魔界にある村は恋愛指南のビレッジ
投擲した槍が直撃するとゾンビは鮮血と共に跡形もなく消えた。本気のスプラッターである。
次々と容赦なく襲い掛かる魔の軍団に毅然と立ち向かう騎士アーサーの活躍を追体験するゲーム、それが魔界村。
そしてそれを小学校のころプレイした記憶を思い出しているのが私、のだろう。ファミコン黎明期、数多くのゲームが世に生まれたが私が好きになったのは独特の世界観を持ったタイトルを放つ気鋭メーカー「カプコン」のゲーム達だ。
戦場の狼、闘いの挽歌、魔界村。。。
まずもってどれもタイトルが秀逸だ。さらに戦場の狼はあのざらついたドットでどこか戦場の恐怖を想像させたビジュアルが光るゲームだった。闘いの挽歌は、、、挽歌ってどんな歌なんだ。しかしそのどこか寂しげで哀愁のある響きは剣で孤高に戦う主人公の姿と相まって独特の世界観があった。箱の絵も、これぞ挽歌!といった趣きだった。
そして魔界村。調べてみたら小学校2~3年のころにプレイしていたようだが、鮮烈に記憶に残っている。まずは音楽だ。一辺倒の電子音、甲高いテーマはまるでバイオリンの響きの様に不気味で高貴。今でも鼻歌で歌えるほどなのはそれだけプレイしたからか、キャッチーな旋律だったのかはわからないが導入としては完璧と言える。
そしてなぜかおどろおどろしい墓場みたいな草むらで半裸の髭もじゃオヤジと寛ぐお姫様。そしてそのあと出てきたかどうかすら思い出せないかなり大きい飛行系悪魔が姫を連れ去っていく。丸腰のおっさんだからついでに体当たりでもかませば一気に物語は終わっていたのだがそこは悪魔とて武士の情けか。
小学校低学年ながら女子に、いや女性に興味津々だった少年の私は一連の拉致事件よりもこのオヤジがどうやってこんないい女とデートできたのかが気になっていた。しかも裸同然のカッコでくつろぐとかすげー!このあとどうするつもりやってん!とか思ってたわけだ。まあこれでアーサーと少年私の動機は一致したので二人は鎧を纏い、槍を携え駆け出すのだ。
そうは言ってもアーサー先輩は女性のエスコートの方法やナンパ術を教えてくれるわけもなく淡々と魔を滅していく。猪突猛進とはこういう感じか。むしろ好戦的な部分に惚れたのかしら。なんて思いながら進めていくとアーサー先輩の最大のライバルとなるレッドアリーマーパイセンが登場するのである。
独特の世界観と冒頭で書いたがこのレッドアリーマーはその表現に大きく寄与している存在だ。だって悪魔そのものだもん。ちょうどアニメデビルマンを見ていた世代にとってその姿はダブる。しかもレッドアリーマーのほうがガチめの顔。ふてぶてしい動きは強さを誇示しているようにも見える。秀い出たアニメーションだ。
画面ギリギリから槍を投擲するなどあらゆる手立てを駆使し辛くも勝利したアーサー先輩はその後も奇天烈な動きを繰り返す魔たちと格闘を繰り広げやっとの思いで悪魔の居城にたどり着く。鈍重な悪魔のボスとの一騎打ちを制し、愛しの姫を奪還かと思いきや、、、なぜかスタート地点に逆戻り。
これは、、、教訓以外の何物でもない。
意中の女に近づいたとしても、手中に収めるその瞬間まで油断はできない。同じことを繰り返されテストされる。さらに厳しい条件で。
少年私は痛烈に学んだのであった。
1986年の夏の日の話である。
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