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【第123回】 Intelligence Reports for Engagement 内に初期設定で用意されている 5 つのメールレポートを確認する

Salesforce Marketing Cloud の Intelligence Reports for Engagement のピボットテーブルには初期設定で 5 つのメールレポートが用意されています。

■ 初期設定で用意されている 5 つのメールレポートとは

① Journey Performance
② Campaign Performance
③ Email - Audience Engagement Over Time
④ Campaign - Best Performing Send Day
⑤ Email - Daily Send Summary

この記事を読んでいる人の中にも、Email Studio の Tracking レポートや Analytics Builder の Reports(定型レポート)は活用しているものの、それらのレポート機能と比較して、比較的新しいレポート機能となる Intelligence Reports for Engagement となると、十分に活用できていない人もいるかもしれません。

そこで今回の記事を読むことで、これらの基本的な 5 つのレポートの内容を確認し、その内容を理解することで、Intelligence Reports for Engagement に対する苦手意識を取り除いて頂ければと思います。それでは、一つずつ紹介して行きます。

これらの 5 つのレポートは、すべて「メール専用」のレポートです。この記事を書いている 2024 年 1 月現在、Intelligence Reports for Engagement は LINE 配信や SMS 配信のレポーティングに対応していません。


① Journey Performance

まず最初に紹介する Journey Performance は、用意されている 5 つのレポートの中では、最も汎用性や活用度合いが高いと思われるので、他に先立って紹介しておきます。

このレポートは、ジャーニー内のメールアクティビティごとのエンゲージメントデータをサマリ形式で確認できるレポートとなっています。

※上の図におけるジャーニー名などは伏せさせてもらっています。

まず、Rows は、以下の 3 つです。

デフォルトではバージョンが分かれて表示されますが、もしバージョンをまとめて表示したい場合は Journey Version の項目を削除するか、上の図のように「非表示」にすることも可能です。

※ もし非表示にした場合は、エクスポートの際も、非表示のままエクスポートされますので注意して下さい。

ところで、このレポート機能を初めて使用する方のために Intelligence Reports for Engagement のピボットテーブルの基本的な使い方を押さえておきます。基本的には Rows、Columns、Values の 3 つを組み合わせてレポートを作成していく形になります。

ワードとして Rows、Columns、Values のままだと分かりづらいかもしれませんので、以下のように整理をしておきます。

■ ディメンション(定性データ)を配置するもの
Rows ・・・ (行・主語的・何が)← 主にこちらを使用
Columns・・・(列・主語的・何が)← Rows だけでは見づらいなら使用

メジャメント(定量データ)を配置するもの
Values・・・(列・述語的・どんな結果だった?)

※ ちなみに、Rows に対してメジャメント(定量データ)の項目を配置しようとしても、そもそも設定ができません。ドラッグアンドドロップが弾かれる結果となりますので、間違えて設定することはありません。

ディメンションとメジャメントの定義については、下記リンクに一覧がありますので必要に応じて確認して下さい。

Rows に続いて、Columns と Values も確認します。このレポートでは Columns は空欄です。そして、Values には、以下が 6 つが含まています。

今回使用されている Values には、以下のような注意点があります。

Email Sends は実際の送信数(顧客へ送信された数)とイコールになります。つまり、Email Studio のトラッキング内で表示される送信数(合計送信回数)の数字と同じになります。

■ 一方で、Journey Builder の送信の「成功」に含まれる数には、保留・購読取り消し済みのステータスの連絡先や除外スクリプトの対象となる連絡先が含まれるので、Email Sends の数字より若干多くなる場合があります。

■ また、Email Sends に似た指標に Email Deliveries という指標もありますが、こちらは Email Sends の数からバウンスの数を引いた数字になります。

■ Email Click To Open Rate(CTOR)は Email Unique Clicks の数から Email Unique Opens の数を割った割合です。

以上が Journey Performance の説明になります。

これらの説明を見て、とっつきにくいかも・・・と感じた方は、まずは一旦、項目を「非表示」にしてみたり、Values にバウンスの情報を足してみたりと、色々動かしてみることをオススメします。そのうちに慣れてきます。このレポートは、別名で保存ができますので、手始めにこのレポートを参考にして、オリジナルのレポートを作成みてください。


また今回、私の note では、初めて Intelligence Reports for Engagement を扱いますので「ピボットテーブルとフラットテーブルの表示の切り替え方法」と「エクスポートの方法」についても簡単に触れておきます。

