今日のニュージーランドの新聞記事より-病院の救急外来の現状
ニュージーランド在住で、総合診療科医、ライフコーチ、Havening technique ®️プラクティショナーなどをしています。
今日は、大学の休暇で帰省中の娘と一緒に、カフェへ。
また新聞をただ読み。笑
まあ、新聞代はコーヒー代に含まれているのでしょうが。
(仕事場の休憩室にも、実はスタッフのために新聞があります。
でも、仕事中は私は休憩する時間がほぼ無いので、そこで新聞を読むことはあまりありません。
実は「スタッフのため」というよりは、新聞の「亡くなった人のお知らせ」みたいな欄から、うちのクリニックの患者さんが死亡したことをいち早く知るためらしい。
その欄の名前を見て、うちの患者さんかどうか、全て事務の人が調べているのだろうか、疑問。それとも、名前を見ると、記憶に残っていて、分かるのだろうか。
前置きが長くなりましたが、今日見たのは、ニュージーランドの病院の救急外来についての記事。
私たちにとっては、何も新しくない内容なのですが、ニュージーランドへ来ようと思っている方は、ニュージーランドの医療の現状を少し頭に入れておいた方が良いかも、と思うので、記事を書きます。
新聞記事の本文はこちらのリンクから読めます。
「日本の医療は危機」と言われていますが、ニュージーランドも「危機状態」です。
特に私達プライマリーケアで働く医者や看護師は、給与が低く、
若い人たちはなりたがらない。
条件のもっと良いセカンダリーケアで働く人(主に病院勤務の医者や看護師)も、お隣のオーストラリアに行けば、短い勤務時間でもっと高い給料がもらえる、という状況なので、オーストラリアなどの海外に行ってしまう。
それでも、移民で人口が増えているニュージーランドでは、患者さんに対しての医療従事者の数がどんどん少なくなっていく。
それが、かかりつけのジェネラルプラクティショナーの診療予約が取れるのが、3週間待ち、とかいう状況につながっています。
かかりつけにかかる事ができず、病状の悪くなった人は救急外来に行くので、救急外来は余計に混雑します。
もう一つの理由は、病院の救急外来は公立医療の一部なので、2年以上のワークビザがある人や、国民は診療費は無料です。
普通の救急クリニックに行くと、普通は結構お金がかかります。
まあ旅行者とかなら、どちらにしても無料にならないし、旅行保険があるはずなので関係ないですが、ニュージーランドでは経済的に苦しい人が増えているので「少しでもお金を節約できるなら」という事で、「風邪だと思うけど、心配で診てもらいたい」という人も、公立病院の救急外来に行きます。
ニュージーランド政府は、「病院の救急外来に来た患者さんの95%は、6時間以内に診られること」をターゲットにしています。
「6時間」です。
でもこのターゲットは満たされていません。
昨年末、家族を連れて救急外来に行きました。
救急車で二度行った時は、流石に救急車から待合室に降ろされる事なく、診察エリアのベッドに移してもらえました。
ただそこから、医者が来るまでは1時間程度は待ったと思います。
別の件で、救急外来の受付に行った時は、診察スペースに入るまで4時間ぐらいは待ちました。中に入ってさらに待ちました。
以前には、ひどい頭痛で病院の救急外来に来た人が「待ち時間が長いよ」と言われ、一時家に帰り、数時間後に救急車で搬送され、頭蓋内出血で死亡するという出来事もありました。
うちの地元の病院の救急外来では、軽症の患者さんには、街の救急クリニックにかかるためのバウチャー(金券)を渡し、そちらのクリニックへ行くように勧めたりもします。
(勿論、そのクリニックの待ち時間の方が短いことが必要条件ですが。)
今日の記事は、その待ち時間のハードルを超え、救急外来の診察スペースに入った患者さん達のことを扱っています。
「救急外来に患者が溢れて、患者さんは廊下で診療を受けたり、一人部屋に二人入れられたりしている」というリポートです。
医療従事者も不足しているのですが、病院のベッド数が不足していて
「誰かを退院させないと、新しい患者を入院させられない」という事も
救急外来が患者さんで溢れた状態になっているのに寄与しています。
(緊急でない治療や外来診療までの待ち時間などについては、また別の記事で書こうと思います。)
若い方は、事故以外で救急外来に行くことは少ないと思います。
また、明らかな心筋梗塞とか重篤な状況は、タイムリーに治療されることの方が多いので、不必要に心配する必要もないと思います。
ただ、ニュージーランドの医療は、「危機状態」にあり
今のところ改善の兆しはありません。
こちらに移住を考えている方などは、十分情報を集めて、考慮していただきたいなと思います。
今日も長文を読んで頂き、ありがとうございました。