「ミン・ヒジン騒動」とは企業のコンプライアンス問題だった。ついでにNewJeansへのおせっかい提言も。
2024年4月25日ー。
K-popファンだけでなく音楽ファンをも震撼させた会見が韓国で行われた。
それがミン・ヒジンさんの暴露会見。
自身の弁明だけでなく韓国音楽界のゴシップ情報まで流布してくれたミン・ヒジンさん。会見が強烈すぎて、問題の本質を忘れてしまいそうですが、今回の「ミン・ヒジン騒動」はコンプライアンス違反をしたことで起こった組織問題です。
ということで本記事では「ミン・ヒジン騒動」とは何だったのかを書いていきます。
その前に登場人物(企業)をざっくり紹介
HYBEグループ(企業)
韓国の総合エンターテインメント企業。2005年にパン・シヒョク氏によって設立された「Big Hitエンターテインメント」が前身。2021年に社名をHYBEに変更。いくつものエンタメ企業や音楽事務所を子会社として持つグローバル企業。
ADOR(企業)
HYBEの傘下にある音楽レーベル。所属グループはNewJeans。もともとはミン・ヒジンさんが代表を務めていたが解任され、2024年11月時点ではHYBE人事責任者だったキム・ジュヨンさんが就任。なおADORの株の80%はHYBEが保有しており、HYBEの子会社という位置付けである。
パン・シヒョク(経営者・音楽プロデューサー)さん
HYBEグループの創業者。BTSの生みの親。JYPエンターテインメントのプロデューサーとして活動したのち、独立しBig Hitエンターテインメントを創設。BTSの世界的人気により大躍進した韓国エンタメ界のスーパー経営者。現在は代表取締役の役職を離れ、会長職に就任。
ミン・ヒジン(ADOR前代表・音楽プロデューサー)さん
天才プロデューサー。NewJeansの生みの親。SMエンタテインメントでアートディレクターとして活躍し、ヘッドハンティングされる形で2019年にHYBEグループ(当時はBigHitエンターテインメント)へ。傘下レーベルADORでNewJeansをデビューさせ、世界的グループへと成長させる。
NewJeans(5人組ガールズグループ)
2022年デビューした韓国発の5人組ガールズグループ。これまでのK-popトレンドであった「キャッチーな音楽」とは異なる聴き心地の良い「イージーリスニング」のブームを作り、K-popファンだけでなく、音楽通をも魅了。「ミュージシャンズミュージシャン」を多数リリース。
ことのあらましを時系列で追う
はじまりは2024年4月22日
ADORのミン・ヒジン代表(当時)が独立を画策しているとのことで、HYBEがADORの経営陣に対する監査に着手。その少し前からミン・ヒジン代表がNewJeansと共に独立を準備しているという背任疑惑が囁かれていた。
2024年4月25日。
ミン・ヒジン代表による弁明会見が開かれる。ここで背任行為は無かったとコメント。同時にHYBEの体制や経営陣批判を繰り広げ、最終的には「ILLITのコピー疑惑」「Le Sserafimデビュー策略」「パン・シヒョク氏による『aespa踏めますか』発言」など他グループへの暴露を行う。
2024年4月30日
HYBEがミン・ヒジンADOR代表を解任するための臨時株主総会招集許可の審問期日を開く。
2024年5月30日(引用元)
ソウル中央地裁がミン・ヒジン代表がHYBEを相手取り求めた議決権行使禁止仮処分申請を認めた。HYBEは「ミン・ヒジン代表はADORをHYBEから独立させ、経営権を奪おうとした」と主張。ミン・ヒジン代表側は5月7日、「HYBEが株主総会で議決権を行使できないようにしてほしい」として仮処分を申請。地裁によると、「現在までに提出されている主張と資料だけでは、HYBEが主張する解任理由は十分に疎明されていない。ミン・ヒジン代表がADORに対するHYBEの支配力を弱め、自身がADORを独立的に支配できる方法を模索したことは明らかだと判断される」としながらも「同代表が実行行為にまで及んだとは見なし難く、そのような行為がHYBEに対する裏切り的行為になる可能性はあるが、ADORに対する背任行為になるとは言い難い」と述べた。
2024年5月31日
ADORの臨時株主総会で、ミン・ヒジン代表の側近と言われていた社内取締役2人が解任。
2024年5月31日
