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グラビアポエム
不思議なことに、グラビアには、なぜか、モデルの写真の脇に詩が添えてある。
これを「グラビアポエム」と呼びますね。とりあえず。
キャッチコピーはキャッコピーとしててあるんですけど、たとえば、モデルの横に、「君と一緒にいられれば、毎日があたたかくなる」とかね。
だいたい、読者としての感覚の詩なんですけど。
なぜ、あるのか分からない。
読者のほとんどは読んでいないと思うんですけど。
それでも、なぜか、のつている。
グラビアの定型なんですかね。
これは編集者が書いているんですけど。別にモデルの人の哀歓を表出したものではなくて。
編集者がその気になって、(その気になって、というのは、モデルの女子になったつもりということである)男子に受けそうな文字を連ねるんですよ。イメージの湧出ですね。
いつごろからあるのか。
出版社の書庫で元も古いものを見たら、すでに入っていた。
何時頃からあるんですかね。
モデルの横に詩のようなコピーを入れるのはファッション雑誌がやっていますね。
手元のvogueを見たら、「夢見るサーカスガールの一夜」とありました。
詩と言うより、コピーですね。
でも、スタイルは似ています。
20世紀前半のvogueを見て見ると、絵なんですが、何もありません。
同時期、カラー印刷が発展して、ファッション誌ができてんですが、当然と言うか、ピンナップ誌も発売されていました。
それを見ると、何か書いてあるんですが、これは、詩ではなく、表題ですね。
このスタイルは、新聞などの風刺画のスタイルから持って来た物だと思います。
二十世紀に入って、印刷技術がしんぽしたのにともなって、エロティックな表現を売りにした雑誌が登場してくる。
その頃は、また写真ではなくイラストではあったが、ヌードを売りにした雑誌が人気を博していた。現代のグラビアの祖である。
それを紹介した本を読んだことがあるが、そこには、ヌードの女性のイラストに、題名がついていた。
例えば、軽やかなショールをまとったじょせいのいらすとには、『春の訪れ』だったり、女性の服を脱がせているイラストには、『武装解除』などという、ユーモア交じりの物もあった。
それ自体は、絵画に題名がつくのが当たり前だったから、それを模倣したものと思われる。
そのタイトルだったり、絵の解説的な一文が、にほんのグラビア雑誌では、エロティックというより、アイドルを中心としてきた以上は、恋愛的なものを建前としていたから、ポエムのようなものに変化したものだろうと思っている。
ただ、かつてのピンナップ雑誌にあったように、その文章があれば、一層、面白く感ずるものではない。
実際、写真集には、入っていないが、これは、写真集と、雑誌に差をつけているのもあるし、写真集は、見るもの、雑誌は読むもの、という意識の違いがあるのかもしれない。
もう一方のルーツは、日本の誇る春画だろう。
ヨーロッパの画家は、ピンナップのイラスト仕事など、書かなかったようだが、日本の浮世絵師は、平気で家庭ていた。ペンネームを変えてはいたが。
北斎、歌麿、国芳あたりが有名。
春画
日本の場合、エロ絵は、浮世絵でしょうね。
浮世絵は、グラビアと、ファッション誌の両方を兼ねていましたから。
芸術と言うのは、どこの世界でも、エロティクなものを含まずにはすみません。
ヨーロッパの絵画なんて、エロですよね。
現代音楽が流行らないのは、官能的なものを排除してしまっているからじゃないでしょうか。
日本の場合、まあ、春画ですが、北斎も描いていますがね。たくさん。
エロの上にグロいんですよ。
エロと美が結びついてこない。日本の場合。
ヨーロッパの場合、「ウルビーノのビーナス」でも、ルノアールの絵にしても、エロいけど、グロくはない。美の方向に向けられたエロですよね。
ところが、日本の場合、同時期のエロ絵を見ると、グロい。
ま、技法の問題もあると思います。
油絵は、美を描くための物、浮世絵は、面白ければ描いてしまうという感じがあります。
で、その春画を見て見ると、余白にびっしり文字が書いてあります。
読むと、台詞なんですよ。
臨場感を高めているだけなんですよ。
ヨーロッパの絵画は、基本的に絵の中に文字を書き入れません。
書く場合は、枠で囲んでいます。
日本の場合、絵巻物くらいまでさかのぼると、ストーリーを文字で書いてありますが、絵とは、別の部分にしています。
光悦だと、文字を平気で書いていたし、宗達の絵にのせていました。
ただ、そこは、まだ、歌ですね。セリフじゃない。
ん? ここですか。グラビアポエムの祖形は。
もちろん、人物ではないですし、絵にのせているので、絵を今で言えば、デザイン、柄として扱っていますね。人物の絵には文字を入れていません。
グラビアポエムとは違う。
写真集以降から?
多分、写真からでしょうね。しかも、雑誌ではなく、「写真集」という商品ができてからなんじゃないかと思います。
何で写真からなのかと言えば、グラビア雑誌って、撮った写真を後で、写真集に使うんですよ。写真集を出さないモデルの方が多いんですが。
で、写真集とのランクの差をつけるためなんじゃないかと。
写真集と雑誌では、紙が違いますから、発色が違うんですが、ポエムのあるなしで、品質に差をつけたんじゃないかと。ない方がいいでしょ。
でも、雑誌だと、雑誌を読んでいるんだと思わせるためにグラビアポエムを入れる。
すべてのページに入れますからね。
荒俣宏さんなら、時期を知っていそうですね。
グラビアには、儀式的な羞恥心がある。
エロティシズムという観念で琳派を見る。
空間にはめ込まれた事物の嬌態。