RAM RIDER デビュー20周年記念ライブ「REPLAY THE MAGIC」に行ってきた超長い感想~そして私の20年と、結局デートにサイゼリヤはアリなのかナシなのかについての私見~
『PORTABLE DISCO』による深夜オフィス宇宙化事件(私にとってのラムライダー)
11月9日、渋谷WOMBで開催された、RAM RIDERさんのデビュー20周年(!)を記念したライブ「REPLAY THE MAGIC」に参戦してきた。なんと12年ぶりとなる同名アルバムも発表されたばかりのタイミング。ジングル等でTBSラジオではおなじみ、DJにプロデュースワークと大活躍中のラムライダーさん。
私がRAM RIDERを知ったきっかけは、たぶん今はなき「ミュージックマシーン」(もう知らない人のほうがきっと多い。ナタリー創業者が運営していた音楽ニューステキストサイト)。なんとなく気になってアルバム『PORTABLE DISCO』を聴いた。当時、私は四谷にあった小さな広告会社で働いていたのだけど、聴いた瞬間に、一人残業中のオフィスが一瞬でパチンと宇宙空間に変貌するようなすさまじい体験をした。
当時は本人のビジュアルを公開していなかったラムさんを初めて目撃したのは2005/2006のカウントダウンジャパン。ラムライダーとはどんな人物なのだろうかとドキドキしながらDJブースへ。黄色いTシャツに身を包んだ長身眼鏡姿のラム氏。仲間と楽しそうにプレイする同氏を初めて見た感想は「クソほどモテてそう。女の子食い散らかしてそう…」だった(今思えば本当にすみません)。
その後はリリースを定期的にチェックする存在だったものの、2000年代後半はリリースがなくなり、動向もつかみづらくなっていたRAMRIDER。2010年に突如インターネットラジオ「AUDIO GALAXY」をスタートさせて、盟友マツモト氏との掛け合いの中で日々の動きを知ることができるように。その後は自身の楽曲だけでなく、プロデュース曲や文章の発表(←ラムさんの文章本当によいですよね)など、活躍を立体的に追うことができるようになった。熱心に足を運ぶタイプのリスナーではないけれど、節目節目は目撃しておきたい。私にとってはそんな存在のアーティストなんだと思う。
推しの佇まいがかっこいいのって本当にいいよね
会場のWOMBはギッチギチの満員。オーディエンスは老若男女さまざまで、この20年でさまざまな人のハートをそれぞれつかんできたんだな、と改めて感じた。明らかに男性のほうが多かったのが結構意外。同性ファンが多いアーティストに外れナシ、だと個人的には強く思う。
月並みな言い方だが、まずステージに立ったときのたたずまいが格好いいと感じた。ラム氏は自分と同世代なので所謂アラフィフ(なはず)。しかし「イケオジ」というのとも違うし、若さを強調しているわけでもない。ただ常に人前に出続けてきた人ゆえの整いがあるよなー、としみじみ観ていた。ラム氏の歌声は、いわゆる歌手のそれではないが、めちゃめちゃ一定の女性の心をぶっさしてくる系のやつだと思います。ずるい系。
曲もスタイルも構成も、緩急シームレスで最高
序盤は新作『REPLAY THE MAGIC』の収録曲を中心に。音響とレーザーがビッキビキでしょっぱなから上がるしキマる。MCはあえてリラックスした感じもあり、しかも最初の時点で当日の構成(最新作から徐々に過去作の演奏へと移っていくこと、アンコールはあるけど早く出てきたいのでちゃんとコールしてね的な話まで!)までつまびらかにする斬新スタイル。あとなんかラジオやポッドキャストの経験ゆえか話術すご!腕ある…!とあらためて実感。
最近、日々の生活の中でちょっと心がチクチクとささくれ立つような出来事があったのだけど、そんな気持ちに、新作の中の一曲「あふれる -Overflow-」がめちゃめちゃぶっ刺さってしまっている。映像作家・服部グラフィクスさんと再びタッグを組んだMVと合わせてこの日披露されたが、映像と音楽ととが心の深層までたどり着いてしまい涙が止まらなくなる。いい。とにかくいい。
VJを観て改めて気づいたことがあったのが「東京論」。東京の街中のビルや標識が伸び縮みする愉快なMVで公開当時から好きだけど、国立競技場もちゃんと映っているんだよなー。これってもしかして匂わせか??などと思ったりした。偶然かな(RAM RIDERはパラリンピック閉会式の音楽を担当。国立競技場に「東京論」が鳴り響くのをテレビでみたときはまじでひっくり返った)。
転換時の映像(グッズ紹介プレゼン、中学時代の卒業文集紹介)は面白!なのに、本編のカッコよさ楽しさとシームレスにつながっているのも不思議な感覚。『AUDIO GALAXY』時代の作品ゾーンもしみじみよくて、当時のトレードマークだった、あの光る衣装を久々に見られたのもうれしかった。
