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Lesson about Donation〜新陽「寄付の教室」2023〜 【週刊新陽 #140】

12月は寄付月間。NPO・大学・企業・自治体などが協働して毎年12月に実施しているキャンペーンで、1年の終わりのこの時期、寄付を啓発するための様々な情報発信やイベントが行われています。

新陽高校も寄付月間の賛同パートナーとしてプログラムを実施しています。

先日は、新渡戸文化学園の理事長であり放課後NPOアフタースクールの代表理事でもある平岩国泰さんと、コモンズ投信のソーシャル・エンゲージメント・リーダー 馬越裕子さんにご協力いただき、オンライントークイベントを開催しました。(アーカイブ動画はこちら


寄付ってなんだろう

3年前から寄付月間キャンペーンに参加している新陽で毎年行っているのが校長 presents『寄付の教室』。日本ファンドレイジング協会の『寄付の教室』を参考に、新陽の生徒向けにアレンジして作った授業です。

授業は、まず初めに寄付月間について紹介。

欲しい未来へ、寄付を贈ろう。
一年の終わりに、考えたいのは未来のこと。
もっと楽しい未来。もっと優しい未来。もっと平和な未来。
もっと多様性が認められる未来。
そんな未来を手にするために、あなたの気持ちを寄付にしよう。
寄付は意思、寄付は投資、寄付は応援、寄付は願い。
寄付で未来は変えられるのです。
だから、「Giving December」。
一年の終わりに、未来を考え寄付をする。
そんな習慣を、はじめたいと思います。
欲しい未来を叶えてくれるさまざまな取り組みに、
あなたの想いを託しましょう。
さあ、年の終わりに、新しい「寄付」がはじまります。

出典)寄付月間(https://giving12.jp/)

そのあと、寄付とはなにか、そもそもお金の使い方にはどんなものがあるか、寄付した経験、などについて生徒に考えてもらいながら説明。これだけでも生徒たちはいつもの授業と少し違うと感じ、社会の見方が変わる子が出てきます。

以下、生徒の感想の一部を紹介します。

・お金の使い方は、買う、貯めるだけではなく投資や支援もあると知った。
・Donationと聞いてヘアドネーションしか思い浮かばなかった。NPO団体に寄付することでなにか返ってくるわけではないけど、寄付することによって笑顔になってくれる人がいるのなら良いなと思った。
・改めて寄付の大切さを知った。自分一人のたった少額の寄付でもその支援した団体には凄く大きなものであったり、何人もの命を救える可能性だってあるんだということを学べた。

寄付先を本気で選ぶ

そして、そこからいよいよ本題。「1000円あったらどの団体を応援したい?」というグループワークです。

授業を実施したのは2年次の英語・クエスト2クラスで、この日出席していた生徒は40名。私が実際に寄付する先をみんなから推薦してもらい決めるというのがプログラムの趣旨です。

今年は、以下の3団体を候補先として生徒に示しました。この3つを選んだのには私なりの理由があるのですがそこはあまり伝えずに、生徒自身が公開されている情報を調べて団体の活動や社会課題を知ること、そして3〜4人のグループで考えた意見をまとめて寄付先を1つに絞ることがポイントとなっています。

KIDSDOOR(キッズドア):学習支援・日本の子供の貧困や格差を無くす
more trees(モア・トゥリーズ):森を保全し森林破壊と地球温暖化を止める
Terra Renaissance(テラ・ルネッサンス):世界平和=すべての生命が安心して生活できる社会の実現

