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陶芸家 梅本尋司さんを訪ねて
こんにちは、のぶちかです。
さて久し振りのnoteは名古屋の陶芸家、梅本尋司さん。
Instagram上にふと現れた器。
そこに描かれた文様と、器面のカセた質感と色調が目に留まり、それから数日間梅本さんのInstagramを拝見している内にじわじわと惹かれていっている気持ちに気付き、5月にはもう妻のこーすけと二人、名古屋へ赴いておりました。
一見、その作品からは不思議な世界を感じますが、お話を伺っていると妙に引き込まれていく感覚が楽しく、皆様にもぜひ共感して頂きたく思い記事にしました。
ちなみに作品は既にJIBITA店舗にて御覧頂けるので、その点も楽しみに御一読頂けると嬉しいです。
それでは早速、参りましょう。
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これまで
1981年生まれ。
大阪芸術大学にて陶芸コースを専攻。
その頃はオブジェをメインに制作されている先生方が多く影響を受けたが、器作りにも興味がわいてきた事をきっかけに卒業後は多治見市陶磁器意匠研究所(イショケン)にて器作りに励む。
イショケン卒所後は、陶器関係の商社に入社。
販売店が希望する器をデザインし、製陶メーカーに商品化してもらう陶磁器デザイナーとして働く。
陶芸自体は就職後もやめずに続け、独自に釉薬研究にも注力。
その後、たまたま民俗学の本と出会った事をきっかけに民俗学にはまり、独学を開始。
現在、陶芸と民俗学を組み合わせた作品制作をメインに活動。
インタビューダイジェスト
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工房にて
民俗学との事
のぶちか
「民俗学に御興味があるのですか?」
梅本さん
「民俗学の本をたまたま読んだらはまっちゃって笑。
でも独学なんですけどね。で、そこから得た知識を陶芸と組み合わせて制作しています。」
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工房にて
のぶちか
「一番惹かれてる民俗や国はありますか?」
梅本さん
「基本的にどこもやっぱり面白いなって思いますね。土地土地で全然違うんですよね。ただ全てを掘り下げるのは難しいので今は一応、日本に絞っています。」
のぶちか
「作品にアイヌの紋様が多く見受けられますが、これはアイヌの民俗性に惹かれてですか?それとも紋様自体に惹かれてですか?」
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工房にて
梅本さん
「最初は文様自体に惹かれたと思いますが、例えば生活から成り立つ習俗とかお祭りとかそういった事にも興味が移っていきました。陶芸とは関係ないですけど、掘り下げていきたいなって。人間の文化って面白いなっていうのがあって、それを勉強してる感じですね。」
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のぶちか
「今はこういう縄文的な作品作りが?」
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工房にて
梅本さん
「そうですね。今はそういう縄文と弥生の融合を。時代の境目ってはっきり分かれてないと思うんです。グラデーションで徐々に分かれていってると思うんですけど。そういった感じの事がひとつの作品としてできればなって。
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アイヌも色んな歴史があって、アイヌの人達と日本というか本島の人達との関係性とか、樺太や北方のアイヌや他の民族が住んでいた所を『国』みたいな感じでパキっと分けちゃってるけど(そんな事はなくて)。そういった事を知る事が個人的に面白くて、そんな事を含めながら表現したいなって。」
民俗学×陶芸
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工房にて
のぶちか
「この形のイメージは何ですか?」
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工房にて
梅本さん
「これは『うつろ舟』と言うんですけど、江戸時代にそういう形の船みたいな宇宙船みたいなのが海にどんぶらこじゃないですけど、辿り着いたんですよ、日本の各地に笑。っていう文献が残っているんですよ。で、絵も残っているんですよ。その絵が結構面白くて、それをモチーフにちょっとアレンジしてそんな形にしてるんです笑。」
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工房にて
のぶちか
「うつろ…舟?どこで作られたとかは分かってないんですか?」
梅本さん
「いや、まったく分かってないというか、嘘かもしれません笑。でも嘘にしては結構具体的な面白い形をしてまして笑。だからUFOもちょっと思い浮かべながら。」
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のぶちか
「これはなんですか?」
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梅本さん
「これは『八咫烏(やたがらす)』ですね。分かりやすい例で言うとサッカーの日本代表の(エンブレム)。で、マニアックな話になっちゃいますけど、神武天皇が熊野に来た時に道案内をしたっていう話が神話の中に残ってて、それが『八咫烏』だったそうです。(八咫烏は)熊野大社の護符には『八咫烏』が描かれています。」
のぶちか
「このあたりはエジプトとかですか?」
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工房にて
梅本さん
「いえ、日本ですよ。これ、狼です。埼玉とかその近郊の地域の神様でありお犬様、ニホンオオカミです。」
のぶちか
「これはなんですか?」
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工房にて
梅本さん
「これは蛇なんです。『ミシャグジ』様と言って、諏訪の土着の神様です。それを鈴にしてるだけなんですけど笑。とても古い神様です。
…なんかもうかなりマニアックですよね笑」
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のぶちか
「いやぁ、振り切ってらっしゃってて嬉しいです笑。」
梅本さん
「ハハハハ笑!
