乳幼児親子が立ち寄ってほっとできる場所はどれだけあるんだろう
『社会で子どもを育てる』(平凡社新書 2002)で紹介したカナダのドロップインセンターのチルドレンズストアフロントのような子育て支援の場は、今、日本にどの位あるのだろうか。
2003年11月に熊本の八千代座でおこなわれたひろばの研修の基調講演でチルドレンズストアフロントを紹介したところ、同時に登壇なさった厚労省のYさんが、翌3月に「500カ所のひろばを作る」と尽力して下さった。そのときの最初のイメージはチルドレンズストアフロントだったはず。
その後、似て非なるカナダの子育て支援が日本に紹介され、日本人がどんどん視察に行って、それが真似されて日本の子育て支援のスタンダードになってしまった。安く運営出来て、マニュアル化されていて、きれいで導入しやすい方が、安易に受け入れられていった。
パソコンを置く場所よりも、みんなでおやつが食べられるテーブルを置くことを優先していたドロップインセンター創設者のリヴァさん。土間があって、ちょっとあがったところにあるキッチン脇から、土の裏庭に出て遊ぶことができた。リヴァさんの先生はネイティブの方。話をうかがいたくて2015年に探し出した時にはもう亡くなられていた。チルドレンズストアフロントも移転して、昔の面影はなかった。
チルドレンズストアフロントみたいにあたたかい実家のような親子の居場所が、子育て支援が始まった頃は目指されていたと思う。小出まみさんと一緒に活動していた札幌のむくどり公園の柴川明子さんのところや、柳川の森郁子さんのところや川上利香さんのところとか。世田谷の松田妙子さんのところとか岡さんちとか。白河の永野さんのたんぽぽとか。そういえば、0123吉祥寺も庭付き一軒家だったような。
けれど、あっという間に、保育所や児童館やコミュニティセンターが子育て支援の場として転用されて、そのときに、質より数になっていったのかもしれない。子育て支援が事業化され、資格化され、手作りでなくなっていくにつれて、見た目キレイ目なコンクリの箱の中に親子が閉じ込められるようになった。隣のおばさんはいなくなって、スタッフに変わった。
公園デビューもなくなって、保育園がどんどん増えて、子どもを預けて働くのがあたりまえになった。
今、孫の世話をするようになって、子育ての支援を受ける側になって、改めて思い出している。
大学の仕事の関係上、子育て支援から距離を置くと決めたのは、致し方なかったのだけれど。
みんなが忘れかけている温かい原点に帰りたい。
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