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出産、虎の穴

2011年4月。カミさんと私にとって忘れられない出来事があった。長男の出産です。

みなさんこんにちは。nock3です。今日は私の子育て生活が始まった記念すべき日、長男の出産について書きたいと思います。

フリースタイルについて

レスリングには、「グレコローマンスタイル」と「フリースタイル」があります。「グレコローマン」は、上半身のみに攻撃が許されるもので、「フリースタイル」は下半身も可。吉田沙保里選手が得意とするタックルは下半身への攻撃なので、「フリースタイル」ですね。

そして分娩にもフリースタイルがあります。

一般的な分娩のイメージは、分娩台によるもの。しかし、我が家の第一子出産の際にお世話になった病院は、分娩台だけでなく、自由なスタイルで出産を行う「フリースタイル分娩」という方法も選択できました。動物としての本能を活かして、自由に産もうではないか!と、院長先生が言ったか言わないかは不明です。

第一子出産を控えて、カミさんと私は病院から分娩時の立会に向けて様々な説明を受けていました。その中で担当の先生から分娩時のスタイルについても説明があり、「当院では分娩台を使わないフリースタイル分娩を推奨しています。分娩台も使えますが、どうされますか?考えておいてください」と言われました。

カミさんと私は家に帰って話し合い、病院が推奨しているフリースタイルで分娩してみることに決めました。自由に憧れる年頃でもないんだけど、何だか「フリー」という横文字に惹かれてしまったのかも


陣痛は突然やって来た

出産予定は2011年5月半ばということで、当時はカミさんが山形の実家に里帰りしていたため、私は一時的に仙台で単身赴任生活を送っておりました。出産の前日(この時は分からなかった)、学生時代からの飲み友達と久しぶりに仙台市内で酒を飲んでいました。東日本大震災後、お互いの無事を確認し、また、翌日がその友人の誕生日ということもあり、結構な量を飲みました。そしてその後、見事に電車で乗り過ごしてしまいました

終電間際で、たどり着いた駅はタクシーも見かけないど田舎の場所。かなり距離があったけど、翌日は休みだったし、歩いて帰ることにした。たんぼ道をトボトボ歩いていたとき、カミさんからの着信がありました。電話に出ると、「陣痛が始まったみたい。今から病院行くから、あなたもすぐにこっち来て!」とのこと。。。マジか。。。

当時住んでいた場所からカミさんのいる山形市には車を使って行くしかない。でも、その時私は完全な酔っぱらい。当然、車なんて運転できない。初産だし、行かなきゃないことは分かっていたけど、状況をカミさんに説明して翌朝に病院へ向かことに。

出産に間に合わなかったら、たぶん、一生カミさんからチクチク言われるんだろうなーと覚悟しながら床に就きました。


いよいよ分娩室へ

翌日、車を飛ばして山形市内の病院へ向かいました。まだ出産していなかったので、ホッと胸をなで下ろす。初産ということもあり、陣痛が始まってもなかなか子宮口が開かず、カミさんは身体の痛みにかなり苛立っていました。私も初めての立ち会い。マッサージをしたり、話を聴いたりしてタイミングを待つ。前の晩に陣痛が始まってから約20時間が経過したその日の夜、とうとう分娩の準備にはいる。カミさんもかなり疲れていましたが、私もカミさんのサポートで精神的にもしんどかったため、二人とも「もう、早く産まれてくれ!!」と心底思っていました。陣痛の間隔が短くなってきたところでやっと分娩室に案内される。

カミさんの手を引き分娩室に入った瞬間、私とカミさんの脚が止まった。なぜならその部屋には約2.5m四方の四角い緑色のマットがあるだけ。その上にバランスボールとストレッチポールが無造作に置かれている。部屋の隅っこには、申し訳なさそうに分娩台が置かれていた。。。

「えっ、ここですか?」とカミさんが看護師さんに聴くと、看護師さんは笑顔で「はい、このマットの上で産んでもらいます♪」と答えた。

カミさんと私はマンガみたいにお互いの顔を見て、思わず笑ってしまいました。

これ、リングじゃん。

再びマットを見たとき、私の頭の中では長州力の入場曲が流れ、これからリングにカミさんを送り出すセコンドの心境になっていた



昔、プロレスファンだったカミさんもほぼ同じ事を考えていたようで、「プロレスのリングだ。私はジャンボ鶴田が好きだった。」と言う。

予想外の展開に、少しだけテンション上がってしまった我々。とりあえずスリッパを脱いでリングイン。でも、この後がどうして良いか分からん。
看護師さんは、「じぁー、どうしますか?どういう体勢でいきます?」と聞かれるが、逆にこっちが聞きたい状況です
カミさんが「どうしたら良いでしょう?」と質問返しすると、「多いのは四つん這いですかね。」と言うので、四つん這いになってみる。

バランスボールなんかも持ってみたりしたけど、不意にリングの上に上がらされたカミさんは落ち着かない感じで、分娩はなかなか進まない。そんな様子を見ていた先生は、「じゃあ、生まれそうになったら呼んで♪」と言って部屋を出て行った。その後、看護師さんも席を外す時間があり、リングの上にカミさんと私の二人が取り残される。。。エッ!?どうすりゃいいの??


先生の必殺技!?

リングインから1時間ほどが経過。赤ちゃんの頭がようやく見えだしたところで看護師さんが先生を呼ぶ。おお、いよいよ出産か?先生が来て様子をみて、「いきんでみて!」とカミさんに言う。カミさんは、体勢をいろいろ試してみたが、この時は四つん這いになっていた。

頭が見え始めてからしばらく時間が経った時、先生が「仰向けになりましょう!」と言って、看護婦さんと二人でカミさんをゴロンと仰向けにした

おお!見事なコンビプレイ!と思ったが、カミさんの体勢を見たら、分娩台に乗っているのと同じようになっていた。エッ!?これまでの四つん這いの姿勢って何だったの?と思った矢先、赤ちゃんの頭が出てきた!!

つーか、私はこんな真正面に居て良いのだろうか?そっちの方が心配になってきたので、先生の邪魔にならないようにリングサイドに移動した

しばらくして、赤ちゃんが出てきた。そして、私と目が合った!?(その時はそう思った。)

「オギャー」と新しい命がこの世界に出てきた瞬間。

赤ちゃんもカミさんも無事に分娩を終えた瞬間でした。私は感動というよりも、安堵の気持ちでいっぱい。ああ、母子ともに頑張った!!

私はセコンドとしての役割を終えリングを降りた。そして、その後2度とリングに上がることはありませんでした。


リングから降りて

嬉しい長男の誕生。ここから私は父親になりました。長男は分娩時に羊水を飲んで肺に入ってしまったとのことで、新生児集中治療室(NICU)に入ることになりましたが、数日で出ることができました。

初めての出産。父、母、子ともに初めての経験だったので、心身共に疲労困憊でしたね。しかも、リングの上で分娩。今となっては笑い話ですが、長男も9歳なので、そろそろこのエピソードを話してあげようかと思っています。

ちなみに、次男、三男は、長男とは違う病院だったのでフリースタイル分娩ではなく、分娩台での出産でした。2人目以降は陣痛から出産までかなり短いスピード出産だったので、カミさん的には長男の出産が特別思い出に残っているようです。私も同じですね。

これから出産を経験されるご家庭に参考になったかどうか分かりませんが、フリースタイル分娩を選択される方は、もしかしたら分娩時にリングにあがることになるかもしれないということを、心の片隅においていただきたい。それだけです。


以上、リング上での熱戦についてお伝えしました。


おわり



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NOCK│ノック
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