見出し画像

「本当のこと」を伝えるポスター〜多様性対談特別企画 【週刊新陽 #170】

7月24日(水)に行った夏休み前の全校集会。

『多様性対談』の特別企画として、学校ポスター制作プロジェクトの報告会を兼ねたトークセッションを実施しました。

5月に完成し既に市内の中学校に配布している今年のポスターについて、あらためて在校生に紹介するための企画です。

松浦弥太郎さん小熊千佳子さんも札幌へお越しくださり、プロジェクト(PJ)に関わった生徒(3年生の福塚さんと山下さん)や先生にも一緒に登壇してもらって、ポスター制作の裏側やポスターに込めた想いを聞きました。

今週は、このトークセッションのレポートです!

▼プロジェクトの記録はこちらのnoteもご覧ください。


ポスタープロジェクトのきっかけ

まずお二人のご紹介とポスター制作について説明した後、このプロジェクトが生まれた背景を髙橋励起先生に話してもらうところからスタートしました。

(励起先生)イエローハウス長の髙橋です。新陽高校に勤めて15年になりますが、ずっと新陽が大好きです。何が好きかというと君たち生徒のまっすぐさ。新陽の生徒となら何か新しいことができるんじゃないかといつも思っています。

今回のポスター制作は、2018年に前校長の荒井ゆたかさんが弥太郎さんを新陽にお招きしたのがきっかけです。当時、学校広報を担当していたのが僕で、作ったポスターやパンフレットを弥太郎さんに見ていただいたんです。それなりにいいものを作っている自負があったけど、弥太郎さんから出たのは「うちの社員だったらクビですね」という言葉でした(笑)。

以来、ぜひ弥太郎さんとご一緒してみたいという思いが芽生え、生徒と弥太郎さんで学校のパンフレットを作るプロジェクトを立ち上げました。2019年にそのパンフレットが完成した後も、弥太郎さんとまた何か一緒にやれたらという話はあったのですが、コロナ禍もあり、ようやく実現したのがこのプロジェクトです。

(松浦さん)生徒さんたちがゼロから最後までものを作るという経験はとても大事で、とは言え、なかなかそういう機会はないと思います。だから少しでもそのお役に立てたらいいな、と思いました。

皆さんは、ものづくりとかデザインとかクリエイティブって、どういうことだと思いますか?

特別な人がやっている難しいものと思うかもしれない。でも、クリエイティブとは「本当のことを伝える」、実はこれだけです

伝える、と言うからにはその先には誰かがいるんです。今回のポスターでは、中学生に新陽高校とはどういう学校かという「本当のこと」を伝えた。10人のPJメンバー生徒はきっとそれを感じてくれていると思います。

そして、その「本当のこと」とは、まだ世の中の誰も気が付いていない「素敵なこと」を見つける、ということ。

今回10人のメンバーとポスターを作るプロセスの中で「"新陽高校さん"という人がいるとしたら、どんな人?」というお題を出しました。すると、PJメンバーの生徒たちは友達や学校で会う生徒を思い浮かべながら、色々な表現をしてくれた。だから実は、ここにいる生徒さん全員が参加したポスターです。

ものづくりというのは、さっき言った「本当のこと」を目に見えるようにすることなのですが、その結果目に見えない本質が現れたポスターになったと思います。

(小熊さん)私は普段、グラフィックデザイナーとしてポスターやパッケージなど色々なお仕事をしています。今回、松浦弥太郎さんから声をかけていただいて、みんなが伝えたい「本当のこと」をカタチにする立場として関わらせていただきました。

"新陽高校さん"はどんな人か、生徒の皆さんからいろいろな意見が出てくるなかで、それを伝える手法やアイデアは様々あるのですが、こういう見せ方があるよ、とか、こうすると伝わりやすいよといったことを示しました。そして皆が選んだデザインをさらにブラッシュアップしたものが、完成したポスターです。

一番重要なのは、一つ一つの鉱石に付いている顔はメンバーの生徒たちが手描きしたものであるということ。みんなが実際に参加した証です。顔のイラスト部分や文字がデコボコしていたり、キラッキラの文字がシルバーで本当にキラキラ光っていたり、印刷にも工夫があるので、そのあたりもじっくり見てもらえたら嬉しいです。

「今」の新陽生をポスターにしたら

このプロジェクトでは全部で4回のセッションを行い、ゼロからポスターをつくっていきました。

第1回(23年8月):ポスターづくりの極意
第2回(23年10月):「新陽高校さん」ってどんな人?
第3回(23年12月):「宝石発掘」をポスターにしたら
第4回(24年3月):ポスター完成間近、ゼロイチをつくるということ

第2回のセッションでは、「新陽高校さん」ってどんな人?という弥太郎さんからのお題に対して、プロジェクトメンバーがそれぞれ学校や生徒をイメージしてアイデアを持ち寄りました。

