ゲーマーの総合力が試されるーー『JUDGE EYES:死神の遺言』で行われるゲーマーの終活
全世界のゲーマーよ。自分の「ゲーマー力」を見せつけろ。そして、絶望すると良い。ゲーマーとしての力のなさを知り、終活を始めることになるだろう。
正義という名の凶器
📃|『JUDGE EYES:死神の遺言』で遺す言葉
『JUDGE EYES:死神の遺言』は2018年12月13日にPlayStation4向けに発売されたリーガルサスペンスアクションゲーム。本作は裏社会を描いた『龍が如く』シリーズの名越稔洋が原案・監督として参加し、同シリーズの技術をふんだんに利用している。また、大きな特徴としては主人公としてキムタクこと木村拓哉が起用されていること。このことから「キムタクが如く」という名前で呼ばれることも少なくはない。発売直後に「フル課金キムタク」としてバズった動画を目にした人も多いのではないだろうか。
木村拓哉以外にも中尾彬や谷原章介、滝藤賢一といった俳優陣が参加しており、それぞれ似合ったキャラクターで良い仕事をしてくれる。え、ピエール? なんですか。スライムナイト? まぁ、いいか。
💬|普通にプレイすると、クリア時間は20時間〜30時間くらい?
1周目のクリア時間は73時間ほどでしたが、これはかなり寄り道していた結果なので参考にならないかも。ちょっと寄り道しつつ、メインストーリーを優先して進めれば20時間〜30時間程度でクリアできるのかなと思う。たぶん。まぁ、あくまで参考までに。
⭕|まるでテレビドラマのような、作り込まれたメインストーリー
あまりドラマを見ることはないのですが、普通に
テレビで放送していそうなレベルのストーリー。各チャプターの終わり際には見どころがあり、思わず画面の前で「えぇ……」と声が出てしまうような展開は目を見張るものがある。『龍が如く』のシリーズが人気である理由がよくわかった。
主人公の八神隆之は元弁護士の探偵。弁護士時代に無罪を勝ち取ったが、その後弁護した容疑者が殺人の容疑で捕まってしまう。それから3年後、神室町でヤクザを対象とした連続殺人事件が発生。八神は再び真実と向き合うことになる。
ストーリーに出てくる警察や検事とのやりとりのリアリティ具合はわからないが、少なくとも雰囲気は伝わった。そこまで難しい用語も出ず、噛み砕いて話が進むため、内容で迷子になることがないのが助かる。アホなので。
⭕|長年かけて磨き上げられた「神室町」という存在
「神室町」は東京の新宿にある歌舞伎町をモデルに作られた架空の街だ。約17年前に発売されたPS2の『龍が如く』から歴史を重ね、現実と共に進化し続けてきた町並みは、本当に存在しているかのようなリアルさを持っている。
見逃してしまうような看板や路地裏、非常階段など、通常にプレイしていて通らない場所もしっかりと作られていて感動する。唯一悔やまれるのは入れる建物が限られていること。もっと未来の「神室町」に期待。
⭕|人を選ぶかもしれないが、ユーモラスなサイドケース
メインストーリーを進めると、ストーリーを進めるのには必須ではない「サイドケース」というサブストーリーが発生する。これはメインと比べるとギャグ要素が多く、メインの緊迫したストーリーの合間の一服の清涼剤として活躍してくれる。
キムタクの顔で間の抜けたやりとりをするギャップが非常に面白く、キムタクという存在を大きく活かした要素だと思う。「変態三銃士」はバカげていて面白いので、ぜひとも見てもらいたいサイドケースの1つだ。あと、月乃ちゃんがかわいい。
❌|リアルすぎるが故に発生する違和感
ちょっと見ただけでわかる通り、リアルな町並みとリアルなキャラクターが特徴となっているが、そのせいもあってちょっとした動きや表現に違和感を覚えてしまう。「現実」と比べると髪の毛の表現や挙動についてはまだ追いついていない部分が見えてきてしまい、リアルさの中にあるちょっとした違和感が浮き彫りになってしまうのは不幸なように感じた。
⭕|手軽にカッコいい戦闘アクションができる魅力
難易度によると思うが、攻撃ボタンを連打しているだけでキムタクがカッコよく敵を倒してくれる。ボス戦はそう簡単にはいかないけども……。必殺技にあたる「EXアクション」はド派手な演出が入って、めちゃくちゃ痛そうな攻撃をしてくれる。後半になると見飽きて、「はよ演出終わらんかな……」となるのが玉に瑕。演出カットさせてくれ。
❌|昔から変わらない、ザコ敵のウザさ
