「当たり前」を疑ってみる〜小論文講座とアンラーン 【週刊新陽 #85】
冬が近づいて、全国の受験生、特に推薦入試や総合型入試での進学を目指している高校生は今が正念場。
新陽高校もこの時期、受験前の最後の追い込みで相談や質問をしに来る生徒や合否報告に来る生徒で休み時間や放課後は職員室前が混み合い、先生たちもなんだかソワソワ落ち着かない様子です。
入試対策講座スペシャル開催
新陽の生徒の多くが受験する推薦・総合型入試で多いのが、小論文と面接による選考。
3年生になってすぐの時期に受験に向けた小論文講座があったり、何度となく先生と面接練習したりしますが、そもそも正解がないので、どれだけ準備をしても不安なのが小論文と面接です。そこで先週、受験直前のスペシャル企画として小論文対策講座が開催されました。
講師を務めてくださったのは、京都芸術大学副学長の本間正人先生。これまでも生徒向けのオリエンテーションや教員研修などで新陽に協力いただいていて、私もいろいろお世話になっている方です。
先日、「推薦・総合型選抜を控えた生徒が多くて今ピークなんです・・」とお話したところ、「オンラインで直前対策講座やりましょうか?」と言ってくださり急遽開催が決定しました!(こういうイベントが急に決まって開催できるのも新陽の特色かもしれません。今回もすぐ動いてくれた進路部の先生たちに感謝です。)
木曜日の放課後、視聴覚室に集まったのは29名の生徒たち。本間先生とzoomで繋いだ画面をスクリーンに映し、さっそく講座が始まりました。
本間先生からの自己紹介が終わると、
・今からできること
・小論文の書き方ポイント
・面接の傾向と対策
とレクチャーが進みました。
みんなメモを取ったり、隣の友達と確認や相談をし合ったり、真剣に聴いていた姿が印象的でした。
本間先生のお話の中で、私自身が特にうなずいてしまったのがこちらの話。
なぜこの話に共感したかというと、生徒たちは自分が頑張ってきたことや他では体験できないことをしたという自覚があまりないのではないか、と思うことがあるからです。
『人物多様性』や『出会いと原体験』という言葉の通り、新陽には様々な人との出会いや面白い体験をする機会があるので、そこから得たものや成長したこともたくさんあるはず。自分の「当たり前」が実はそうではないことに気づき、生徒たちが自信を持ってほしいな、と思います。
本間先生、貴重なアドバイス、そして生徒たちの背中を押してくださってありがとうございました!
『最新学習歴』を更新し続けよ
本間先生は、『最新学習歴』という考え方を提唱していらっしゃいます。『最終学歴』は時々聞かれたり書かされたりしますが、『最新学習歴』とは?
私自身、社会人になってからの方が学びに真剣に、貪欲になっている気がします。転職や起業、キャリアの越境を繰り返しながら、ずっと学び続けている感覚ですし、校長になってからは生徒と一緒に学ばせてもらっています。
まして人生100年と言われる時代に、小・中・高・大学と学んで終わりなわけがない。本間先生もおっしゃっている通り、新しい環境や価値観に対応しながら自分自身をアップデートしていくことが必要です。
そのためには、自分の持っている知識や経験、あるいは社会にある前例や慣習を手放す(アンラーンする)ことも大切、と多くの方が言っています。
アンラーン(またはアンラーニング:学習棄却)とは、自分が学んできたことを否定するのではなく、学びを振り返って再構成するようなイメージです。「思考の癖を捨てること」とか「過去のものを忘れて新しい環境や条件の中で思考や行動を試してみること」などとも言われます。
アンラーンは自分がどんな考え方や価値観持っているかを知ることから始まるので、実は推薦・総合型入試での志望動機や自己PRの作成のプロセスは絶好のリフレクションのチャンス。今は、受験を目の前にした生徒たちは進学や合格のための学習になっているかもしれませんが、実はこのプロセス自体が彼らにとって貴重な学びと成長の機会だと感じます。
『未成功』のススメ
もう一つ、本間先生の提唱している言葉で私が大好きなのが『未成功』。失敗ではなく未成功、という考え方です。
「失敗を恐れず」や「失敗を次に活かす」と言われても、やっぱり失敗という言葉にはなんとなくネガティブなニュアンスがある気がします。だから、「失敗したらどうしよう」「失敗したくない」と思ってしまう。
今回の小論文講座でも、本間先生は「とにかく書いてみる。そしてフィードバックをもらって書き直す。挑戦し続ける限り失敗ではない、それは未成功と呼ぼう!」と生徒たちの不安を吹き飛ばしてくれました。
発明王のトーマス・エジソンの有名な言葉にも
「失敗ではない。うまくいかない1万通りの方法を発見したのだ」
とあります。そして、
「私たちの最大の弱点は諦めることにある。成功するのに最も確実な方法は、つねにもう一回だけ試してみることだ」
とも。
とは言え、諦めずに挑戦し続けることやもう一回試すには勇気が必要。一人ではなかなか出せない勇気も、後押ししてくれる人がいれば一歩踏み出せることもある。そんな想いで、新陽の先生たちはいつも生徒を応援したり激励したりしています。