ミン・ヒジン代表による2度目の緊急記者会見。ここでHYBEに和解を提案。
2024年08月27日
ADORは取締役会を開き、キム・ジュヨン社内取締役を新代表取締役に選任。同時にミン・ヒジンさんは代表取締役からは退任。しかし、ADORの社内取締役職はそのまま継続し、NewJeansのプロデュース業務もそのまま担当することに決定。
2024年09月11日
NewJeansのメンバーがYouTubeで緊急配信を開始。ミン・ヒジンさんを元の代表職にし「経営とプロデュースが統合された本来のADOR」に戻してほしいと訴える。
2024年10月17日
ミン・ヒジンさんが社内取締役に再選任。期間は2024年11月2日から3年間。
2024年10月29日
ミン・ヒジンさんによって申請された「ADOR臨時株主総会招集およびAdor社内取締役再選任のための仮処分」がソウル中央地裁により却下される。これによりミン・ヒジンさんのADOR代表復帰が困難に。
以上がこれまでの流れです。
その間にNewJeansの東京ドーム公演、別レーベルのBELIFT LABやSOURCE MUSICによるミン・ヒジンさん告訴、ミン・ヒジン代表時代のセクハラ事件なども起き、話題に事欠かないワイドなショーとなりました。
「ミン・ヒジン騒動」とはコンプライアンス違反による懲戒処分
結論から言うと、今回の「ミン・ヒジン騒動」とは、「コンプライアンス違反をした雇われ社長に懲戒処分が行われた」出来事でした。
ADORは株式会社であり、株の80%は親会社のHYBEが持っています。
ミン・ヒジンさんはオーナー社長ではないので、HYBEに忠誠は示さないといけません。それなのに裏で独立を計画し、噂レベルですがADORの資産であるNewJeansも連れ出そうとしました。これはコンプライアンス違反です。HYBEは上場企業であり、内部を統制するためにもペナルティを科す必要があります。そのためミン・ヒジンさんは降格させられました。
ここまで騒動が大きくなってしまったのは、HYBEに追い詰められたミン・ヒジンさんが窮鼠猫を噛むの如く、解任される前に親会社がやっていた裏の行動を晒したからです。
ミン・ヒジンさんの暴露により、問題の本質が隠れてしまいましたが、ソウル中央地裁が認めたように「ミン・ヒジン氏がADORを独立的に支配できる方法を模索した」ことで、代表職を解任されたというのが「ミン・ヒジン騒動」のあらすじです。
NewJeansの音楽の未来はどうなるのか
とまぁ、組織問題について書いたのですが、ここで問題が。
それがNewJeansの音楽です。
ファンが聴きたいNewJeansの音楽は”ミン・ヒジンさんがプロデュースした作品”なのです。しかし、”明智光秀”ミン・ヒジンはこれまでのクオリティを保った作品を生み出せるのかという疑問が生まれます。
その証拠にミン・ヒジン体制でMV制作を請け負っていた「イルカ誘拐団」を、新体制のADORは切るような行動を取っています。
なおADORの代表職は降りたミン・ヒジンさんですが、引き続きプロデューサーとして在籍します。個人的にはプロデュース業はそのままできるのだから、NewJeansのメンバーもファンは安心では?と思っていたのですが。
ミン・ヒジンさんは制作と経営の二つの権限を持ってはじめて、作品の質を保てると主張。メンバーたちもミン・ヒジンさんが経営するADORの中でプロデュースを受けたいと語っています。
経営権を失ったミン・ヒジンさんがファンが求めるNewJeans作品を作れるかが、「ミン・ヒジン騒動」の最大の課題と言えます。
NewJeansへのおせっかいな提案
先ほど筆者はNewJeansファンが聴きたいのは、”ミン・ヒジンさんがプロデュースした作品”と書きましたが、個人的にはミン・ヒジン以外のプロデューサーと組んで、新しいNewJeansを見たいなぁと思っています。
これまでミン・ヒジンさんと親子のような関係を築いていたNewJeansですが、今回の騒動を機に母ミン・ヒジンさんから自立。新たなプロデューサーとタッグを組んで、これまで見せてこなかった姿を見せることもアーティストとして重要ではないでしょうか。新しい姿を見せることで、新たなファン層を獲得できるかもしれません。ピンチはチャンス。ミン・ヒジン以外のプロデューサーと仕事をすることで、新しいNewJeansが誕生します。ニューNewJeans、とても楽しみです。