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「山ごはん」への愛を語る
わたしは「山ごはん」が大好きだ。
景色の眺め、健康維持、写真撮影など、登山の目的は人それぞれだが、なかでもわたしは山ごはんに魅了されている。
最初に作った山ごはんは、何の変哲もないカップラーメンだった。
しかし、長野県白馬市の山頂付近で、冷え切った体にじんわり体を温めてくれたスープの味が、いまも忘れられない。登り切れた達成感をさらに感じさせてくれた1杯のラーメンは、わたしの心に深く刻まれ、以来山ごはんの虜になった。
いまでは本やブログでたくさんの山ごはんが紹介されているが、そのなかでもわたしが山ごはんを始めるきっかけとなったマンガがある。
『山と食欲と私』(新潮社)だ。
主人公の女の子が、山頂で作る山ごはんは、毎回ほっぺたが落ちそうなほどおいしさが伝わってくる。読み進めると、「わたしもいつか同じ山ごはんを作ってみよう」と意欲が湧いてきて、気付けば付箋がたくさん貼られている。
つい先日も、第1巻で紹介されている"オイルサーディン"の缶詰を使用した丼ものごはんを作ってみた。米をメスティンで炊き上げるため30分を要したが、缶詰をごはんに乗せるだけだったので、簡単に作ることができた。
最近では、コンビニ食材だけで作れる山ごはんレシピも増えている。
(左から)じゃがりこと缶詰のコンビーフを混ぜただけの”じゃがりコンビーフ”。しゃけおにぎりと粉チーズで作った”しゃけチーズリゾット”。
コンビニ食材を使った山ごはんはささっと作れる手軽なものが多く、ズボラなわたしも重宝している。
すすきが見頃の秋、前職の同期と”ソース焼きそば”を作ったことも印象深い。
彼は山ごはんが初めてだったようで、最初は「なんで山の上でごはん作るの?」とわたしに疑問をぶつけていた。しかし山頂で一緒に料理をして、温かい焼きそばを頬張ったときの彼の笑顔は今でも忘れられない。
山ごはんを作っていくうちに、調理器具もどんどん増えてきた。最近の器具は機能性が高く、ネット販売も充実している。
こちらの商品、名前は「JETBOIL(ジェットボイル)」
その名の通り、最速でお湯を沸かすアイテムである。最短で100秒と、驚異的なスピードで沸騰させられるので、カップラーメンを作るときや、お茶やコーヒーを淹れるときに便利だ。バーナーとセットでも重さは340グラム。500mlのペットボトル飲料よりも軽く、女性でも簡単に持ち運べる。
先ほどのオイルサーディン丼で使用したメスティンをはじめ、実はすべて100円均一ショップで揃えた品物だ(メスティンのみ500円)。
写真の4点合わせても1,000円しない手頃な調理器具セットであるので、初めて山ごはんを試したい方にはぜひ勧めたい。メスティンの中にほかの道具や食材も入れられるので、ザックの中もかさばらずに済むのがメリットだ。
また、調理器具を持って行かなくても楽しめる山ごはんも存在する。山小屋で食べるごはんだ。
今年に入って、初めて八ヶ岳連峰の一角である天狗岳に挑戦した。登山道は岩場が多く、怪我が起こりやすい。足を挫かないよう慎重に歩くが、バランスをとるのが難しく想像以上に疲労が蓄積した。
歩き続けることおよそ6時間、ようやく目的地が見えてきた。
ついに目的地である黒百合ヒュッテに到着。
名物のビーフシチューは牛肉がほろほろと口の中で解けるほど柔らかく、疲労困憊のからだがみなぎる絶品であった。お昼時にはこのビーフシチューを求める登山客が多く、セットのライスはすぐになくなるそうだ。わたしたちがお昼過ぎに注文した際も、案の定ライスは切れていたが、パンだけでもありがたく感じスープ一滴も残さず完食をした記憶がある。
この1年間、登頂した山の数と同じだけ山ごはんを作ってきた。登頂するたびにおいしさを味わってきたが、本来の山ごはんの魅力は、味以上の感動や体験だとわたしは思う。
レシピや効率性だけではない、素晴らしい価値を伝える「山ごはんライター」としてこれからも伝え続けていきたい。