「本気で挑戦する人の母校」の卒業生、まだまだ挑戦します! 【週刊新陽 #24】
先日、新陽高校のオンライン同窓会に参加しました。
さすが64年の歴史がある学校は卒業生もバラエティに富んでいて、「女子校時代は卒業式が3月3日で壇上に雛飾りがあった」とか、「学校祭ではファッションショーが盛り上がった」などなど、各世代の話題で盛り上がっていました。
さて、『週刊新陽』で人気企画となりつつある(?)卒業生インタビュー。
今回は、今年3月に卒業した探究コース1期生の軍司かりんさんにお話を伺いました。
学校にずっといたいから「夏休みなんていらない」
- あらためて振り返って高校生活はどうでしたか?
3年間新陽を満喫して、新陽をやり切った自信があります(笑)。
中学までは学校に行きたくなかった自分が、新陽で変わりました。
新陽もどんどん変わってくのを見て、いいなぁと思っています。その卒業生であることがうれしくて、新陽を知らない人に「こんな学びをしてきました」と話すのが好きなんです。
- 最初から新陽は楽しかったですか?
それが実は一度「やめたい」と思ったことがあるんです。入学して2日目、初めてクラスで教室の使い方について話し合いをしました。
コートをどこに置くかというテーマで数名の意見がぶつかって、ずっとその人たちだけで話しているのを、私は端のほうで聞いていました。
春なのになぜコート掛けの話を延々しているのか・・・その時間がとても嫌で、やっぱり高校なんて来なければよかった、と思いました。
- 最初から期待通りだったわけではないのですね。それが変わったのはどうして?
担任の幸村信先生が声をかけてきてくれて、じっくり話を聞いてくれたんです。自分のちょっとした変化に気付いてくれたことがすごく嬉しかった。
他の先生たちも、何時間も話を聞いてくれたり、自分が知らなかった世界を教えてくれたりしました。新陽の先生たちは、生徒を子ども扱いしないで真剣に向き合ってくれたんです。この人たちから学びたい、と思いました。
そこから、自分でも動いてみようとボランティアに参加するようになり、どんどん楽しくなっていって、自分がリーダーになる機会も増えました。
気付いたら休日の予定もボランティアで埋まるほどに。夏休み前には「色々活動したいからずっと学校にいたい。夏休みなんていらない!」と思うようになっていました(笑)。
変わりたいという欲求は強かったと思います。だけど、それを受け止めてくれる大人がいなかったら行動できていたかどうか分からないですね。
- かりんさんを変えたのは、前校長の荒井優さんとの出会いなんですよね?
はい。中学3年生の時に行った私学展(北海道私立学校展)で、優さんに出会ったことで世界が一転しました。
「教育」について熱く語る校長がいることを知って、この学校なら自分が変われると思ったんです。
(写真は私学展で優さんの話を聞くかりんさん。偶然、別の先生のFacebookでこの写真を見つけたそうです。)
- かりんさんにとって、学校とはなんですか?
家とは違う『第二の居心地の良い場所』かな。
家は家族がいて安心できる場所。でも、外にそういう場所ってなかなか無いですよね。
1日の半分を過ごす学校には、安心して居られるといいと思います。「あなたはそこに居て良いんだよ」という空気感や、自分自身を認めてくれる場であってほしい。私にとって新陽はそういう場所でした。
特に先生たちがいる安心感は大きかった。何かあったら支えてくれる先生たちがいると思えたので、いろいろ挑戦できた気がします。
最大の挑戦〜中村哲さん写真展
- 特に印象に残っている挑戦は?
