想像よ円周を超えろ

9月1日は『筆先のあなたへ』の本番だった。
稽古をしてもしても、出来ているのか不安ではあった8月。


慣れないダンスの練習をしても一向に上手になる気配がなかった。
それでも毎日目標や完成に向けて稽古する日々は怖くもあり楽しかった。

本番を終えても、反省やこうすべきだったかもとか、まだ至らないところを発見したりとかはある。
けど神奈川県立音楽堂という大きな会場で、多くのお客さんに見ていただけたことはとても嬉しい。
このような規模の会場での舞台に出演するのは初めてのことだったし、特別な経験をさせてもらえた。

観てくれているお客さんからエネルギーをもらえる。
演劇や表現についてもたくさん学ばせてもらった公演だった。


何より関東大震災という、まだ100年しか経っていない未曾有の災害について今まで以上に知ることができた。
というより関東大震災についてはほぼ何も知らないで生きてきていた。

東京生まれ東京育ちなのに。

火災によってほぼ焼け尽くされた東京市や横浜。
今自分の働いているバイト先の事務所が都心にあり、その付近は住民の尽力によって延焼を食い止めたらしい。

そしてそれは江戸時代まで遡り、安政の大地震の際にも住民によって迫り来る火の手を消火し続けてその地域を守り抜いたと。

それを知っていた住民はなんとしてでも、この誇りある土地を守らなくてはいけないという一心で関東大震災での大火災にも恐れずに消火活動を行っていた。

だいぶ省略しているけど、その話を知った上でバイト先の事務所付近を歩いている時にこれまでと違った見え方を感じた。
100年前、狂うように舞っていた火からみんなでここを守ったんだなぁと。
普段何気なく通っていたこの街には大きな功績のある街だったんだ。

焼けてしまった街も、守り抜いた街も、先人達のおかげで今現在がある。
途方もない先の見えなかったであろう、復興や生活の立て直し。
自分の想像の遥かに上をいっていた事が起こっていた9月1日。

その事実は本当に地獄のようで
「地獄」ってどこか浮世離れした言葉で、現代を生きる自分は軽々しく「地獄」という言葉を使っていた。

今これを書いている間にも戦争は行われ、紛争地では人が死に、凄惨な状況下で生きている人はたくさんいる。

地獄が日常になっているかもしれない。
非現実でもなく、お伽話でもなく、実際にある。


テレビやニュースでは毎日のように報道されている遠くの現実。
それでも半径3メートルくらいの世界しか見てこなかった自分に何ができて、何をしなければいけないのか。

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