夢 2020年4月19日
宮殿のような立派な建物の前にいる。宿らしい。庭には池やヤシのような木々がある。ふっくらして裾を絞った麻のズボンと、同じく麻で腰くらいの丈の詰襟のついた上衣を着た男女が仕事の内容を説明する。服の質感や黄ばんだ白色は太陽が近く湿度の低い土地において過ごしやすそうに見え、どことなくアラブの風情を思わせる。やってくる客たちに挨拶をし荷物を受け取ることが自分の仕事らしかった。
じきに客が来たので言われた通りにお辞儀をし、荷物を受け取る。客はみな男であった。客の衣装もまたアラブ風を思わせるものだったが、ズボンの形は似ていたが上衣は尻が隠れるくらいまで長くなっており、素材ももう少しさらりとしている。色は鮮やかな青や紫であった。ムスリムで被られるような丸く平らな帽子を被る者もいた。自分はお辞儀をしながら客のことも自分の仕事も間抜けだと思った。
二つか三つ荷物を受け取って建物に入ると、内側も青銅色の混じった大理石が敷かれた立派な様子であった。ひらけた空間で他に部屋はなく手前と奥との間に雛壇がある。段差を登って最奥のついたての裏へ向かい、荷物を置く。すると電気が消えたのか辺りが薄暗くなる。仕切りから出て室内を見ると案の定電気が消えており入り口やどこか上方の窓か何かから入り込んでくる光だけが建物の中をぼんやりと青白く照らしていた。
自分は一先ず建物を出なくてはならないと思った。そこへ女がやって来た。女は平安時代の狩衣のような着物を着ているが重ね着はせず薄く軽そうな服である。全身が白く顔までもが真っ白である。細い目は切れが長く和風美人と言っても良かった。ただ表情が全く無かった。ぶつかってきたのでよろけた拍子に女の服の裾をつかむと、裾からはぽたぽたと赤い液体が垂れた。液体の広がった手の感触に血だと思った。女は生理のない代わりに、平時は真っ白な服が他人の手で絞られるとそこから血が出るのに違いなかった。見ると女の服の下腹部に赤黒いしみが広がっていた。辺りに目を向けるとこのような白い女がたくさんいた。みな同じ白の衣装に同じ白の顔をしており無論表情はなかった。背の大小の違いのみあった。みな部屋の奥へと向かっていた。
その他にも黙々と人が入ってきており、建物の中は非常に混み始めていた。人はみな様々な色の泥水で汚れていた。自分はとにかく外へ出なくてはならないので人混みをかき分けて外へ出た。空もいつの間にか暗くなっていた。昔の知り合いがいたので挨拶をし透明な泥水を掛け合った。Aとは以前交流がなかったのでこのように自分に笑いかけるのを初めて見たと思った。
ところで建物の中に自分の荷物を忘れたことに気が付いた。戻らなくてはならなくなった。再び入ると、雛壇に大勢の人が並び写真撮影をしようとしていた。撮影者はなぜか上手く撮れないと頻りに首を傾げていた。周りには他にも写真を撮ろうとする人たちがいたが一人として上手く撮れる者はいないようだった。この室内に蔓延している怪しげな何かが邪魔をしているらしかった。
自分は少し恐ろしくなったので雛壇にBを見つけついてきてもらうことにした。二人で奥へと向かう。寧ろお化けの歌などある方が怖くないかもしれないと思いBに歌を頼もうとしたが辞めた。ついたての裏にリュックサックを見つける。ほっとして出ようとするとBがリュックサックについてもっと小さく軽いものがいいと不満を言う。自分もそう思うが入れる物が多いのだと言って歩き出すともっと小さい鞄でも入るだろうと追いかけてくる。恐らくBも建物の中に充満する何か恐ろしいものに憑かれたのだった。万が一鞄に入りきらないで手が塞がる羽目になるのは嫌だと言い返そうとしたところで目が覚めた。