その中で、今回のポスターのテーマ「宝石」の元となるアイデアについて紹介してもらいました。なお当日は本人がお休みだったので、話してくれたのは3年生の福塚さんです。

(福塚さん)Rinさんのメモを代読します。

新陽には、これから自分の才能に気付く生徒がたくさんいて、その人たちを「石」と例えました。宝石は、石を割ってみないと見えないし宝石にはならない。だから今は普通に見えたり平凡に感じたりする人も、誰かが必ずその人の中身は宝石のように輝いて綺麗なはずです。それを一番に気付いて発掘し磨いてくれるのが、新陽高校や新陽の先生だと思うので、「宝石の発掘場」と表現しました。

(赤司)ちなみに福塚さん自身はどんな「新陽高校さん」をイメージしましたか?山下さんもどんなことを考えたか教えてください。

(福塚さん)あんまり覚えていないんですけど、確か、テンションが高かったり活発な人もいれば、静かな人もいて、波があるようなことを挙げたと思います。

(山下さん)暇つぶしの神」と言ったのが僕です。自分は空いた時間に何をしようか考えてしまうのですが、新陽生はみんな友達と話したりゲームしたり、課外活動だったり、時間を使うのが上手いなと思っているんです。

(励起先生)2018年にパンフレットを作った時、「新陽高校ってどんな学校?」と聞くと生徒から出てきたのは「HOME(家)」でした。今回、僕自身はそこからアップデートされていなかったことに気付かされたんです。生徒たちはあの頃とは違う感覚で新陽高校と向き合ってくれているんだなと感じました。

一番印象的だったのは「情緒不安定」。僕はこの言葉をなんとなくネガティブなものとして捉えていたのですが、弥太郎さんはそうではなくて「高校生が情緒不安定なのって当たり前」と仰ったんです。本当にそうだなって。

(赤司)そうでしたね。私も「情緒不安定」ってあまり良くないことという固定概念に囚われていたな、と気付かされました。

この後、第3回のセッションでは、弥太郎さんがコピーを小熊さんがグラフィックを作ってくださったポスター案が複数ある中から生徒が「中学生に伝わりそう」というデザインを生徒が選びました。さらに、鉱石に重なる顔のイラストを生徒たちが描いたのですが、どうしてこうなったのでしょうか?

(小熊さん)これは松浦さんのアイデアなんです。生徒さんたちが、自分がそこにいるというポスターにしたかったんです。アイデアだけではなくて実際にポスターに自分を残して欲しかった。

紙と鉛筆を渡すとみんな夢中になって顔を描いてくれて・・・一人20個くらいは描いたんじゃないかな。よくこれだけ色々な表情が描けるな〜って感心しました。

(赤司)そして完成したポスター。実物を見た時の感想を聞かせてください。

(山下さん)今までのポスターのイメージがあったので、生徒の写真があって文字が入って、という感じになるんだろうなって想像していたのですが、全然違ってました。でも、だからこそ今の新陽を表していると感じました。今年、全員が単位制になったじゃないですか。それを表現しているポスターだと思います。

(福塚さん)他の高校のポスターと並んでいるのを見たんですけど、新陽のはバーン!って個性が強かったです。そこに自分が関わっているという愛着もあって誇らしい気持ちになったので、この体験はすごく貴重だな、これからに繋がるといいなって思ってます。

本当のクリエイティブを体験する

(小熊さん)新陽高校に伺うのは今日が5回目なのですが、こんなに多くの生徒さんがいらっしゃったんだな、とドキドキしながらも、これが新陽高校なんだなとあらためて感じられて、とても嬉しい気持ちです。

新陽高校のポスターに関われたのは自分にとってすごく良かったと思っています。大人が仕事として作ったら、このポスターは絶対に生まれないと思うからです。そういうプロジェクトを皆さんと一緒にできたこと、本当に嬉しく思っています。ありがとうございました。

(松浦さん)さっき話したとおり、クリエイティブというのは「本当のこと」を伝えるのに尽きます。そのために大事なことは2つ。

1つは、照れないこと。もう1つは、嘘をつかないこと。

僕が常々大事にしている「ルール」のようなものがあります。それは、できるだけ真面目にならないこと。周りの目を気にしたり、社会の中で気を遣おうとしないこと。

僕の尊敬している人から貰って大切にしている言葉、それは・・・

「バカなことをしないと、バカになる。」

面白く楽しく物事と向き合うのが大事。みんなでもっとバカになりましょう(笑)。

新陽には「本気で挑戦する人の母校」というスローガンがありますが、まさに、「本気になる」ことこそ「バカになる」ということです!

最後に、弥太郎さんと小熊さんと
プロジェクトメンバー生徒全員で
ポスターに寄せ書きをしました。
プロジェクトに関わった励起先生、志賀先生と
弥太郎さん、小熊さん、そして校長の私です。

【編集後記】
トークセッションの中で、励起先生が「生徒の皆さん、3年間という短い学校生活の中で『出会いと原体験』のチャンスを活かしてチャレンジしてほしいと思います。」と言ってくれました。弥太郎さんや小熊さんと出会い一緒にゼロから何かを生み出す経験なんて、そうそうあるものではありません。でもそういう貴重な機会が新陽にはたくさんあります。その価値に今は気付かなくてもいい。新陽では珍しくない”多様で本物”の人との出会いから、生徒が刺激や勇気をもらって一歩踏み出してくれたら、と思っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?