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当院で行う「歯の移植」について

みなさんこんにちは
2025年12月東京都杉並区にのだデンタルクリニックを開院予定の
歯科医師の野田裕亮です

歯を失ったとき一般的に紹介される治療法は
❶インプラント
❷ブリッジ
❸入れ歯
です。
前回は第4の選択肢「歯の移植」についてお話しました。

今回は、のだデンタルクリニックで提供する治療法
歯牙移植について解説していきます。

当院で行う歯の移植とは?

保険で行う歯牙移植

歯の移植(歯牙移植)って保険が効くのご存知ですか?
保険適応になるには条件が限られます
・移植する歯が親知らずまたは埋伏した不必要な歯であること
・移植する場所に保存不可能歯な歯が残存していること
・それぞれのサイズが見合っていること
が条件となります。
つまり機能している親知らず以外の歯は移植歯として認められません。
また昔抜いてしまっている欠損部分への移植も保険適応となりません。
親知らずのサイズが大きく骨増生のように人工骨や再生療法などを併用した移植は
保険適応となりません。
以前は抜かなくてはいけない悪い歯を抜歯し、
同時に親知らずを抜歯して移植する必要がありました。
しかし、平成26年4月の保険改定により、以前抜歯した部分に新たに骨を削り、歯を移植することが保険診療で認められるようになりました。
しかしながら保険の移植の場合は

歯牙移植の流れ


「抜いてお引越しをして植える」
それ以上でもそれ以下でもないのです。

保険外診療で行う歯牙移植

当院で行う保険外診療の歯牙移植は保険の歯牙移植の弱さを解消する術式です。
移植の成功は移植歯歯根を覆っている「歯根膜」と呼ばれる組織が移植先で生着し
結合することにより成り立ちます。

移植歯の生着はこの歯根膜の再生が起こるか否かに左右される

つまり歯根膜の再生が起こらなければ揺れが止まらずに移植失敗となるわけです。どんなに100%の手術を行なっても最後は細胞の再生に賭けるしかない。
その不安定な予後が歯牙移植の普及率が上がらない原因だと私は考えています。

当院ではこの「歯根膜の再生」の生着率を保つため、
①歯牙レプリカを利用した歯牙移植術
②再生療法を併用した歯牙移植術
③高度な根管治療の実施
④セラミック治療による再発にしにくい被せ物
を行なっております。

①歯牙レプリカを利用した歯牙移植術

従来の歯牙移植の場合、ある程度移植床(移植をする場所のこと)の形成を
行なったら移植歯を抜歯して移植床に当てがいます。
移植歯がすっぽりと入るまで移植歯を当てながら調整を行い、
移植歯がしっかり入ったタイミングで縫合・固定を行います。
ここで移植の成功に関わる問題となることが2つあります。

一つ目は何度も出し入れされることでの歯根膜へのダメージ。
移植床へ何度も出し入れをすることにより歯根膜表面にダメージが加わります。
その結果、歯根膜剥離が生じてしまうと歯根膜の再生が起こらず、生着不良、失敗につながってしまいます。

二つ目は移植歯の乾燥時間。
移植歯は乾燥状態で18分以上経過すると歯根膜の損傷から
生着率が著しく低下すると言われています。
つまり移植の制限時間は「18分」
インプラント治療のように規格化されたドリルやフィクスチャー(ネジ)であれば18分という時間はそれほど難しくない時間でしょう。
しかしながら一つとして同じ形のものはない移植歯で18分以内に移植床へ
移植するのは熟練した技術を要します。

以上の問題を歯牙レプリカが解決してくれます。

左上:3Dプリンターで出力した歯牙レプリカ 右上:実際の移植歯 
歯牙レプリカがあることでスムーズに移植手術することが可能だ


歯牙レプリカとは3Dプリンターで製作した移植歯のダミー。
事前診断を行う際に撮影したCTデータから移植歯のデータを切り抜き、
3Dプリンターで出力して製作を行います。
滅菌処理を行い、移植手術時に移植歯の代わりに移植床形成時に使用します。
移植歯を使わずに移植床の形成を行えば歯根膜のダメージは全くありません。
移植歯の抜歯して移植するステップも最後にできるので、
移植歯の乾燥時間もほとんどありません。
結果として歯根膜のダメージを最小限に抑えた手術が可能となるのです。

②再生療法を併用した歯牙移植術

1980年代以降歯周病などで失われた歯周組織(歯を支える骨や歯肉)を再生させる治療法として歯周再生療法が登場しました。
その中でも1990年代に登場したエムドゲインは歯根膜の再生を促進するタンパク質で歯の発育過程に似た環境を作り出し、骨や歯根膜の再生を助ける効果がある材料として現れました。
歯周病により失われた歯周組織の再生と移植後の生着に関わる歯根膜の再生は
その機序が同一であるため、歯周再生療法を応用し移植時に移植歯歯根表面に
エムドゲインを塗布して移植を行なっております。

移植歯歯根表面にエムドゲインを塗布するところ


また骨欠損が大きい場合には骨の回復に時間がかかるため、人工骨を併用して
骨の回復の補助を行なっております。

③高度な根管治療の実施

移植歯となる歯は親知らずであることがほとんどです。
親知らずは複雑な根管であることが多く、その再発率の多さから
根管治療が難しいとされています。
その難しい根管治療を可能とするのが

根管治療の三種の神器であるCT・マイクロスコープ・ラバーダムは精密な根管治療には必須

CT、マイクロスコープ、ラバーダム環境下で治療をすることです。
当院ではCT完備で全治療にマイクロスコープを使用、根管治療はラバーダムを用いて行なっています。
根管充填材も世界でスタンダードな根管充填材(日本では認可されていないため保険適応外)で治療を行うため再発しづらい治療が可能です

④セラミック治療による再発にしにくい被せ物

セラミック治療は耐久性が高く、また汚れのつきにくい材料です。
そのため銀歯の治療に比べ再発のしづらい治療をして現在使用されています。
移植治療が成功し、噛めるようになればそれはもう他の歯と変わらないあなたの歯
再発しづらい被せ物により1年でも10年でも長く再発を防いでいくことが
移植歯を長く残していくためには必要になります。

再発のしづらいセラミック治療で長期的予後に期待

Youtubeで解説中

今ご紹介した内容はYoutubeでも解説しています
よろしければこちらもご覧ください!

いかがだったでしょうか?
当院で導入していく治療「歯の移植」
保険の治療が悪いわけではありません。
ただ、保険でカバーできる治療は限られます。
保険診療外の歯牙移植では最少年齢で18歳、最高年齢で68歳
術後経過5年以上経過しますが全く問題なく使えている方ばかりです。
成功率は90%程度。
以前のブログでもお話しましたが、
移植の成功か否かは組織の再生の可否によるものなので、
100%の治療を行なっても最後は身体の反応によるものに
委ねなければなりません。
私たちにできることはいかにリスクを下げること。
成功率を下げてしまうリスクを排除すること。

そのために保険適応外とはなりますが、
移植歯にとって最高の環境で移植手術を行なっております。

歯を抜かねばならないと診断された時、
「歯の移植」という治療があることぜひ思い出してみてください。

あなたの歯が1本でも多く残せますように・・・

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