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かしこさラボ【分析編2:スピードと正確性】
賢さを構成する要素の分析編 第2弾として、今回は「スピードと正確性」にアプローチしてみる。
①スピード
スピードそのものが「賢さ」と言われると、違和感を感じる人は多いかもしれないが、間接的にでもスピードが賢さに大きな影響を及ぼしていることは間違いない。
処理速度の速さとは、主に「計算」「思考・判断」「行動」などの速さを指す。単純な動作速度という意味もあるが、単位時間当たりに処理できることが多いことも意味する。
【身体的成長】
「体格」が大きくなり、「筋力」が付くことで動作速度は上がる。
子供の書く字が汚い件について相談を受けることは多い。脳で運動野が完成するのは5歳くらいで、「肘」→「手首」→「手先」の順で自在にコントロールできるようになるのはもっと後だ。あまり神経質にならずに成長を待つほうがよいこともある。
と思っていたら、とんでもない例を見つけた。当時8歳。
そして、残念なお知らせが。
練習を積み重ねているほど、バイオリンの演奏スキルが高いという先行研究、再現できず。効果量はそれなりにあるが、オリジナル研究の効果量よりも小さい。練習内容を先生がデザインしてもほとんど意味はない。The role of deliberate practice in expert performance: https://t.co/XKbkwQDH0L
— マーキュリー2世 (@uranus_2) August 21, 2019
だからこそ、稀有な才能は重宝されるということになる。
【効率性=省力化】
・技法の習得や慣れ
いわゆる「コツをつかむ」ということだ。行動においては、なるべく「体を無駄に動かさずに済む方法」を習得することになるだろう。
行動における効率性についてはすぐにでも試せる例は多いが、テストで「設問に目を通してからという解く」と手法などは、子供には高いハードルになる。レベルに応じた方法論の選別が不可欠だ。
ビッグデータによる動作解析がより一般的に普及すると良いが、コスト面から扱えるジャンルは限定されるだろう。
・自動化・アウトソーシング
自分のリソースを使わないように、苦手分野を自動化・アウトソーシングしていくことも不可欠だ。他者の協力を得るという工夫も必要となる。
しかし、何でも自分でやりたがる性質の人は多い。私もそうだ。自分で経験したことの重要性に価値を見い出しているからだ。しかし「愚者は経験から学ぶ」という。たしかに、個人の能力で太刀打ちできた時代が過ぎ去っていることは肌で感じる。
②正確性
正確性はどちらかというと、結果的に賢さを表す。
減点主義による教育が主流の日本では、正確であることはかなり美徳とされていた。テストで100点を取れば褒められ、ドクターXで大門未知子の「私失敗しないので」というセリフを待ち焦がれる。それは、正確性を維持することは難しいということの裏返しとも言える。
【論理性の高さ】
論理性が高ければ、問われていることを正確に把握できることになる。ゴール設定が間違っていれば、本人だけが正確なつもりという悲劇が待ち受けることになる。入試の世界では「よく設問を読め」と言われる。当然だ。設問こそが最も抽象的に書かれたゴールだからだ。
【集中力の高さ】
先日、岡田斗司夫さんのYouTubeで面白いことを聞いた。マルチタスクをすると、ドーパミン分泌が促されて充実感はあるが、作業効率は低下する。例えば、スマホを「無視する」というコマンドを実施するために脳の10%くらいが使われてその分集中力が阻害されるらしい。
他に、メンタリストDaigoさんのYouTubeで、楽器を習った人の集中力が、そうでない人に比べて1.5倍程度に高いという研究結果を紹介されていた。確かに、特に合奏の場合は他に気を取られる人は少ないだろう。次の動画でChloe Chuaさんが集中しなかったら大変なことになる。この曲はさらに。
【緊張感と向き合う】
スピードが速いことで時間的な余裕があると、メンタルにもゆとりができて正確性が高まることは多い。例えば、テニスで圧倒的な実績を残すジョコビッチ選手は、体が大きく動作も判断も早い。ボールの位置に早く入れることで正確な動作が可能となる。
「度胸がある」とされ、大舞台に強いといわれる人でも、最初は緊張で何も覚えていないような状況は経験しているはずだ。失敗しながら修正を繰り返し、トラブルを予測して周到に準備することで、集中力を保てるようになる。経験と几帳面さがむしろ度胸を生み出している。
でも、どうやっても緊張するという話は聞く。そもそも、適度な緊張感は必要で、どうでもいいことに人は緊張しない。適度な目標設定をしていないと、準備不足の状況が増えて、緊張を加速させることはある。
【チェック機能】
PDCAサイクルのCheckは、結果が生み出せているかだけではなく、Doの問題点の抽出も含めて行う習慣が必要だ。普段行動しているときにも、チェックに備えて、無意識的に問題を減らしながら行動するようになる。
判断するときのメンターなど、他者の介在も不可欠だ。自分より経験があって、厳しい内容でも根拠とともに臆せずに伝えてくれる存在が良い。
話は変わるが、面接を苦手とする人は多い。口頭試問は、時間の制約も厳しく、面接官の人格もわからず、質問内容も多岐に渡るからだろう。
これまで、「正解のある世界」で再現性の高さを求められてきた学生が、いきなり「正解のない世界」に叩きこまれて、高度なアドリブを求められても苦労することは至極当然である。
【1】語彙力と論理性
【3】情報収集能力
【4】コミュニケーション能力
【5】判断力
【6】行動力
【7】創造力
【8】シンかしこさ
(2022/8/2)