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【第226回】 Einstein エンゲージメント頻度(Frequency)について

以前に、Salesforce Marketing Cloud の AI 機能である「Einstein 送信時間最適化(Send Time Optimization)について」という記事を書きました。

そこで今回は、別の Marketing Cloud の AI 機能 である Einstein エンゲージメント頻度(Frequency)についても、解説してみたいと思います。


Einstein エンゲージメント頻度とは?

Einstein エンゲージメント頻度(Frequency)とは、各連絡先にとって 最適なメール配信回数 を AI が提案してくれる機能です。

これにより、メールの送り過ぎで購読者がストレスを感じて、購読解除される事態を防ぎつつ、顧客満足度を向上させることができます。

💡「購読解除の防止」と「顧客満足度の向上」がこの機能の目的ですので、まずは覚えておいてください。


モデル生成の制約

  • Einstein エンゲージメント頻度をモデル化するには、少なくとも 10 人の購読者が必要です。

  • Einstein エンゲージメント頻度をモデル化するには、最低 5 つの送信(送信間隔)が必要です。28 日間の中で、少なくとも 5 通の Commercial 分類のメールを受信する必要があります。

これらの条件が揃うと、いよいよ Einstein エンゲージメント頻度が使用できるようになります。


仕組み

Einsteinは、連絡先の過去 28 日間の Commercial 分類のメールエンゲージメントデータを分析し、以下のように判断します:

配信頻度の分類

  • 飽和(配信回数が多すぎる場合)
     → 開封率やクリック数を考慮し、最適な配信回数の提案を受けて、購読者のストレスを軽減してください。

  • 達成(配信回数が妥当な場合)
     → 現状維持で引き続き成果を最大化してください。

  • 未達(配信回数が少なすぎる場合)
     → 適切な頻度を増やして行き、売上拡大の機会を広げてください。

※ 一度モデル化されると、各連絡先ごとに、最低 5 通の受信がなくとも、何らかの配信頻度の分類がされます。
※ 連絡先ごとの配信頻度の分類は、毎日変化します。

「ほぼ飽和」設定について

上記 3 つの他に、「飽和」の手前の状態を示す「ほぼ飽和」という設定が可能です。これにより、まだ「飽和」状態ではないものの、それに近い連絡先を特定できます。

<重要>
「ほぼ飽和」の連絡先は、「達成」か「未達」のどちらかに分類される可能性があります

つまり、以下のどちらかの状態です。
①「ほぼ飽和」かつ「達成」状態である
②「ほぼ飽和」かつ「未達」状態である

※「ほぼ飽和」の連絡とは、もう少しで「飽和」となる連絡先なので「飽和」の連絡先には含まれません。

「ほぼ飽和」設定の種類:

  • あと 1 通のメールで連絡先は飽和限界に達します。

  • あと 3 通のメールで連絡先は飽和限界に達します。

  • あと 5 通のメールで連絡先は飽和限界に達します。

設定時の注意点

同じジャーニー内で、複数の「ほぼ飽和」設定を使用する場合は、「あと 1 通」→「あと 3 通」→「あと 5 通」の順で上から評価してください。その理由は、「あと 5 通」は「5 通以内」と同義のため、他のすべての条件を満たしてしまうからです。


機能・活用方法

1. Einstein エンゲージメント頻度ダッシュボード

アカウント全体の配信頻度の分布状態を確認できます。

※ このダッシュボードは、1 週間ごとに更新されます。
※ 連絡先ごとの配信頻度の分類は、毎日変化します。
※ 各連絡先の具体的な状態(「飽和」or「未達」など)はダッシュボード上では確認できません。
※ Transactional 送信とテスト送信は分析されません。

2. Journey Builder の頻度分岐アクティビティ

Journey Builder では、頻度分岐アクティビティをドラッグ&ドロップで簡単に利用できます。

※ 上記の通り、データが不足している連絡先は、「達成」セグメントに分類されるという記述がありますが、実際には「達成」以外にも「飽和」や「未達」に分類されるケースもあるようです。下のグラフが、データが不足している連絡先がどのように評価されているかを示していますが、「達成」が大半ですが、「達成」以外にも、ごく一部通ったことが確認できます。


