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村瀬秀信『虎の血 阪神タイガース、謎の老人監督』

 1955年の阪神タイガースを率いて、わずか33試合で解任された謎の監督、岸一郎。オーナーに独自のチーム再建論を投書して就任が決まったという、にわかに信じがたい逸話で知られる謎の老人監督の実情を追ったノンフィクション。  ここ数年、プロ野球の試合はまともに見ておらず、ネットで成績を追うくらいなのだが、中村勝広~第一次岡田政権までは熱心にタイガースを追っかけており、プロ野球関連の雑誌やら書籍などもそれなりに読んでいたのだが、岸一郎については「なんかすぐクビになった監督がいた」く

    • 芦辺拓『乱歩殺人事件 悪霊ふたたび』

       休筆明けの江戸川乱歩が探偵小説の本舞台「新青年」へ連載を開始した長編「悪霊」、読者の熱狂に迎えられた同作は、しかし、わずか連載三回で中絶してしまう。  奇妙な傷跡の残る死体と密室殺人、謎の紋様が残された紙片、降霊会での不可解な出来事、残された謎の解明に加え、なぜ「悪霊」が未完となったかという、江戸川乱歩を自身巡る謎に迫っていく。  自分が「悪霊」を読んだのは光文社文庫版全集の刊行時なので、20年近く前になる。なんとなく中絶作であることは知ってたように思うが、冒頭の「発表者

      • 片野ゆか『セカンドキャリア 引退競走馬をめぐる旅』集英社

         引退したサラブレッドの大半が余生を送れないという現実について、4年間の取材を通して現状とその打開に向けた動きが丹念が拾われている良書。  競馬ファン目線でいえば、どうしても著名馬の行方の話ばかり気にしてしまうところ、本書で取り上げられている馬は中央未勝利レベルの馬が殆どで、優勝劣敗の世界から脱落した者の行方に目を向けるのは、競馬に縁のなかった著者としては自然な流れだろうか。  例えばヴェルサイユリゾートファームやAERUの話なんかはまったく出てこない。  それなりに名のある