いやでもまだまだです。まだもっと深いので、知らない事が多過ぎます。」
のぶちか
「でもなんか(民俗学が)お好きなんだなぁというのがものすごく伝わってきて…」
こーすけ
「(私達が)知らなさ過ぎて。でも話をお聞きしたらそういう見方になってきちゃいました笑。
この蛇にはどういう意味があるんですか?」
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工房にて
梅本さん
「これは一応、縄文土器の特徴のひとつで、蛇ってよく出て来るんですよね。紋様っぽくなっていたりだとか、顔とか結構いろんなところに蛇が出て来るんですよ。生命の循環だとか、生命力や再生だとか。例えば蛇の交尾は激しく巻きついて行われる様で、それを縄文人が見て生命の力強さを感じて表したんじゃないかって言われてたりもします。」
こーすけ
「この眼みたいな巻いてあるみたいなのは意味があるんですか?」
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梅本さん
「こっちは『安曇族(あずみぞく)』っていう古代の集団が北九州にいて、『海民』と言って海を渡り歩く人達だったんですけど、その安曇族が目の周りに入れ墨をしてたんですよ。それを『安曇目』と言うんですけど、それをモチーフに目の周りに入れ墨みたいな感じで…。」
こーすけ
「なんか初めて聞く事ばっかり笑!」
のぶちか
「でも世界観がしっかりあって凄い楽しいですね!」
こーすけ
「これはなんの顔ですか」
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工房にて
梅本さん
「これは『一本だたら』っていう妖怪ですね。
鉄を作ってた人達をそういう風に呼んでたみたいで。」
こーすけ
「妖怪じゃなくて人をですか?」
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梅本さん
「鉄を作ってると割りと片目が潰れてしまうそうで、火を見るので。足もフイゴで火を起こすので、酷使し過ぎて徐々に足が萎えていってしまうみたいな。で、そういう話が象徴的に抜き出されてそういう妖怪として残ってる、みたいな話です。これは水木しげるの話にも出て来る妖怪です。」
のぶちか
「これは水木しげるの妖怪を写したんですか?」
梅本さん
「いえこれは全然。水木さんのはもっと毛むくじゃらで。」
・・・・・・・・・・
という、興味津々となってしまったのぶちか&こーすけの質問攻めが延々と続き
・・・・・・・・
梅本さん
「元々は絵を描くのが好きだったんですけど、でも絵の方は全部(受験に)落ちちゃって。で、たまたま受かったのが陶芸コースだったんです。陶芸の事、全く知らないままそこに入って。途中から段々面白くなってはきたんですけど、最初はもうすぐやめて絵の方へ転向しようと思ってました笑。
出発点がそういう感じだから、民俗学とかそういうのを入れ込みたくなるのかなぁって、最近自分で思ってるんですけど笑。」
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釉薬の事
のぶちか
「釉薬が多彩ですが研究されてきたんですか?」
梅本さん
「民俗学に入る前から釉薬研究はずっとやってて。ずっとやってきたからそれを活かしたくて。しかも僕の場合、電気窯が還元焼成をかけられる窯なんですけど、環境的にガスボンベを注入できないんです笑。なので僕ができるのは酸化焼成だけなんです。
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ただ、陶芸やってる者として酸化(焼成)だけというのは、かなり制限されてるというか。やっぱり普通の酸化焼成は(還元と比べると)表現の幅が狭くなるので、その制限がある中でどう表現力を増やしていくか、というのもありながら。なので昔は還元がかけられない事を釉薬でどれだけカバーできるかを考えてやっていました。」
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展望
梅本さん
「まだまだ色々と表面的なので、より深く掘り下げて具象化できれば。
あとは現地に行ってみたいですね。民俗学者さんがやってるフィールドワーク。現地の空気を吸って、それを作品に落とし込めたらと思ってます。」
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工房にて
所感
梅本さんが民俗学のお話をされている時のやや照れ臭そうに、しかしどこか楽しそうな表情がとても印象的でした。
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私達もそんな梅本さんを拝見していると、アイヌの文様がオファーのきっかけとなったにも関わらず、むしろ後半は縄文や妖怪などのオブジェの方が気になる始末で、梅本さんの世界に引き込まれてしまっている事自体を楽しんでおりました。
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ちなみに民俗学と陶芸のコラボ、JIBITAでは初となるジャンルですが、のぶちか的には本来、器だけでなく立体造形も好きなジャンルのひとつなので、これから少しでも多くの方と共有できれば嬉しく思います。
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ちなみに早速、2023年3月にJIBITA初個展を予定しておりますので、民俗学や不思議な立体造形好きの方はどうぞお楽しみに。
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6月26日21時 Start
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