まず、デフォルトではピボットテーブル側の表示になっています。これをフラットテーブルに切り替えるには、以下の図の赤枠内のボタンをクリックします。表示は、好みに合わせて切り替えてください。

また、このレポートを出力する場合においても、ピボットテーブルで出力するか、フラットテーブルで出力するかを選択できます。出力したレポートを見てそのまま終わるなら、ピボットテーブルでもよろしいかもしれませんが、エクスポート後に、エクセル等で加工するつもりであれば、フラットテーブルがオススメです。

More Actions のボタンより、スケジュールしてエクスポートするか、すぐにエクスポートかが選択できます。

この他の機能としては、フィルターの機能もあります。こちらは文字通りの機能ですが、例えば、あるジャーニーの結果だけをピンポイントで表示させたい場合や、メールの送信数が 10,000 通以上のジャーニーだけを表示したい場合などに使用できます。すべてを表示すると、逆に見づらい場合もありますので、うまく活用してみてください。

<重要>
左上に「日付の範囲」が指定されている箇所があるかと思います。こちらの「日付の範囲」は、Event Date ベースです。Send Date ベースではないので注意して下さい。もちろん、送信イベントにとっては、Send Date が Event Date になるのですが・・・。

例えば、この日付の範囲が、今日から 過去1 週間で設定されている場合でも、2ヶ月前の送信を、3 日前に開封していれば、抽出の対象になります。これは Value にエンゲージメントデータを含まない場合でも同じです。このことは、Tableau とは異なり、Intelligence Reports がマーケティングのエンゲージメントデータに特化したツールである所以です。

なお、Intelligence Reports はイベント日から 2 年間分のデータにアクセスできますので、この日付の範囲も、当日から 2 年前まで遡れます


② Campaign Performance

次に Campaign Performance です。

このレポートは、Salesforce Marketing Cloud で設定可能な「キャンペーン」ベースのレポートになっており、さらに、それに紐づいているメールごとのパフォーマンスが確認できるレポートです。

※上の図におけるメール名は伏せさせてもらっています。

Rows は、以下の 2 つです。(※ Columns は空欄です。)

このキャンペーンとは、複数の施策をまとめることができる「タグ付け」機能のようなもので、キャンペーン単位で結果を集計が可能になります。このキャンペーンの設定は Salesforce Marketing Cloud トップページの「キャンペーン」タブで行えます。

ちなみに、私の認識では、このキャンペーンはメールの送信前に設定しておく必要があり、すでに送信済みのものに対しては、後から設定ができないという認識です。よって、計画的なキャンペーン設定計画が必要になります。大半の方は、このキャンペーン設定は行わずにメール送信していると思いますので、その場合、この Campaign Performance レポートでは、キャンペーンの項目に関しては非表示で良いかと思います。

※ キャンペーンを非表示にすると、メールメッセージ単位の結果を確認するようなレポートになります。

※ もしキャンペーンに関して「後付できるよ!」という情報をお持ちの方がいましたら、この記事のコメントでお知らせ下さい。私の知識不足かもしれませんので。

続いて、Values ですが、こちらは、① の Journey Performance と全く同じなので、説明は割愛させてもらいます。


③ Email - Audience Engagement Over Time

次に、Email - Audience Engagement Over Time です。

このレポートは、送信時のパブリケーションリスト単位で、週ごとの「ユニークなクリック」の合計数を確認するレポートになっています。

以下がレポート表示の対象となっています。

Rows:Audience Name(送信時のパブリケーションリストを参照)
Columns:Send Week(週ごとのサマリ)
Values:Email Unique Clicks(ユニークのクリック数の合計)

このレポートは、①②とは異なり、Columns を使用する例になっています。下記の図の例のように「週ごと」や「月ごと」のサマリを確認したい場合は、このレポートを参考に作成してみて下さい。


