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オタクとギャルの【夢十夜『第一夜』】

第一夜

こんな夢を見た。

僕は部屋のベッドに横になってた。
目の前には彼女がいて、まるでアニメのワンシーンみたいに言った。
「うち、もうすぐ死ぬかも」って。
彼女はストレートな黒髪を枕に広げていて、その顔はちょっと小顔っぽくて結構可愛い。
顔色も悪くないし唇だって血色いいから全然そんな風に見えないけど、彼女の声には妙なリアリティがあった。

「え、マジで?ほんとに?」って僕が聞くと、彼女は少し笑って「うん、ホントだって」って言って大きな黒目がちな目で僕を見た。
目の中には僕の姿がくっきり映っててなんだか不思議な感じ。

「いやでも、そんな簡単に死なないでしょ?」って冗談めかして言ってみたけど、彼女はちょっと寂しそうに「でも、そうなんだよねー」ってつぶやく。
それがなんかめっちゃリアルで僕はぐっと黙り込んだ。

「死んだらさ、埋めてくれる?なんかさ、大きめのクリスタルピアスとかで穴掘ってさー。それでさ、スワロフスキーのチャームとか拾って墓にしてくれたら嬉しいなー」
なんか急に変なこと言い出した。
アニメとかラノベの影響かなって思ったけど彼女の目は真剣だった。
「墓のそばで待っててね、うち、また会いに行くから」って。

「いつ来るの?」って聞いたら、彼女は少し考えて「朝が来て、夜が来て、エンドレスな感じでさー」って。
そんな気の遠くなるような話を彼女はなんか当たり前みたいに言う。

「100年くらい、待っててくれる?」って急に彼女は目を輝かせて言った。
その瞳の中に映る僕はなんだかちっぽけに見えたけど、なんか拒否できなくて「…うん」ってうなずいた。

彼女の瞳は段々ぼやけてきて目を閉じると涙が一筋頬を伝った。
気づけば彼女は静かに息を引き取ってた。

僕は彼女を庭に運び出して言われた通りにやった。
大きめのクリスタルピアスを使って穴を掘って彼女を埋めて上に拾ったスワロフスキーのチャームを使ってキラキラさせながら砂をすくって…。
そのスワロフスキーのチャームは長い旅をして丸くなったみたいだった。

その後、僕は墓の前で座り込んで待ち続けることにした。
太陽が東から昇って西に沈む。
その繰り返しを何度も数えた。
でも、100年なんて長すぎて途中で「もしかして騙された?」なんて思い始めた。

そしたら彼女の墓から細い茎がスッと伸びてきて僕の胸の前で止まった。
その先に小さなつぼみがあってやがて真っ白な花が咲いた。
その花を見た時、なんだか彼女が笑った気がしたんだ。

僕はその花をじっと見つめてこう思った。
「まぁ、彼女が会いに来るって言ったのはこういうことだったのかな」って。


オリジナル : 夏目漱石【夢十夜】

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