かんがえるタネシリーズ5冊目、完成!|編集こぼれ話①
2024年9月、農文協から『牛乳から世界がかわる 酪農家になりたい君へ』(小林国之著)が発売されます。
この書籍に関わった編集チームによる「編集こぼれ話」や本書のイチオシなどを、全5回に分けてご紹介します。
『牛乳から世界がかわる』見本出来
9月の新刊『牛乳から世界がかわる——酪農家になりたい君へ』(小林国之著)の見本が本日、印刷所から届きました。見本の梱包を解く時は、編集者にとって完成したことへの安堵と、「もしや…」の不安が入り交じる瞬間かもしれません。
というのも「見本出来」とは、本が世に出る前にチェックができる最後のチャンス。完成までに何度も何度も、間違いがないように確認してきたはずなのに…たまに(ごく稀にです!と強調)あっ、と驚く誤植などがみつかる場合もあるのです。
ですが今回は無事、読者にお届けできそうでほっとしています。いよいよ、9月5日頃から書店などに本が並びます。
「かんがえるタネ」シリーズのこと
今回の本は「かんがえるタネ」シリーズの5冊目。これまでこのシリーズでは、以下を刊行してきました。
『食べるとはどういうことか——世界の見方が変わる三つの質問』(藤原辰史著)
『うおつか流食べつくす!——一生使える台所術』(魚柄仁之助著)
『食べものがたりのすすめ——「食」から広がるワークショップ入門』(湯澤規子著)
『半農半X的——これからの生き方キーワードAtoZ』(塩見直紀著)
「かんがえるタネ」シリーズとは、【食・農・暮らしの基本を、第一線の研究者・実践者と一緒に考え、これからを生きるヒントになることをコンセプトにしている】というと、難しく感じるかもしれませんが、著者自身が「なんでだろう?」「研究しがいあり!」「こうすると、もっと人生ワクワクできるかも?」と追究してきた生き方の「タネ」を紹介してもらい、読者と一緒にかんがえていく本になっています。
食と農の分野に限られてはいますが、著者自身が模索してきたテーマの解説書でもあり、どんな生き方をしてきたかの自伝的要素もあり…一冊で何度も“おいしい”本をめざしています。
ジャケ買いしたくなる本を!
シリーズの立ち上げから担当してくださっているデザイナー・しょうじまことさんから「(このシリーズは)ジャケ買いしたくなる本にしましょう!」と提案をいただき、この方でなければ、という作家たちに装画をお願いしてきました。
その面々とは、うるし漫画家・堀道広さん【https://michihiro.holy.jp】、『全集 伝え継ぐ日本の家庭料理』でおなじみ・武藤良子さん【@ochimusya_z】、繊細な画風のイラストレーター・カシワイさん【https://www.kashiwaikfkx.com】、物語性の高い版画が特長・花松あゆみさん【https://ayumihanamatsu.main.jp】。
今回は、現役で酪農業に従事しつつ『毎日、牛まみれ——牛が好きすぎて酪農してます!』の作品で知られる漫画家・牛川いぬおさん【@TDQFRYtruJY7ZxR】にカバーイラスト、酪農漫画、そして本文のイラストを描いていただいています。
「酪農漫画」「座学編」「実践編」の3部構成
前置きが長くなりましたが…『牛乳から世界がかわる』は、「酪農漫画」「座学編」「実践編」の3つでできています。酪農の現場で働くには「座学(知識)」と「実践(現場での研修)」が組み合わさって初めて、ほんとうの力がつくという著者の思いから、この構成になりました。
「座学編」:小林先生によるレクチャー。日本の酪農、飼料や肥料の自給と輸入、生乳の加工と流通、牛のゲップなどの環境問題、アニマルウェルフェア、リジェネラティブ農業のこと。
「実践編」:酪農家3軒、道内の農協1軒の取材インタビュー。
「酪農漫画」:「座学編」をもとに、主人公モー太郎が酪農とは?を解説する漫画。
それぞれのページはこんな感じ。
ですが。読みごたえがあるのは、本編だけではありません。「あとがき」には、著者が酪農の研究を通じて「わかることは、かわること」を体験し、その自分が「世界を変えていける」可能性についても、やさしい口調で語られています。どのページからも、著者の酪農への思い、あたたかなお人柄が伝わってきます。最後のページまで読む手が止まらない!一冊です。
シリーズ初の挑戦、「チーム小林」発足
これまでのシリーズ4冊は、農文協の編集担当者2名で、企画を出し合いながら進めてきました。ですが今回初めて、外部の編集者たちと一緒に本をつくる「編集制作チーム」方式を取り入れることにしました。
そのメンバーとは、著者の小林国之先生、フリーランス編集者の柿本礼子さん、北大大学院博士課程でライターの市村敏伸さん、デザイナーのしょうじまことさん、そして農文協の編集担当(のちに「チーム小林」と命名)。柿本さんから企画を提案いただいたのが始まりでしたが、「読者に一番近い存在が“複数”いる」このチーム制が素晴らしかった。
それぞれの知識、経験、感覚がまったく異なるだけに、「わからない」「面白い」ことのポイントが皆違う。つどつどZOOMで話し合いをしながら、イチから企画を練り上げてきました。
このあとの連載記事では、2年にわたるその制作過程を柿本礼子さんが、取材に明け暮れた「実践編」の制作過程を市村敏伸さんが、紹介してくれます。
編集制作の舞台裏、楽しくも(苦闘の)記録をお楽しみください!
(執筆:「かんがえるタネ」シリーズ編集担当・阿久津若菜)
次回は編集者の柿本礼子さんによる「『牛乳から世界がかわる 酪農家になりたい君へ』|編集こぼれ話②」をお届けします。