“食“のお話
今回のCOVID-19の自粛期間により在宅の時間が増えたことで食事と向き合う時間が増えた人も多いだろう。当たり前のように日常に存在していて、我々の生活に欠かすことのできない食を第一回目のテーマに議論しようと思う。
全4記事にわたって食に関する話を公開する。今回は1記事目として前提知識を共有すべく、食の概要についてまとめた。
■食の歴史
動物と同様に人類の祖先が食べ物を探すために歩きながら暮らしを進めてから約1万年前に定住を始め、増えた人口に対応するため採集だけでなく自ら食糧(家畜や農作物)を作り出した。
紀元前6000年ごろになると、メソポタミアではダムと灌漑用の水路の文明を開発し農業の生産量を増加させた。大規模な設備を活用し、これまで以上に固まって暮らす必要があり、帝国が完成した。つまり食の必然性から帝国が成立したのだ。
一方で3000年前のサハラ砂漠以南のアフリカでは、食糧事情がきわめて良好だったため希少性を確保する必要性がなく、帝国が形成されることはなかったと言われている。
その後は世界各地の宗教や国から、時代ごとに新な提言が生まれ食文化のイデオロギーに大きな影響を与えてきた。
ヒンドゥー教・ジャイナ教・仏教:肉食を禁止しているため、これらの宗教の信者は今でも多くが菜食主義者であり、精進料理を調理し食べる習慣がある。
ユダヤ教:カシュルート(適正食品規定)と呼ばれる食べてよいものと、いけないものに関する厳しい規則を定めている。
キリスト教:ユダヤ教から発展したため厳しい規則があったが、866年に金曜日を除きあらゆる肉を食べれる権利を認めれられるようになった。
イスラーム教:食は神からの祝福の証であるとされ、控えめに貯めることが推奨。処理された動物のみ許され、アルコールは禁止。
*Wikipediaより抜粋
18世紀末になると都市への移動が増え、大衆が労働を強いられるようになると外食かが進み、食の工業化につながる。保存方法や加工技術が発展していき食品のコスト削減に励んできた。
近代では、食は栄養価で測られるようになった。1880年ごろには「カロリー」、「ビタミン」の概念が登場し、味が二の次になった。アメリカでは味気のないものを素早く食べ満腹になるための手段が講じられ、食事にかかる数多の時間が削減されることで生産性が向上し、経済発展に加担した。
近代以降のグローバル化に突入した社会では、情報や人の行き来が加速しすることで、他国の食文化を体験できるようになった。しかしそのまま他国の食文化を取り入れるだけでなく自国風にアレンジされる例もある。
我々の生活に不可欠な食の産業は自動車業界の2倍以上の売り上げに相当し、これまでのように国の政治・経済・イデオロギーの面で巨大な勢力を担っている。
■現代社会と食
「世界の食料安全保障と栄養の現状」によると、世界では2017年に8億2100万人、9人に1人が飢に苦しんでいて、毎年910万人が栄養失調で命を落としている。一方で2018年、13億トンの食糧がゴミとして捨てられた。この量は生産された食料の3分の1に相当する。
*2018年版「世界の食料安全保障と栄養の現状」報告書より抜粋
我々の社会の食糧がいかに無駄に供給され、行き着くところに届けられていないかがわかる。SDGsにも飢餓をなくすことが一つの目標として掲げられるように無視できな状態である。
食の問題については命と密接な関係があるため生命との関連に目が行きがちだが、それだけではない。
先進国ではどの層においても効率化された食により食の時間は減り、一昔前のテレビ画面を共有しながら食事をすることもスマホなどのデバイスにより個別で画面を見るようにり食事中のコミニケーションの時間が減っている。
本来は会話がセットのはずの食事が個食化することでコミニケーションをとるはずの場を喪失している。現代社会の負の側面そのものを映し出しているようにも感じる。
豊さを語れる一方、社会問題も抱える食についての今後のあり方について3週にわたって議論を繰り広げていきたいと思う。
ー 参考文献 ー
『食の歴史』:ジャック・アタリ / 林昌宏 (翻訳) / プレジデント社
https://www.sbcurry.com/dictionary/global
https://ja.wikipedia.org/wiki/食のタブー
2018年版「世界の食料安全保障と栄養の現状」報告書
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