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第3話 人の欲と印象を支配せよ

9月29日 記録:太田牛一

 殿は申された。

 恒興、今日は木曽漆器祭、信州木曽開田高原そば祭りの日である。そなたは幼き信忠(当時は奇妙という幼名)を連れて木曽の両祭りに参加し、信忠を目一杯遊ばせ楽しませよ。そして楽しむ信忠の姿を写真に納め、ハッシュタグに「#木曽LOVE」「#信忠人生初蕎麦挑戦」と必ずつけて投稿し続けよ。記念撮影にも全て対応せよ・・・いや、むしろ時間が許す限り多くの者に撮影をこちらからお願いし続けよ。当地で残すその印象が必ず将来に生きる、そして何よりそこは武田のお膝元、武田軍は必ず慌てよう。今や天下に広まる儂の悪名によって織田を避ける者も少なくない。それゆえ織田の次世代は民に愛されるような存在であると知らしめる必要がある。今回は武田への備えであるが、今後は領地の全ての祭りに信忠を向かわせ、民の暮らしのそばで世の中を経験させ儂が天下を統一した後は信忠に次の時代を任せ、民と共に歩く平和の中の君主にさせたいと思っておる。

9月30日午前 記録:太田牛一

 殿は申された。

 よいか蘭丸、駿河に近い遠州相良に穴太衆を送り込め。相良には少量ながら太平洋側唯一の油田がある。油が出た旨を武田信玄殿に伝え、油を持てばOPECに加盟でき、OPEC加盟による莫大な利益についてサウジアラビアの王子の豪遊ぶりを含めてプレゼンせよ。信玄殿は将来を見通せる頭が切れる方ゆえ弱体化した幕府よりも油田防衛に重きを置くであろう。間違いなく徳川領へ攻め込むよりも徳川からの油田防衛が大事になる。場合によっては、そこで徳川から武田へ和睦申請である。そう簡単にいかぬのはわかっておるが、このような小さな種まきが将来に大きな樹となって我らを助けるであろう。

9月30日午後 記録:丹羽長秀

 殿は申された。

 秀吉、武田軍は長旅になっておる。おそらく美味い飯を長いこと食べてはおるまい。人の欲でも抑えられぬものの1つは「食欲」よ。そこでそなたは浜松の遠鉄タクシーを抑えた後は「東海道食べ歩き」という名のLINE@ アカウントを作成するのだ。そなたの直下におる蜂須賀衆を使って東海道の全ての名店でその店で1番のメニューを食べさせ、食べログとして写真付きのリッチ投稿をさせ武田側にもアカウント登録をさせよ。そして費用を全額負担するゆえLine Beaconを全店に設置させ、武田軍が店前を通過する度に1時間限定90%割引のプッシュ通知させ武田軍の気を散らし進軍を送らせよ。特に浜名湖のうなぎを扱う店には全額保証するゆえ「今だけ無料!」の旗を東海道に3000本掲げさせ、全ての店からうなぎを焼く匂いを街道に向けて放出させよ。これで武田の行軍は間違いなく鈍る。

10月1日午前 記録:竹中半兵衛

 殿は申された。

 半兵衛、中山道をはじめとした街道の要所にプロジェクションマッピングを配備せよ。徳川の防衛線が破られ三河を突破された際は儂が武田軍に対処せねばならぬ。しかし儂らも武田軍を正面に向かえながら背後の浅井・朝倉を同時に相手にするのは少し厳しい。それゆえ浅井・朝倉を牽制する動きが必要となる。あやつらは忍びを送っているであろう。それゆえ千の兵を率いて街道の要所でプロジェクションマッピングを使い、中山道にて織田が大軍で陣を敷いて浅井・朝倉に攻め込む準備をしているように見せよ。忍びは慌てて報告に戻る、そして浅井・朝倉は混乱するであろう。あやつらの状況判断力は武田に比べれば大したことはない。それで浅井・朝倉の侵入を遅らせることはできる。よりリアリティを出すために、同時に馬の鳴き声を常にスピーカーから流し続け、米を炊く煙を多くあげさせて攻める姿勢を見せ続けよ。

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