美術館で垣間見る、フランスのアートに対する教育
- 2018/02/21 -
今日は、放課後に自由参加の課外授業へ行ってみた。
今回は現代アートの鑑賞。
場所はLa Panacée(パナセ)という名のアートセンターで、旧市街の真ん中に位置する。
モンペリエのHPでは、”異なる芸術分野の間の対話を奨励する創造的な芸術の場”とのこと。
入ってすぐのところには広いカフェスペースがあったり、いろんなタイプの展示室があったり、緑の木々が眩しいテラスもある。
入り口の外側からは想像ができないような広さだった。
基本的な展示はコンテンポラリーアートで、廃材で作られたオブジェや奇抜な色のデザイン、下の写真のような体験型の作品など。
この時の展示は、入場料は無料だった。(有料の展示もある)
作品が平面ではなく立体的で大きいせいもあってか、とてもダイナミックで強いエネルギーを持った作品ばかりで、毎回「わ!」と圧倒はされるけれど、私としてはどれも正直「う~ん…」という感じだった。(なので写真なし)
引率の先生には、「どの作品が好き?この作品についてキミはどう思う?」と部屋を移る度にフランス語で聞かれるけれど、私は“特に好きなものはないし、全部が奇抜すぎてよくわからない…”という思いに、実は最初の部屋から囚われてしまっていて、言葉に詰まった。
日本語だったならまだ多少は誤魔化せたかもしれないけれど、私の語彙力のないフランス語では間を保たせるようなことを言えなかった。
というか、伝えたい言葉ですらなかなかベストな言葉を見つけられない。
あんまり好きな感じじゃないなぁ…とぼんやり感じながら、一人のろのろとみんなの後ろを歩いていた。
ふと横を見ると、おじいちゃんがお孫さんと思しき小さな子どもに、一生懸命に何かを話しているのが視界に入った。
1~2歳の、やっと言葉が出るようになってきたくらいの小さな小さな男の子に、おじいちゃんは作品を指しながら何かを伝えている。
私は彼のフランス語が聞き取れなかったので、彼が何を言っていたのかは分からない。
おじいちゃんが思う、作品に対する感想だったのか。
それとも、作品に込められた思いを男の子に説明していたのか。
どちらにしても、日本人が同じ年齢の子どもに対して行うそれとは全然違うなと思った。
しかも子どももわめいたりせず、行儀よくおじいちゃんに抱っこされて聞いていた。
こんなに幼いころから、当たり前のように家族と芸術に触れられる場所へ行き、そばにいる大人がその作品や作者・作られた背景に対して感じることを言語化するということを自然にやっているのか。
”詳しく説明しても、子どもだから分からないだろう” じゃなくて
”芸術の楽しみ方をまだ知らないから、教えている”
そんな風に私には見えた。
これは偶々だったのかもしれないけれど、日本でももっと、フランスのように芸術が当たり前に生活の中に存在するもの、そして守られる価値のあるものになったらいいなぁ、とそのおじいちゃんと子どもを見て思った。
私の周りのフランス人たちは、ブランドや作者の知名度に関係なく自分がいいと思ったモノには迷わずお金を払う。
それは、その人自身がそのモノの価値を納得して見出しているんだと思う。
(もちろんそうじゃない人もいると思うけど)
そういう力があると、幼い頃から自分の「好き」の感覚を疑わずにいられるというか、何に対しても自分軸で生きていられるような気がする。
私は何度も揺らいだことがあるので、すごく憧れる。
これは最後の最後で見つけた、私の一番気になった作品。
石のような、宝石のようなものでできた器。(?)
まっしろな雪の結晶のようなものにまみれるようにガラスケースに入れられ、通路にひっそりと展示されていた。
錆びた金属と並んで、すごく神秘的だったのを覚えている。
今振り返ると、先生に作品の意見を求められた際に、日本語で浮かんだ適当な言葉たちをフランス語で言えなくてよかったのかもしれない。
きっとそれは、私が自分の中で探し出した「できるだけ優等生的な意見」であって、フランスでは”非常につまらないヤツ”と受け取られそうな、薄っぺらいものだっただろうから。
小さな記憶メモ。
集合場所に来た時、今回引率してくれた先生が履いていた靴(土足)が、どう見ても黒い足袋にしか見えなかったのでこっそり突っ込んでみた。
すると、「日本の忍者の靴だよ、かっこいいでしょ!」といって得意げに笑ってくれたので、一人で参加していた緊張がちょっと緩んだ。
(しかも、コーディネートにもそれなりに似合っていたからすごい)
フランスに日本が好きな人がけっこういると実感すると、なんだかすごく嬉しくなるのは、私も同じようにフランスが好きだからだと思う。
さて、次回は、「フランスの最も美しい村」に選ばれている Saint-Guilhem-le-Désertへ行った話。写真たくさん載せます!
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