全11グループが寄付先に選んだ先は3つに割れましたが、数としてはKIDSDOORを推薦したグループが多い結果となりました。

KIDSDOORの推薦理由
寄付したお金がどう使われるか分かりやすい。描いている将来が素敵で、「すべての⼦どもが夢や希望を持てる社会」になれば他の課題(環境問題や世界平和)も解決できるかもしれないと思った。
・自分自身が無料で学べる放課後サービスにお世話になった経験があり、活動に共感した。
・現在の社会課題として物価上昇など実感があり、低所得の家庭の困り感が分かる。また、第二の居場所というのも良いと思った。
・オフィスツアーなどキャリアにつながる活動や食事の支援など、勉強するだけの普通の塾と違う無料学習会の意義があると思った。また、他の2団体はスケールが大きすぎるのに対して、一番効果が見えやすい活動だった。
・高校生としての自分だけではなく、自分が大人になり子どもができたときのことを想像して、このような活動があると安心だと思った。また、近年、寄付の着服や使途不明などのニュースがある中で、寄付金の使い道が明確に公表されているのが信用できると思った。
・他の2団体は世界が対象だけどキッズドアは日本国内に向いていて、自分たちからは身近な課題に感じるし、届いていることが目に見えると思った。また、子どもの可能性を広げる活動は「私と私の子どもの未来のために」必要。
・前の授業で平和についてポスターを作ったとき「子どもたちの笑顔あふれる世界」というテーマにした。自分たち高校生でも母子家庭や色々と困っている子はいて、みんなが幸せになれたら良いと思うし、子どもが笑っていたら大人も笑顔になってやがて世界平和につながると思う。

more treesの推薦理由
・ハワイの森林災害など自然災害が最近も多くて、森の問題は動物や人間にも関わること。森林は、自分たち人間がアクションを起こさないと問題を止められないし、長い目で取り組んでいかないといけないから、支援すべきだと思った。また、ホームページがきれいで見やすく、関連サイトなどmore treesの先が具体的に見えるのも良い。

Terra Renaissanceの推薦理由
・人の命を救う活動なので、それは今後助かる命が増えるということ。今、支援する効果がその先にも影響するからこの団体が良いと思った。
・世界規模だから。自分の代わりに活動してくれていると考えたら、規模が大きい課題や活動が良いと思った。また、セミナーの開催など勉強もできることや、純粋に「世界が平和になれば良い」と願っているから。世界が平和になれば、他の子どもの貧困や森林破壊も解決されやすくなるのではないか。
・一人ひとりに「未来をつくる力」がある、という理念に共感した。理念と活動が結びついていて、支援する価値が一番あると思った。

「寄付の教室」で学ぶこと

全グループに推薦理由をプレゼンしてもらい、最終的に、今回はKIDSDOORさんに寄付させていただくことにしました。推薦したグループの数(多数決)で決めるわけでは無いというのは生徒たちに事前に伝えていて、数は直接の要因ではありません。

どの団体を推す意見も尤もで、そもそもどこも私自身が応援したい先なので1つに絞るのは毎回本当に悩みます。ただ今回は、キッズドアを推薦する理由に、高校生ならではの視点や新陽の生徒だから感じることなどが特に多かったのが決め手となりました。

実感や実体験など自分ごととして考えた意見が多かったこと、今だけではなく自分の子どもの未来にまで考えを巡らせていた生徒たちがいたこと、そして、子どもの問題が解決することが他の課題を解決したり世界の平和につながるという意見など、私一人では考えなかったことが出てくるのも、このプログラムの魅力です。

授業終了後のリフレクションを読ませてもらうと、「様々なNPO法人や活動をしている団体があると初めて知った」「他の人や他のグループの意見を聞いて、自分と違う考えがあって、それもいいなと思った」「すべての問題はどこかでつながりがあるんだなと感じた」など、寄付を通して社会課題への見方が一歩進んだかな、と思います。

なお「ちゃんと考えるには時間が足りなすぎた」と書いてくれた生徒もいて、申し訳ない気持ちと同時に、それぐらい真剣に取り組んでくれたことへの喜びと感謝も感じました。

【編集後記】
この授業は昨年今年と、英語科の小熊先生がリクエストしてくれて実現しました。授業後、小熊先生と、生徒たちのグループディスカッション中の様子やプレゼンで出た意見から、これまでの授業や直前の修学旅行などいろいろな学びが生徒一人ひとりの中で繋がっているのが分かりますね、という話をしました。
実は昨年もmore treesは候補に入っていて、生徒の推薦団体はmore treesが多かったので、前後の学びや社会の話題、あるいは参加する生徒自身の経験などによって結果が変わるのもこのプログラムの興味深いところだと思います。

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