ブエノスアイレスで足を洗う
皮膚がん発生率が高いオーストラリアでは日焼け対策が徹底されていて、子供たちも覚えやすいよう
「Slip(長袖を着る), Slop(日焼け止めを塗る), Slap(帽子をかぶる)」
という標語があるんですが、
去年はコロナ対策も加わって「Slip, Slop, Slap & sanitizer(サニタイザー)」が親と学校の合言葉になりました。
日本では、風邪の季節になると「外から帰ったら手洗いとうがい!」がスローガンだけど、こちらではなぜか「うがい」の効果について強調されることは少ないです。
まったく不思議です。
薬局に行けば一応イソジンみたいな「Gargle」も売っていて、お店の人は
「まあ、これはさ、マウスウォッシュみたいにぶくぶくすればいいんだよ、うん」
なんてテキトーな感じでニコニコしていう。日本ではうがいと言えば「喉うがい」だけど、こちらでは口をすすぐ「口うがい」が日常的なのかもしれない。
ずいぶん前、ブエノスアイレスで1か月生活した時、ホームステイ先の家族は外から帰ると、手を洗うよりも「なにはともあれ」という感じで洗面台のところでひょいと片足ずつ上げて「足」をじゃぶじゃぶ洗っていた。
3月のブエノスアイレスはゆらゆら蜃気楼が立ち上るような暑さで、ヨーロッパ風の石畳はほこりっぽく、サンダルで一日中てくてく街を歩きまわって帰ってくると、足の裏が真っ黒になります。
「足を洗う」のは、やってみると感覚までさっぱりと洗われるようないい心持で、そうか「悪事をやめて堅気になる」というのはこういう感じなんだろうなとしみじみ思った。
「外から帰ったらひとまず足を洗う派」はどのくらいいるんでしょう。
変な人だと思われたらいやなので「こういう人ってるよね」風に森羅万象の一つとして「足洗い」の話を持ち出してみたら
「私も洗うよー。気持ちいいよね」
という人が意外と多くて驚きました。
ある時、ホテルの洗面所でいつものようにひょいと足を上げたら、上げた瞬間に、洗面台がうちのより高くて、マズイ、引っかかる!と思ってさらに高く上げたもんだから重心が崩れて、まあ簡単に言ってわりといろいろ危うかったです。
こうやって、世にいう密室迷宮入り事件は発生するのだと思った。そしてそこにコナン君は来てくれるとは限らない。
いろんな意味で「足を洗う」というのは、そう簡単にはいかないものなのだと思った。
みなさまも足を洗う際は気を付けてくださいね、ほんとに。