が好きだった…香り豊かな季節だから。
君は優しい物語が好きだった…胸が温かくなるから。
君は僕を笑わず、蔑まず、いつもそばにいてくれた。

でも___君と僕は、視線が合わない。

「優しい家族に、素敵な友人。これ以上望むものなんて何も無いわ」

君は、生まれた時から目が見えなかった。

「目が見えなくても感じるわ。あなたは、凄く優しい人」

家族以外には『魔物』と蔑まれている僕に…

「私にとって…凄く凄く大切な人」

はにかむように笑いかける君は綺麗で…
僕が不用意に触れたら、汚してしまうんじゃないかって、嬉しいのに…不安になった。

「奇跡を起こす幻の花…」

全てを癒すそれならきっと、彼女の目を治してくれる。

「見つけられたら…あなたの顔を見てみたいの」

もしそんな時が来たら、僕は___



ある屋敷に盲目の少女が住んでおりました。
彼女は、全てを癒す幻の花の存在を信じており、自身の盲目と病弱な身をそれを使って癒せる日を信じておりました。

盲目でも慣れている少女は、退屈を極めて屋敷を抜け出した。
そして、その先で『魔物』と呼ばれる人物と運命の出会いを果たす。

交流を深める2人は、やがて互いを想い合うようになる。

その矢先、少女が病の悪化で倒れてしまう。
もって数日の命___
それを知った魔物と呼ばれた者は、忽然と姿を消してしまいました。

少女の家族と医師しか訪れなくなった病室に、美しい花が届きました。
誰が届けたのかも、誰からの物かもわからない不思議なプレゼント。
医師は、それが何なのか一目見てわかりました。

その花を砕いて少女に与えると、青白い頬にほんのりと赤みが差し、開いた少女の瞳には光が差しました。
涙を流し喜ぶ家族の顔を見つめ、少女は涙を流しましたとさ。

…これが、奇跡の花のお話。
彼女はそれからもずっと、ずっと、彼を待ち続けたそうよ。
けれど、どんなに待っても、探しても…彼に会う事は出来なかった。
…ごめんなさい。泣くつもりなんて無かったのに。

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