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今週のニュージーランドの新聞より - Auckland City Missionの記事から、人間に大切な物を考える

今週の記事は、ニュースというよりは、ニュージーランドの一番の大都市、オークランドにあるAuckland City Missionについてです。

Auckland City Missionは1920年に、宗教団体のバックアップでできたチャリティートラストです。
(救世軍は世界中にあり、規模が違いますが、宗教団体がベースにあるという意味では、よく似ています。)
ホームレスの人に食事を提供したり、生活に必要なものを提供したり
住居や医療関係のサポートをしています。

Auckland City Mission は2022年に1億1000万ドルかけて、HomeGroundという建物を建てました。
ここではホームレスや、住居に困っている収入のない人にアパートを貸しています。
賃貸料は1週間に$400以上という事なのですが、多分年金がある人などはそこからできるだけ払い、足らない分はどこからからお金の補助があるのだと思います。

HomeGroundでは、そこに住んでいない人でも、来て簡単な食べ物を手にいれたり、他の人と話したりする事ができるようです。

この記事の中でも言われていて、(本当にそうだよなあ)と感じたのが

「自分が『家』と呼べる安全な場所があるのが、まず何よりも大切だ」
ということ。

ホームレスになっている多くの人達、収入が低い多くの人達は
この世の中を『安全な場所』と思えない人が多いのではないかと思います。

(これは自分の患者さんを診てきた中で、親に虐待を受けてきた人、誰かに騙されて大変な思いをしてきた人を見て思った、私の個人的感想です。)

『安全』というのは、
戦争がないとか、犯罪に遭わないとかいう「肉体的安全」だけでなく
「どれだけ他人を信用できるか」、「どれだけ自分を信用できるか」
という、「精神的な安全」も含まれます。

そういう人にとって、「精神的な健康」を取り戻すためには、
まず「肉体的な安全」、
つまり安全な雨風を防げる住居や
生きていくのに必要は食料が安定して手に入る事が
非常に重要だと思います。

「精神的な健康」がない状態で、ホームレスの人が住居を手に入れることはほとんど不可能でしょうから、Auckland City Missionのような団体が活動していることは本当にありがたいことだと思います。

私が総合診療科医として患者さんを診るのはクリニックであり、
勿論、場としては全く違うのですが
特に、このような患者さんには「安全」を感じてもらう事を意識しています。

でも「家がないから、車に寝泊まりしている」とか
「以前のパートナーが、家に来ない取り決めになっているのに、家にやってくる」とかいう感じで、安全な住居がない人も多いです。

もちろん、こういう状況では、メンタルヘルスが良くなるのは難しいです。

ホームレスの人にはアルコールやドラッグ依存の人、精神疾患のある人が多いので、「安全な家があればいい」とか「食べ物があればいい」という単純な問題ではないのですが、
少なくとも雨風が凌げて、安全に眠れる場所が、世の中の誰にでも供給されるような世の中になったら、多くの人の健康状態も改善するのではと思います。

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総合診療科医のだのり@ニュージーランド
「親も育つ子育て」を広めるために、私の持っている知識、経験、資料をできるだけ無料で皆さんに届けたいと思っています。金銭的サポートが可能な方で、私の活動を応援していただける方は、サポートをしていただけると嬉しいです。