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私の中のADHD
ニュージーランドで、総合診療科医として働いています。
普段の仕事とは別に、週に1日、プライベートの精神科のクリニックで、主に大人のADHDの診断とマネージメントをしています。
大人になる今までの間に、ADHDの診断をつけられた事がない人が、受診に至る理由としては、
家族がADHDの診断を受けて、「もしや私も」と思ったらとか、
自分で色々調べた結果「自分はADHDでないか」と思ったとか、
周りの人に「ADHDじゃないか?」と言われたとか、
いろいろなケースがあります。
そして、実際に診察で話をしてみると、
非常におしゃべりな人から、あまり喋らない人、
非常にハッピーな感じな人から、気分のかなり落ち込んでいる人
まで、いろいろです。
数分話しをして(この人はADHDだな)と思える人から
子供の頃の様子などをじっくり聞いていくことで、やっと(あー、この人はADHDあるな)と思える人もいます。
(最終的には、診断基準に沿ったDiagnositic Interview for ADHD in adults - DIVA という質問表に沿った情報収集をして、総合的に診断をつけます。)
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そうやって、いろいろな人の話を診察中に聞いていて
「もしかして、私のあの特性は、ADHD脳によるものではないか」と思う様になりました。
(最初に言っておくと、総合的にみて、私はADHDの診断基準に当てはまりませんし、多くのADHDの典型的症状はありません。
子供の頃、多弁で人の話を乗っ取ったり、机や木に登ったり、注意散漫で宿題を忘れたり、とかいう覚えはありません。覚えがないだけかもしれないですが。笑)
1.頭の中を空っぽするのが難しい
例えば、子どもの頃、本を読むのが好きで、通学の途中とか、食事の時とか、いつも本を読んでいました。
本を読みながら歩いて、何度か電信柱にぶつかった覚えがあります(笑)
食事の時は、家の中の「図書館」に行って、何か本を探し、いつもそれを読みながらご飯を食べていました。
興味がある内容の本が一番ですが、それがない時には、片っ端から読めるものを読んでいた覚えがあります。
自分は「ただの本好き」だと思っていたのですが、ADHDの人の何人かが、「何かがあると、いつも本に逃げ込んでいた」という事を言っているのを、自分も同じ様な事だったのでは、と思えてきました。
(もちろんADHDの人には「本を集中して読めない」という人が多いです。)
今では、本がなくてもコンピューターを開けば、いくらでも読むものが出てくるのでありがたいのです。
その為、最近は本を読み始めても、すぐに飽きて、ビデオに流れてしまったりします。(笑)
最近、朝はアファメーションビデオを聴いているのですが、色々な考えが浮かんできて、アファメーションに集中するのも難しいです。(笑)
私の場合は、頭に何かを入れる事でドーパミンが上がるのだと思いますが、
多くのADHDの人は、運動をする事で同じ効果を得ています。
「何かがあるとランニングに行って(または、ジムや水泳に行って)気持ちを落ち着かせる」とかいう人達です。
私ももう少し「肉体的過動」があれば、フィットネスを維持するのには役に立ったかなと思います。笑
2.新しいプロジェクトを始めるのは好きだが、それを終わらせたり維持するのが難しい
これは仕事関係でも、私生活でもあります。
新しいプロジェクトを始めるのは好きで、
「過集中」して、時間を忘れて取り組むのですが、
ある程度時間が経つと、やる気が削がれてしまいます。
私のウェブサイト達も、作る時は、時間を忘れて仕事をするのだけれど
ある程度出来上がってしまうと、その先のメインテナンスをするためのやる気がやってこない。
(私のウェブサイトを訪れて下さった方、記事が余り更新されていなくて、
完成した出来上がりになっていなくてすみません。笑
プロにも一度頼んだのですが、していただいたお仕事が私の気に入らず、
結局、自分でちまちまウェブサイトを作っています。)
趣味のクラフトも、始めたけれど、終わらせていないプロジェクトがたくさんあります。
(俗にいう、「UFO unfinished object」です。🤣)
やりはじめの頃は、熱中して色々材料を買い集めるため、
使わないけれど捨てられないクラフト素材で、私の部屋の収納はいっぱいです。笑
3.体の一部を動かしていると、気分が落ち着く
最近、自分が勉強をしている時など、単純な手作業をしていると、勉強に飽きることなく続けられることに気が付きました。
日本だと、「ちゃんと椅子に座って、背筋を正して、勉強に集中しなさい」とか言いますから、私のしている事は、ルール違反ですよね。
でも、「爪を噛んでる」とか、「貧乏ゆすりをしている」人とかは、
多分何かの形で体を動かしていることで、その人の気分が落ち着く事を本能的に知っているのだと思います。
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この記事で伝えたかった事
この辺りが、パッと思いつくところです。
私と同じ様な人はたくさんいらっしゃるのではないか、と思います。
「ADHDとは、全く関係ないんじゃないの?」と思った方もいらっしゃるはずです。
ただ、この記事で一番伝えたかった事は、
「自分の頭がどの様に働いているかを、自分と周りの人が理解する事は、いろいろな意味で役に立つ」という事なのです。
例えば、
「単純作業をしながら、または体を動かしながら何かをすると、集中力が上がる」という事を例に取ります。
親なら、「音楽聴きながら勉強はできないから、音楽消して集中しなさい」とか
「ちゃんと椅子に座って、勉強しなさい」とか言いそうですよね。
でもその子供の脳の特性がわかっていれば、違う環境づくり、またはアドバイスをするでしょう。
「新しいプロジェクトに熱中しやすく、冷めやすい」という自分の脳の特性がわかっていたら、
物を買い込む前に立ち止まれるシステム作りをしたり、
集中できる時にベストを尽くし、苦手なメインテナンスは人に依頼する、
というやり方をする事もできます。
そして何よりも
「集中出来ないのは、自己鍛錬が足らないからだ」とか
「『熱しやすく冷めやすい』のは、持続力がないからだ」とか
「忘れ物をするのは、努力が足りないからだ」とか
いろいろな事を、「自分(または子供)が充分でないから」、「自分(または子供)が他の人より劣っているから」という視点で見るのを止める助けになります。
この辺りの視点を、本人だけでなく、子供と向き合う親や教師、他の大人にも持っていて欲しいなと思います。
色々な『問題行動』は
「やる気」の問題でなく、「脳の特性」に寄るものなのです。
(この、視点を変えたアプローチに興味がある方は、私が使っているCPSを覗いてみて下さい。)
この記事を書き始めた時に、たまたま読んだのが
このりょーやんさんの記事。
りょーやんさんの記事は、興味深いもの、勉強になるもの、考えさせられるものが多いです。
子供の脳の特性が分かっていれば、それに合った「支援法」を選べる。
どんな特性も使い方によっては、役に立つものにも役に立たないものにもなり得ますよね。
今日も長文を読んで頂き、ありがとうございました。
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