3年の夏(2020年8月)に企画した中村哲先生の写真展です。(中村哲さんは福岡県生まれの医師。パキスタン・アフガニスタンで30年以上医療活動や灌漑事業を進めましたが、2019年12月に銃撃され亡くなられました。)
イベントをゼロから企画するという初めての経験でした。
きっかけは、髙橋励起先生と高石大道先生からの「中村哲さんの写真展やります。仲間募集!」という案内。たぶん高校生活最後のイベントになるだろうと思い、申し込みました。
集まったのは私を含めて3名。その時点で決まっていたのは
・写真展をやること
・写真は国際平和ミュージアムから借りられること
・企画運営は、立命館慶祥高校と合同で行うこと
だけでした。
そこから色々調べて、PMS・ペシャワール会と直接コンタクトを取ろうということになりメールと電話をしました。大人の方へ正式なメールをするのも初めてで、失礼の無いように、先生たちに相談しながら全部自分たちでやりました。
- クラウドファンディングも成功しましたね。
クラファンをやったことがなかったので最初は不安で不安で。どう伝えたら想いが届くんだろうとか、返礼品は何がいいのかなとか。他のクラファンも結構調べましたが、結局「自分たちの想いをそのまま伝えたいね!」という意見でまとまりました。
写真展開催に向けたクラウドファンディングは、目標30万円のところ47万円が集まりました。応援してくださった方は70名!かりんさんたちの想いが届きました。
初めての協創。高校最後の原体験。
- 他校と合同でのプロジェクトはどうでした?
他校との共同、これが何より難しかったです。
新陽のメンバーはボランティアなど外での活動経験があったのに対して、立命館は初めての人たちも多かったようです。コロナ禍でオンラインでのコミュニケーションということもあり、情報が伝わる速度や温度感にどうしても差ができてしまいました。
どうにか差を埋めようと、立命館のリーダー2名と会うことにしました。そこで色々話をすることができて、徐々にコミュニケーションが改善されていった気がします。
ようやく全員で集まれたのは写真展当日。その瞬間、すべての温度差がなくなった感覚がありました。
学校同士のつながりは生徒同士でもできる。学校が違っても共同できる。
すごく悩んだし大変だったけど、一緒にやってよかった、協働するってすてきだな、と素直にそう思います。
このイベント中に忘れられない体験がもう一つあるんです。
チカホ(札幌駅前通地下広場)での写真展初日に、急に声をかけられました。その方は「なんのためにこの写真展をやっているんだ。哲さんのためになると思っているのか。」と強い口調で仰って、私は「どうしよう…」と焦りました。
でも、周りに先生も仲間もいなかったので自分が対応するしかないと思い、「私たちはこういう想いで写真展をやっています」と説明したのですが、「そうじゃないだろう」などと言われてしまいました。
直接クレームを受けるような経験は初めてで、驚いたと同時に怖かったのですが、どうやったらわかってもらえるんだろう、とか、自分たちは何か充分に考えられていなかったのかな、と不安になりながら、とにかく必死でお話しました。
その方は写真を見ずに、そのまま帰られてしまいました。
そして2日目、その方がもう一度いらっしゃったんです。前日のことがあるので恐る恐る見守っていたら、今度はじっくり写真を見てくださっていて、もう本当にうれしかった!!
分かっていただけたのかな、伝わったのかな、って。写真展をやって良かった、と思いました。
もっともっと学びたい!
- これから挑戦したいことは?
今は無性に勉強したい!と思ってます。それが大学なのかは分からないし、日本なのか海外なのかもはっきりしないけど、数日前に「学びたい欲」が急に湧いてきてしまって(笑)。
英語や中国語など、語学を勉強したいという気持ちもあります。高1の終わりに留学したフィジーにも戻りたい。
フィジーはみんなあたたかくて、いつも笑顔。助け合って生きている幸せな国です。ホストファミリーも大好きで、今でも連絡を取り合っています。
それから、語学に限らずコミュニケーション力をもっと高めたいです。
探究コースでは、グループワークなど人と関わる機会が多くて、自分の考えをまとめたり他の人の考えを聞いたりする経験をたくさんしました。おかげで誰とでも話せるようになったし、聴くこともできるようになった気がします。
これからは、コミュニケーションの質を高めて「一緒の時間を過ごして良かった」と思われるような人になりたいです。
そして、今、将来に不安を抱えている中高生も増えていると思うけど、明るい未来が待ってるよ、と伝えたいと思っています。
【編集後記】
「探究コース1期生として卒業できたことを誇りに思う」と語ってくれたかりんさんは、現在ギャップイヤー中。インターンやアルバイトをしながら、次のステップを模索しています。
いろいろな仕事をしながら、新陽で学んだことが活きていると感じるそうです。資料をつくる時、分からないことについて調べる時、探究コースでもやったなぁと思い出すとのこと。
「『本気で挑戦する人の母校』の卒業生、まだまだ挑戦します!」と宣言してくれた笑顔が素敵でした!