④ Campaign - Best Performing Send Day

そして、Campaign - Best Performing Send Day です。

このレポートは「どの曜日が、ベストパフォーマンスとなっているか?」を確認するためのレポートになっています。

このレポートも ② のレポート同様、キャンペーンごとレポートになっていますので、キャンペーンを使用していない場合は「非表示」で問題ないかと思います。

Rows は、以下の 2 つです。ここでは、ジャーニー名やメール名ではなく、Send Weekday(曜日)というディメンションを用いています。

Values は、以下の 3 つです。このレポートを使って、開封されやすい曜日、クリックされやすい曜日を確認して、パフォーマンスを最大化していきましょう。


⑤ Email - Daily Send Summary

最後に、Email - Daily Send Summary です。

このレポートは「日別」での送信実績を表示するレポートになります。例えば「◯月◯日に合計でメールが◯通送信された」などが確認できます。

※上の図におけるメール名などは伏せさせてもらっています。

※ このレポートは比較的、レコード数が多くなりがちなレポートです。Intelligence Reports for Engagement の表示レコードの最大数は 8,000 レコードのため、レポートの表示が制限される可能性があります。設定済みの「期間」の大きさに注意して下さい。

Rows には、以下の 4 つが含まれます。

Rows に Email Job ID が含まれていますので、メールメッセージのパフォーマンス実績ではなく、送信単位(ジョブ単位)でのパフォーマンス実績が確認できます。

Values には、以下の 11 項目が含まれています。こちらの 11 項目は、エンゲージメントデータを収集する際の基本的な形になるかと思いますので、他のレポーティングを作成する際に参考にしてください。


以上となります。いかがでしたでしょうか?

これら 5 つのメールレポートを確認することで、Intelligence Reports for Engagement のピボットテーブルをどのように活用することができるかのイメージが湧いてきたかと思います。これらのレポートを参考にしながら、是非、皆さんのオリジナルのレポートを作成してみてください。

おまけで、私のオリジナルレポートとして「メールドメインごとのバウンス分析」の例を記載しておきます。

⑥ メールドメインごとのバウンス分析

以下の形でレポートを作成してみてください。レポートの対象期間や、フィルターで設定しているメール送信数(Email Sends)の下限数は自由に変更して下さい。私の例では、集計期間中に 1,000 通以上送信されているドメインのみを選択しています。

以下のようなレポートが作成できると思います。このレポートを使って、特定のドメインでバウンスが多くなるような異常が発生していないかを確認してみてください。


それでは、最後に一般的な Intelligence Reports for Engagement の注意事項をまとめておきます。

注意事項

  • 以下の 11 つのデータは正確性と完全性が保証されていません。参考レベルで使用してください。また、開封数とクリック数にのみ使用できます。

1. Email Browser Model
送信されたメールのブラウザーモデル(Firefox、Chrome など)

2. Email Browser Name
送信されたメールのブラウザー名(Chrome 96、Edge 96 など)

3. Email Device Model
送信されたメールのデバイスモデル

4. Email Device Name
送信されたメールのデバイス名

5. Email Client Model
送信されたメールのメールクライアントモデル(Outlook など)

6. Email Client Name
送信されたメールのメールクライアント名(Outlook 2013 など)

7. Email Device OS Model
送信されたメールに使用されたオペレーティングシステムモデル

8. Email Device OS Name
送信されたメールに使用されたオペレーティングシステムデバイス名

 9. Email Device Type
使用されたデバイスタイプ(モバイルまたはデスクトップ)

10. Email Feature Phone
メッセージがフィーチャーフォンで受信されたかどうかを示します。フィーチャーフォンは旧世代の携帯電話で、主に日本で使用されています。

11. Email Link Alias
メール内でクリックされた実際のリンク。リンクエイリアスが割り当てられているリンクでのみ機能します。

  • Email Click Event Lag Days の意味が分かりづらいですが、メジャメントの一種で「送信時点からクリックまでにかかった平均日数」のことです。

  • Complaints(苦情)のデータに関しては、大半のメールプロバイダーにはこのデータが無いので、この値はあまり参考にはなりません。

  • Email Studio における「プレビューとテスト」からのテスト送信を除外したい場合は、フィルターで Email Test Indicator を False で設定してください。つまり、Email Test Indicator が True のものが、テスト送信のフラグが付いた送信になります。

  • メール配信のレポートを作る時に設定すべきオススメのフィルターは以下の 2 つです。このフィルターを設定することで期間中に本番送信されたメールのみが対象になります。

① Email Sends >= 1
② Email Test Indicator = False

  • データビューなどは 過去 6 ヶ月分のデータが保持されますが、Intelligence Reports for Engagement では、最大 2 年間保持されます。

  • Intelligence Reports for Engagement のタイムゾーンは「親ビジネスユニットのタイムゾーン」が使用されます。

▼ インテリジェンスレポートのデータの概要

今回は以上です。


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