要約問題
要約せよ。
問「大抵のことはうまくいかないし、だって適当にやっているから、でも適当にやってるからうといまくいかないなんて当たり前だし、当たり前のこと、当たり前のこと言わなくたっていいじゃないか、というか、頑張ろうとしているけど頑張れないから、そうやって適当にやっちゃうっていうか、真面目にやってるけど真面目にできないから、こうなっていて、でもだから、真面目にやれと言われたって真面目にしたいという気持ちはあるから、真面目にできないだけで、真面目にしたいんだよ僕は、でも、でも真面目なんだよでも、真面目にやりたいから真面目だから真面目にできない」
答「自分が好き」
解説「まず、一般的な解法を紹介する。一般的に、要約する際に一番気をつけなければならないことは、最初と最後を見比べることだ。きちんとした論であったら、冒頭部分で読者をひきつけ、あっと驚く結論を持ってくる。昨日食べたぬか漬けの話をしたかと思えば、結論はドイツ観念論に対する不信の表明だったりする。読む前に前と後ろを見ることで、その落差を知ることができる。ここで、どのような過程を経て結論が出たのかを推理することで、能動的に文章を受容することができる。この問では、話者は大抵のことは上手くできないと語り始め、真面目にできないと結ぶ。ああだめなやつだななどと考えてはならない。あくまで客観的に、筆者の語りたいこと、伝えたいことを把握するのが肝要だ。まず考えられるのは、上手くできないから真面目にできないという可能性。退屈な論理展開ではあるが、序論から結論まで、時系列的に伝えたい内容を配置していると考えれば、それほど無理な論理展開にも思えない。このように考える時、ある程度具体例を考えると分かりやすくなることが多い。今回の場合では、例えば話者が高校球児だと仮定してみる。3年生の6月、後輩にショートのスタメンを奪われてしまった。最後の夏の大会まであと一ヶ月あまり。焦る思いが募る。そんなある日、強豪校との練習試合が入った。久しぶりのスタメン、2番ショート。おそらくこれが最後のチャンスになるだろうと考えている。ベルトをいつもよりきつく締めてグランドに立つ。いつもより良いグラウンドで慣れないナイターでの試合、彼はイージーなショートゴロをはじいてしまう…。それからの毎日は気の抜けたようになり、練習にも身が入らない。だって、なにやったって上手くいかないじゃないか。真面目にやるなんか馬鹿じゃないかと叫び、今まで欠かさず続けてきた素振りの習慣をやめてしまう。そんな彼が、苦悩の中語った一節であると考えてみるのだ。確かに合点がいく。このように、特に語り手のヴォイスが直に聞こえてくるような文章を読んでいく際、具体的な人物像を頭のなかに描くことはかなりの効果がある。予想が外れてもかまわない。大切なのは、予想して予想通りの部分と、予想が外れた部分を丁寧に腑分けすること。そうすることで、一つのモデルを基準として考えることができ、その結果として文章読解も能動的なものになる。人間の理解の大部分は対比と類似を把握して進んでいくものだから、そのためにも一つ軸を作ってものを理解していくのが望ましい。具体的、目の前に浮かんでくるようなリアルを例として作り上げることが必要だ。少し話がそれてしまった。次に考えられることは、これまで考えてきたことの反転で、真面目にできないから上手くできないという可能性。これはダメ人間として片付けられそうだが、この文章を一人の人間の告白と考えればなかなかに面白い。高い理想を抱えた人間が、その理想と現実とのギャップの大きさに葛藤する絵が目に浮かぶ。ただ、ここで「面白い」と言ったのは、あくまで商業的に面白いと言ったに過ぎないことには留意してもらいたい。ありがちな型に当てはめただけで、何か発見がある種類の文章ではない。とまあこうやっていろいろ考えてから中身を読む。しかし残念。この文章はコミュニケーションが苦手な人間が何かを伝えようとして、自分で何を言っているのかわからなくなったたぐいの文章だ。分析は無意味、要約は不可能だ。しかしまあ、ここまでこの文章を読んでくれる人などいないかもしれないけど、それはこの世界にとっていささかなりとも望ましい。まず、私自身何かを言おうとしてこの文章を加工としたのだが結局わからずしまいだ。よってこの文章は一銭の価値もない。問題文と同じだ。解説も無意義。それでも一応要約の答だけは提示しておこう。明日はもっとまとまりのある何かが書けていたらいいな。