起業と言葉 vol.006 Tinder(旧Match Box)
こんにちは。元電通のコピーライターで、現在は独立起業し、クリエーティブディレクター/起業家をしておりますのぶです。最近noteを書き続けていたら、noteでのいいね数が250回を超えたそうです。たくさんいいね、ありがとうございます!嬉しいです!「起業と言葉」については、読んでくれている人は一定数いるようなので、引き続き執筆していきます。第6回目の本日は、みんな大好き(?)Tinder(旧Match Box)のピッチデッキの分析です。
Tinderのピッチデッキ
今や世界最大のマッチングアプリとなったTinderですが、実は前身は「Match Box(マッチボックス)」という名前でした。そのピッチ資料は実にユニークです。マッチボックスは知らないけど、Tinderは知ってる!使っているというあなたは、要チェックや!!
いかに相手に想像させられるか
Tinderのピッチ資料では、冒頭の4ページが、映像として相手の頭に残るショートムービーのような構成になっています。
まずはタイトルのスライド。 the flirting game(イチャイチャするゲーム)という、興味ひくタグラインで、事業内容への期待を高めます。
突然マットの物語がはじまる
表紙の次のページから、いきなりなんの話?となりますが、マットの出会いについての物語が始まります。このカウンターパンチのような驚きは、他の起業家と違うかもしれないという期待感も生み出しますね。
そしてマットの物語は続きます。
「マットはパーティーで好みの女の子を見つけます・・・」
「しかし、多くの人がそうであるように、彼は挨拶に行こうとしません。」この2行の文字だけで見ている人は、「なぜだろう?」「続きが気になる」という状態になっていると思います。
ストーリーによって、課題への共感度が増幅される
そして、多くの人がそうであるように、マットが好みの女の子に挨拶できないその理由(=課題)が明らかになります。
最も強調したい部分=FEAR OF REJECTION(拒絶されることへの恐怖)が、わかりやすく大きく目立つ赤字で表示されていることで、ここが課題であると一目ですぐにわかります。課題が複雑ではないため、ストーリー仕立てにすることでより共感を生み出すことができる。男性目線なので、女性投資家には響かないと思われるかもしれませんが、声をかけて断られることに対する恐怖は、男女共通のはず。「あるある!」「わかる!」と行ったこの物語手法は、わかりやすく課題の納得感を高めます。
物語で惹きつけ、数字で回収する
Facebook(現在Meta)のピッチ資料の解説でもお伝えしたように、Tinderもまた、右脳と左脳のバランスを意識したピッチ資料になっています。(とはいえTinderの方がイメージが強く、数字は簡易的です)まず物語の後に、画面をイメージさせるスライドが数枚入ります。この時から、「Like」ボタンと、「Not」ボタンという現在のTinderの原型はできていることはわかります。左右へのスワイプではなく、最初はボタンだったようですね。
ラスト2枚で仕組みを紹介
Tinderのスライドでは、ラスト2枚で仕組みの紹介をしています。マッチのためのシグナルとしては、場所、相互のLike、共通の興味関心ごと、共通の友達が挙げられています。
そしてラストのページで収益機会について述べており、ここが確かに稼げそう!と思わせるロジックになっています。
・2マッチは無料、その後は新しいマッチごとに1ドル必要
・お金払ってバーチャルギフト送れる
・お金払ってリストの上位に表示させることができる
無料で開始させて、少しハマってから有料課金させるモデルは、多くのスタートアップで活用されていますが、Tinderも出会いたい男女に対して、このモデルを使っているようですね。toCビジネスはユーザーから課金するモデルが良いと言われますが、お手本のようなビジネスモデルになっています。
あれ?ここで終わり?と思う方も多いと思いますが、Tinderのピッチ資料はこの10枚で終了します。ドラマのような前半、画面をイメージさせる中盤、ビジネスの広がりを見せる後半という大きく分けると3部構成になっています。粒度は荒いようにも見えますが、課題、ソリューション、ビジネスモデル、という1番重要な3点に絞っているという点で、本当にミニマムの資料はこれで良いということがわかる10枚になっています。
言葉の手法=映像をイメージさせる
さて、Tinderのピッチ資料はいかがでしたでしょうか?今回は、このピッチ資料の前半部分で活用されていた、映像をイメージさせるような言葉の力を活かした広告について解説していきます。
映像をイメージさせた広告コピー①明治チョコレート
明治チョコレートの下記の広告は情景が映像のように浮かんでくる、名作コピーです。
ボディコピーを読み進めるとわかりますが、これは娘と父親のコピーになっています。結婚式当日の情景など、体験していなくても情景が浮かぶ、名コピーです。娘と父親の結婚式ものは、広告の鉄板ではなりますが、何度見てもグッとくるものが多いですね。
映像をイメージさせた広告コピー②積水ハウス
積水ハウスの新聞広告もまた、情景が映像のように浮かんでくる、名作コピーのオンパレードになっています。今回はその中のひとつを紹介します!
家に帰れば、積水ハウス。というキャッチコピーは何年も使い続けているので、みなさんご存知かもしれませんが、一つ一つの広告のボディーコピーもまた素晴らしくクオリティが高いです。実家に住んでいた時の様子は、みんなバラバラなはずなのに、映像として頭にそれぞれの実家の様子が浮かんできていると思います。食卓の様子や、おひさまの匂いも、蘇ってくる、そんな五感レベルで共感を生む広告コピーです。
今回は、コピーライターの視点で、スタートアップ起業家や、新規事業担当者向けに言葉のチカラについてまとめてみました。起業をしていなくても、すべての会社の広告やマーケティング活動、企業の広報やPR活動において、これからの時代に言葉のチカラは必須だと思います。
ビジョンライティングやブランドを規定する言葉、心にのこるTVCMを作りたい方は、ぜひお気軽にご連絡ください!
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鈴木宣彦
nobu@nobuplanning.com
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