「勝手にスポーツ大臣」22 小林信也 中高部活のシーズン制を導入しよう
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中高生年代は複数のスポーツを楽しむ方がいい
アメリカでは「シーズンごとに複数のスポーツをする制度が以前から採用されている」という。
「日本でもシーズン制を採用したらいい」という提言は随分前からされているが、実現しない。
「勝手にスポーツ大臣」は、春夏秋冬、それぞれの季節で別のスポーツと音楽・芸術などを最低ひとつ選ぶよう推奨する。スポーツは最大3つ。つまり、年に最低三ヵ月はスポーツをしない期間も設ける。その時期に音楽や美術、演劇、動画製作に取り組むなど、スポーツ以外の分野に触れた方がいい。この方向性は、部活が地域移行しても継承する。
僕自身の経験からも複数スポーツ体験と異分野の経験を強く推奨する。大人になってから、本当は自分にどんな適性があったか、と考えた時、「映画監督などは案外合っていたかもしれない」と感じた。実際、イベントなどの総合プロデュースは経験がある。けれど、幼い頃から映画などの映像に触れる経験が皆無に近いため、映像への苦手意識が根強くある。少年時代から野球ばかりでなく、もっと映像や美術と日常的に親しんでおけばよかったと、それはいまも痛切に思う。
中学部活はまず週末に関して地域移行されるが、これも同様にシーズン制を採用する。
中学高校年代はひとつの種目に執着するより、複数の種目を経験した方が心身の発達には有効だし、将来専門種目を選んだ時にも伸び率がよいと、アメリカ育ちの選手から聞かされたことがある。
それ以前に、「勝手にスポーツ大臣」は、スポーツへの過度の入れ込み、現在のような勝負へのこだわりすぎこそ問題だと感じている。もっと楽しめばいい。
子どもたちの「将来の夢」をもっと豊かにしませんか
将来の夢を訊かれて、「プロ野球選手」と答える少年が大勢を占める時代があった。Jリーグの誕生でそれが「サッカー選手」に変わったとニュースになってもう久しい。いずれにせよ、ほぼ90パーセント以上がなれもしない夢に向かって時間と労力を注ぎ、十代のうちに挫折を経験させる不思議な夢物語の構図を、大人たちはなぜ微笑ましい出来事のように見ていられたのだろう。その無責任さ、平和ボケというのか、「子どもが何かに熱中し、妙な横道にそれなければいい」といった安易な安心論もあっただろう。だが、スポーツの弊害はそんなに甘くない。過剰な勝負への執着。間違った優劣意識。パワハラ、イジメの体験。支配的な環境に置かれたものは、後に自分が逆にパワハラやイジメをする傾向が強いという報告もいまはよく知られている。幼少時、そして十代での過度のスポーツへの傾倒は心身の成長に深刻な影響を与える。
世の中にどんな仕事があるのか、知る余裕もなかった
少年たちの夢といえば現在は「サッカー選手」ですらなく、「You Tuber 」「ゲームクリエイター」「アニメーター」「お笑い芸人」などに代わっているのかもしれない。
スポーツから離れて、さらに広い視野で見れば、子どもたちに社会の様々な機能を実感させる取り組みは重要だと思う。最近は中学生の職場体験の現場に出くわす機会もある。孫にせがまれ〈キッザニア〉にも行った。一時的な体験でその仕事の深いところまで理解できるとはもちろん言えないが、知らないよりはずっといい。
僕自身はどうだったかと言えば、「野球に没頭する」「やる以上はひとつの道を極める」という自己満足的な思いに支配され、野球以外に時間を使うことを自省していた。高校野球の練習を休んで家族と旅行に行くとか、「野球以外の分野もたまには見てきます」とか言ってコンサートに出かけるなんてことは一切出来なかった。もっと、いろんな世界を見ていればよかったとつくづく思う。
中学高校の部活は、やりすぎてはいけないのだ。
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