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今週のニュージーランドの新聞記事より - Lake Alice Hospital被害者への救済

もうクリスマスですねえ。

今週の記事は、実は先週の記事なのですが、他に優先順位が高い仕事が多くて、記事は書きかけで放ってありました。

元記事はこちらです。

これは、Lake Alice Hospitalと言う1950年から1999年までワンガヌイ地域にあった公立の精神科病院に関する記事です。

初めてこの名前を知ったのは、私の患者さんが「Lake Alice Hospitalって聞いたことある?僕はそこにいたんだよ。」と言った時。
数年前かな。

その時点では私は全くその名前を聞いたことがなく、そこでどんな問題が起こったかも勿論知りませんでした。

多分殆どの方は、Lake Alice Hospitalを知らないと思うので、こちらにwikiの記事のリンクを載せておきます。

こちらも、関連サイトです。


Lake Alice Hospitalでは1972から1080年にかけて、
その小児病棟で、肉体的(性的を含む)、精神的虐待がなされていました。
子供達は「治療」または「お仕置き」という大義名分のもと、電気ショックが与えられたり、パラアルデヒドという薬剤を注射されたりし、
病院として、精神的なケアをするという側面は失われていた様です。

ここに収容される子供達は、行動に問題がある子供達、直近の家族が世話をできない子供が多かったとのことです。

多分多くの「凹凸」のある、精神的に典型でない子供達が、ここに送られていたことでしょう。
彼らの行動を「お仕置き」して「正そう」とする、というのは
これほど極端な程度でないですが、私たちの日常でいまだに行われていることです。

ちなみに私の患者さんは、あまりスキルの要らない仕事をしていたのですが
ある肉体症状が強くなり、働くのが困難になりました。
アルコールに依存しており、肉体症状はそれが主な原因と考えられました。

何度も、リハビリ入院して、それでもアルコールを完全にやめるのは難しい。

Lake Alice Hospitalで虐待を受けた人達の多くは、アルコールやドラッグに依存しているという事です。
もしも診断されていないADHDの人とかであれば、依存症になりやすいことは知られています。

まさに私が「変えたい」と思っているこんなサイクルです。

「問題行動が多い子供」
→「親のスキルが高くないと、虐待の対象になりやすい(親もADHDである可能性が高いから、スキルレベルが低いことが、よくある)」
→「子供はトラウマを受け、精神症状を起こす」
→「子供が成長する段階で、お酒やドラッグの依存症になる(特にADHDではリスク高し)」

今回のニュージーランド政府の決定は、Lake Alice Hospital で虐待を受けた人達に、一人当たりNZ $120,000を支払うというもの。
日本円で言えば1千万円程度です。

私の患者さんにこのお金が支払われれば、少なくともしばらくの間は、金銭的な心配をする必要はなくなります。

でもお金があるから、もっとお酒を買うかもしれない。そうしたら、長期に見てその人のためにはならない。

多分、政府の負担でカウンセリングは受け続けられると思うのですが
どれだけの人が、それをするのか。

Lake Alice Hospital 以外にも、患者さんを同じように扱っていた公立の病院がニュージーランドにはあったそうです。
そこを経験してきた人からは、Lake Alice Hospitalを経験した人だけに政府がお金を払うのは不公平だという声もあります。

お金で人生が戻ってくる訳ではありません。

家庭内で虐待を受けた人たちは、お金を払われる事すらないでしょう。

こんなことが世の中で繰り返されるのを防ぎたい。
「予防」は「治療」の何百、何千倍もコストパフォーマンスが良いです。

トラウマは起こってしまってから、そこから治るのは大変な事ですから。

私がやっている「Collaborative Problem Solving(CPS)」は
「問題行動を賞罰で正そう」という、大人が直感的にやっていることを見直す機会になります。

基本的な概念は「(問題行動は)やる気でなく、スキルの問題である」ということ。
問題行動自体は、他の人や社会が期待している事をするスキルが足りない時に起こります。

私は、2025にはニュージーランドでも、日本でもCPS を広めたいと思っています。
noteにもアナウンスメントをすると思いますので、ご興味のある方は是非ご連絡ください。








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総合診療科医のだのり@ニュージーランド
「親も育つ子育て」を広めるために、私の持っている知識、経験、資料をできるだけ無料で皆さんに届けたいと思っています。金銭的サポートが可能な方で、私の活動を応援していただける方は、サポートをしていただけると嬉しいです。