海外進学という選択は間違っていなかった 【週刊新陽 #165】
2023年3月に卒業し、米国にあるデニソン大学に進学した63期生の林あかりさん。大学生活1年目を終え、夏休みで帰国しているとのことで会いにきてくれました!
ただお喋りするつもりが、良い話が聞けたのでやっぱり記事にします(そうなる気はしてたのでカフェにパソコンを持って行ってました・笑)。
大学がたのしすぎる!
-- おかえりなさい!さっそくですが、大学どうですか?
授業がとにかく面白いです!入学して最初の秋学期はイントロ(導入)の授業が多かったのですが、春学期になって専門的な授業も始まり、ますます楽しくなってきました。
大好きな授業は「教育哲学(Philosophy of Education)」。
教育とはどうあるべきか?
教育は今どうなってる?それっていいの?
など、教授が投げかける問いに対して学生同士が話し合う授業です。
学生が8名程度しかいない少人数のクラスで、1年生から4年生まで年齢も人種やバックグラウンドも違うメンバーでのディスカッションは毎回白熱。
価値観が違うもの同士であることを前提に話すので異なる意見を聞きやすいし、一人ひとり向き合う時間が長いためお互いを知り、自分の視点も広がっていると感じます。
-- その授業はかなり深い話をすることになりそうですが、英語でのコミュニケーションは問題ないですか?
確かに深い話はするのですが、相手がどんな人か分かった上で話すので理解しやすいです。こういう信念を持ってこんな考えをしているのでは、と仮説を立てながら聞くイメージで、結果としてむしろリスニング力も伸びていると思います。
留学して、英語は、その人が何を言ったかよりも誰と話しているか(どういう人がその意見を言っているか)が大事だと分かりました。
LGBTQや人種、貧困についてオープンに話すカルチャーで育った人たちと、意見を交換する体験はすごく貴重。色々考えてディスカッションしたけど結局なんなの?とモヤモヤすることも多いのですが、これこそ留学の目的だったんです。
実はこの教育哲学のAndrew David Frankel先生が、デニソン大学に決めた理由の一つ。大学のWebサイトで先生を知って興味を持ち、zoomしてもらって、この方から学びたいと確信して入学を決めました。
Frankel先生は「みんなに何かできるようになってほしくて授業をしてるのではない。寝る前に、学校であった"あれ"ってなんだったんだ?とふと考えるような、思考のクセを作ってほしくて授業を作ってるよ。」と仰って、まさに考える力が付く授業だと思います。
夏休みの過ごし方
-- 長い夏休みを利用して帰国しているとのことですが、この間の過ごし方は?
夏休みが4ヶ月あるので、日本に帰って色々なことに取り組んでいます。高校生向けのキャリア支援プロジェクトでのインターンや、留学フェローシップのサマーキャンプスタッフなどです。
この進路を選んで卒業した当時から、理論と実践を行ったり来たりしたいと考えていました。
夏休みの活動は「実践」として現場に出るためのもの。大学の学びは楽しいし深いけれど、一方でそれは狭い世界であると同時に現場と遠い場所で学んでいるようにも感じていて。
そんな中で、特にサマーキャンプは運営のスタッフとしてだけでなく企画から関わらせてもらって、「教育哲学」の授業で学んだ理論を実践で試している感覚があります。
-- 現場に身を置いて、どんなことを感じますか?
インターンもキャンプも、子どもと直接関われるのでやりがいがあるし、やっぱりこのスタイルが自分に合っている気がします。社会を変える方法はアドボカシー(政策提言や発信等)などいろいろあるけど、自分はきっとそれじゃないんだろうな、と。
大学にいると、マクロ視点で見ることで絶望することがあります。大学で学べば学ぶほど、今の社会の無慈悲さというか、変えたくても簡単には変えられない現実があることを知ります。
そんな現実に直面して課題を感じ、社会を変えようとすればするほど、変わらないことを思い知って諦めてしまう人は少なくありません。でも社会が思うように変わらなくても、一人でも諦めない大人がいるよと伝えたいし、子どもたちがそう思ってくれるような社会になったら良いなと思います。
教育の沼にハマってます
-- 留学前にあかりさんが「こうしたい」と言っていたことを着実に実行しているように見えます。目的を果たしている実感はありますか?
あらためて、学ぶ場所としてアメリカが最適だと思っています。私は、海外で生活することよりも海外で学ぶことに興味があって留学という進路を選びました。
渡航前から思っていたことですが行って確信に変わったのは、海外で学んでいる人たちと観点やアプローチが似ているということ。波長が合うので居心地がいいんです。
言いたいことが言える、異なる意見を受け止める、あるいは受け流さずにその人の視点で考える、そういう「意見に対して反応がある環境」が、自分が学ぶのにとても適していると感じます。
と同時に、そう思えば思うほど、働くのは日本がいい。一度は日本の学校で働きたいと考えています。
-- 日本で、そして、学校で働きたい、と思うのはなぜですか?
日本における「こうあるべき」という考え方の強さや、子どもに対する固定的な捉え方などに疑問を感じ続けています。日本の学校はもっと世界とつながったらいいと思うし、子どもを「一人の人間」として尊重して関わる大人がいることが大事だと思います。
関係を構築するとき、私は短期的であるより長期的に関わっていくのが好きで、その方が自分の力がより発揮できると自覚しています。だから教育コンサルタントやコーディネーターのようにスポットで関わるのではなく、やはり教員として一度は現場に身を置きたいと思うんです。
教育に関心を持って大学に進んだものの、いつ違和感が出るかな、しんどいと感じることがあるんじゃないかな、と思っていたのですが、今のところまだ「やめたい」と思うことはありません。むしろ「やっぱりやりたい!」と思うことの方が強くて、沼にハマってます(笑)。
-- 夏休みが終わった後の予定は?
来学期に始まる授業にも楽しみなものがあるので、それを頑張りたいです。大好きな教育哲学の授業は、聴講生の立場にはなってしまうけど、もう一度受けたいと思っています。
それから、日本語の授業の先生に誘っていただき、来学期からTA(Teaching Assistant)をやらせてもらう予定です。
周りには様々な地域からの留学生もいて、国の情勢や家庭の事情など自分は恵まれてるなと思うことがあります。特権的だと思うことも。そういう感覚を知れたのも海外に出たからです。
実は、新陽のクラスメイトにも日本の大学に進んでから短期で留学している子たちがいます。みんな海外に飛び出したことで世界が広がり、次の挑戦を考えて、私に相談したり報告をくれたりするんです。
ちなみに海外にいるとレアキャラ感があるみたいで(笑)、「あかりが帰国したから」と集まるきっかけになっているらしいのも、実は嬉しいです。
(あかりさんの卒業時インタビューはこちら↓)