「きみがすき」が私の過去を救ってくれた話~サイゼリヤでデートはありかなしか~
終盤近く、「流れとは違うけど好きな曲だから」というような一言とともに披露されたのが「きみがすき」。この曲を過去ライブで聴いたことがあったかは思い出せない。ただこの曲、なんとも言えず甘くて私も好きで、うれしく私も聴いていたらーーーー私の記憶は大昔の都内サイゼリヤ某店に突然ぶっ飛んでいた。
~ここからはRAMRIDERさんとは全く関係ない個人的な話がはじまります~
2007年2月のこと。予定もなく恋人の家でだらっだらと過ごす日曜日。彼が「なんか、サイゼリ…ア?ってファミレス、ワインが1杯100円とからしいよ?」と言い出し、えっなにそれ面白い行ってみようと、彼の家から歩いて15分くらいの場所にあるサイゼリヤへと出かけることになった。当時は今ほどサイゼリヤは人口に膾炙していなかった記憶があり、私もその10年くらい前に一度行ったことがあったくらいだった。ランチタイムも終わった午後2時ごろに着くと、その日は東京マラソンが行われており、交通規制の影響もあって、そのサイゼリヤにはほとんど人がいなかった。
ガラガラの店内で、デキャンタの赤ワインをガブガブ飲みながら、私たちはそれぞれ読みかけの本を取り出し読みふけって過ごした。えっ小エビのカクテルサラダおいしい、生ハム食べよう!、この間違い探し難しすぎるね…!とか言いながら過ごしたその日は、何気ないけどとても満ち足りていた。
その彼には1年後、なんとも理不尽な理由で突然別れを切り出され、その理由がしばらく全く飲み込めずに苦しんだ。その後は今の夫と出会って結婚、子供にも恵まれて幸せな日々を送っている。彼への未練というものはまるっきり一切ないのだが、時折別れの理不尽さが小骨のようにひっかかり、「あの恋愛は一体なんだったんだ…」と傷口をえぐるように反芻して苦い気持ちになることがあった。割と最近でも。
「きみがすき」をライブで聴いたとき、あの昼下がりのサイゼリヤがなぜか蘇り、そのときに浮かんだのは、元恋人への「感謝」だった。銀座の寿司でも高級ホテルでも、温泉旅行でも海外でもない。彼と過ごした時間で一番幸せだったのは、あのサイゼリヤで一緒に本を読んでいた時間だった。あのとき確かに二人は好き同士で多幸感に包まれていた。好きな人と食べるサイゼリヤは最高だ。最後は袂を分かっても、あの最高の記憶をもたらしてくれたことに、ただただ感謝の気持ちが沸き上がってきた。
同時に、自分が囚われていた、割り切れていなかった悩みもすっかりと消えていることに気づいた。ポロポロ泣きながら見上げるステージのラムさんはやっぱり格好いいわ。ただ、ラムさんに今パートナーがいるとしても、さすがにもう歌詞のように「ショーウィンドウのミュールに夢中」ではないだろうな、などとは思ったりした。
そしてサイゼリヤでのデートは大アリだ。好きな人と行くサイゼリヤのワクワクよ。ただ、デートにもいろいろあって、「これから好きになるかもしれない人」とのデートだったら、別のお店のほうが選択肢としてはベターなんだろうな、きっと。
黄色いTシャツの20年前から今まで、ずっとつながっているし、最高を更新し続けているよね。
閑話休題。
終盤の個人的ハイライトは、シンガー・Marnieさんの登場!歌声だけを聴いていたところだと、カラコロとした儚いガラスのような印象を持っていたが、登場したMarnieさんはダイヤモンドのような硬質な輝きを放っていた。格好良い。
そして予定通りすぐ出てきてくれたアンコール。デビュー曲である「MUSIC」を披露するラムさん。私が初めて観たときに着ていた黄色いTシャツの復刻版をまとって歌うラムさんに、昔からつながって今があるのがしっかりと見えた。RAM RIDERの音楽には、聴き手一人ひとりの「個」と音楽家の「個」とを共鳴させるような力があると感じる。
なんかライブの感想というより自分語りになってしまったけど、でも、RAM RIDERのライブには、とくにこの日のライブには、個人的な何かを引っ張り上げて昇華させてくれるような最高のパワーがあったようにも感じる。
当日は「終演後、RAM RIDER本人による会場お見送り」があるゴールドチケットを購入して臨んだのだけど、まさか握手会的な感じと思わず心臓がバクバクした。推しを直視できない…推しの目に自分を映したくないという複雑な気持ちを抱えつつ、あーこういうとき一体何を伝えたらいいのか…無理…無理…無理!となりながらご本人にご挨拶。「感動して泣きました」とお伝えしたところ「泣くとこあった?」と優しくとぼけたご回答。救われた…!
この日のライブを受けて、もはや自分自身の人生のひとつというか、価値観の一部分みたいなところにRAM RIDERがいることを実感してしまった。続けるしやめるつもりない、ってキッパリ言ってくれたラムさんをこれからも追いかけ続けるぞ…!