各連絡先の具体的な状態を確認する

2020 年 10 月までは、各連絡先の状態が確認できる 以下の 2 つの専用データエクステンションが Marketing Cloud で有効化されていました。

  • Einstein_MC_EMAIL_Frequency_Undersaturation

  • Einstein_MC_Email_Frequency_Oversaturation

ただし、これらは廃止され、現在は使用できません。そこで、別の方法で、各連絡先の具体的な状態をデータエクステンションに格納してみましょう。

その格納方法とは、Journey Builder で行います。今回、「ほぼ飽和」設定がない場合と、ある場合の 2 パターンで作成してみます。

格納先データエクステンションの作成

「連絡先の更新」アクティビティで情報を格納しますので、送信可能データエクステンションで以下の項目を作成します。

  • Id ・・・ テキスト型(50)、プライマリーキー

  • EEF1 ・・・ テキスト型(50)

  • EEF2 ・・・ テキスト型(50)

① EEF1 に、「ほぼ飽和」設定がない場合の状態を格納します。
② EEF2 に、「ほぼ飽和」設定がある場合の状態を格納します。

Journey Builder の設定

①「ほぼ飽和」設定がない場合

分岐は以下の通りです。

各「連絡先の更新」アクティビティでは、EEF1 にそれぞれ「未達、達成、飽和」の 3 種が入る形で設定して下さい。

この状態で、日次のスケジュールでジャーニーを実行します。

②「ほぼ飽和」設定がある場合

分岐は以下の通りです。複数の「ほぼ飽和」設定を使用する場合は、「あと 1 通」→「あと 3 通」→「あと 5 通」の順で上から評価してください。この理由は、「あと 5 通」は「5 通以内」と同義のため、すべての条件を満たしてしまうからです。

各「連絡先の更新」アクティビティでは、EEF2 にそれぞれ「あと 1 通、あと 3 通、あと 5 通、未達、達成、飽和」の 6 種が入る形で設定して下さい。

この状態で、日次のスケジュールでジャーニーを実行します。

前述の通り、「ほぼ飽和」の連絡先は、「達成」か「未達」のどちらかに分類される可能性があります。よって、「ほぼ飽和」の連絡先を確認する場合は、「達成」と「未達」より先に分岐を作成する必要があります。

この方法の場合、一部の連絡先(ジャーニーにエントリーしなかった分)が古いデータのまま残る可能性があります


データエクステンションの使い道について

これらのデータエクステンションの使い道は多岐にわたると思います。

例えば、「飽和」状態にある連絡先を事前に配信マスターから除外することで、常に「飽和」状態にある連絡先への配信を抑制することが可能です。

その結果、浮いた配信分を「未達」の連絡先に対して別のメッセージを送信する、といった活用が考えられます。

ぜひ皆さんも、どのような使い道があるか考えてみてください。

⚠️ 注意:本来の目的(「購読解除の防止」や「顧客満足度の向上」)とは異なる使い方で、Einstein エンゲージメント頻度を使用すると「想定されているモデルが崩れる可能性がある」と警告されています。そのため、無理な使い方を避けることをお勧めします。


Tips: 送信パターンが少ない場合の対処法

Einstein エンゲージメント頻度を導入したばかりの頃は、送信間隔にバリエーションが少なく、配信通数が少ない場合でも「飽和」と評価されることがあります。

このような状況を改善するために、以下の方法を試してみてください:

  • さまざまな顧客セグメントに異なる間隔でメッセージを送信する
    これにより、送信頻度のデータが徐々に蓄積され、より多様な送信パターンを得られるようになります。

少しずつデータを蓄積していくことで、Einstein モデルがより正確な評価を提供するようになります。ぜひ試してみてください。


まとめ

最後にもう一度復習すると、Einstein エンゲージメント頻度は以下の目的で活用できます:

  • メールの送りすぎや送り足りなさを自動で最適化

  • 顧客との関係を強化

  • マーケティング活動の効率向上

顧客にとって「心地よい」送信頻度を見つけることで、エンゲージメントを最大化し、長期的な関係構築を目指しましょう。

今回は以上です。


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