初代『龍が如く』の印象としては、やたらとエンカウントするザコ敵がウザいことだったのですが、本作でも変わらずエンカウント率が非常に高い。今作ではしばらくするとボス敵がマップ上に現れ、無視をするとNPCから「なんで助けてくれないんですか」という文句を言われてしまう始末。倒したところで旨味もそんなに感じることができず、半端に強いしただただウザいだけ。戦闘を回避するためのアイテムはあるが、手間がかかる上に最大で10個までしか持てないのが辛い。
❌|致命的に面白くない「尾行」や「ピッキング」などの要素
個人的な好みだとは思うが、「探偵」という設定を活かしたと思われる「尾行ミッション」や浮気現場や決定的瞬間を撮る「スクープミッション」、犯人を追いかける「チェイス」など、細かい遊び要素が散りばめられているが、やたらと時間がかかる上に正直言って面白くない。
他にも鍵を開けるための「ピッキング」や特定の鍵を選んで扉を開けるようなミニゲームに満たない遊び要素があるが、ただただ面倒臭い。1回や2回くらいならまだしも、ストーリーを攻略する上で何度も強制的にやらされると辟易とする。探偵としての仕事や能力の見せ方としては良いが、ゲームとしてはやる気を削ぐ要素に感じた。
💬|あのSEGAのアーケードゲームまでプレイ可能となる、豊富なミニゲームたち
『龍が如く』シリーズといえばミニゲームの豊富さが特徴。本作ではポーカーや花札、将棋、麻雀、ダーツなどに加え、ドローンを使ったレースゲームがある。更には『ぷよぷよ』や『バーチャファイター』などのSEGAのアーケードゲームを楽しむことができる。
普通にクリアする上ではプレイする必要は皆無ではあるのだが、フラッと立ち寄って息抜きに遊ぶのにはちょうどいい。ただし、『ファイティングバイパーズ』てめぇだけは許さない。1章で8000円使ってクリアできなかったぞ。声を荒げてしまうレベルのゲームだった。
❌|メインと比べるとわかる、ミニゲームの粗悪さ
数々のミニゲームがある代わりに、1つ1つのクオリティはそこまで高くない。言い方が悪いかもしれないが、どれも単純に遊ぶだけであれば十分ではある。しかし、繰り返し遊ぶことによって粗さに気付いてしまう。
どのゲームも簡単なルール説明はあるが、多くの場合はプレイヤー自身の知識や経験がモノを言う。麻雀はアシストが無く、リーチができる状態でも教えてくれたりはしない。そのため、プレイヤー自身が自発的にリーチを宣言しなければならないという初心者お断り仕様。しかもCPUが強い。ポーカーはプレイヤーと3人のCPUとの対戦となるが、非常にテンポが悪く、ミッションのため以外ではプレイしたくなくなる。
一番ひどいと感じたのはドローンレースのタイムアタック。タイムアタックのイメージとしては、レースの参加者はプレイヤーのみで、特定のコースをいかに早く走れるかを競う1人用のモードなのだが、ここでは普通のレースのようにCPUと並走する形式となる。また、ミッションで設定されているタイムが非常にシビアで、繰り返しプレイが推奨されるような作りにしているわりに、すぐにリトライができるような仕組みが存在しないのが更にストレスを溜める仕様となっている。
やりこみ要素として組み込まれているのに、やり込むには忍耐力を必要とするのはあまりイケてるゲームとは思えない。
💬|[問]あらゆる「遊び」の経験値を証明せよ
『JUDGE EYES』をプレイしていると、ずっとこの問いと戦っているように感じる。『ぷよぷよ』では「落ちものパズルゲーム」の経験を。『バーチャファイター』では「3D格闘ゲーム」の経験を。『ファンタジーゾーン』では「シューティングゲーム」の経験を。麻雀では雀力、将棋では棋力、ダーツではスタッツ、ポーカーでは運を。あらゆる「遊び」の経験がないと、ミッションをコンプリートすることは難しい。
幸いにも、私が特に苦手とするのは将棋くらいで、攻略動画の通りに動かせば容易に勝てるので助かった。周りでは、意外にも『ぷよぷよ』で苦戦している声が多かった。ばよえ〜ん。
⭐|メインストーリーは必見! それ以外はかじる程度でも十分な名作
いろんなストーリーモノを知っているわけではないですが、メインストーリーは文句なしに面白い。ゲームだからこそ没入できる部分もあり、実写でないからこそできる非現実的なアクロバティックなアクションも良い。徐々に謎が明らかになり、ストーリーが進むにつれて点と点が繋がっていく快感は久しぶりだった。
目的地や進み方も丁寧にサポートしてくれるため、ゲームに不慣れでもサクサクと進められるようになっているのが素晴らしい。ゲーム中に難易度の変更もできるので、戦闘が辛い場合は簡単な難易度に変更することもできる点もポイントが高い。ただ、一番下の難易度である「EXTRA EASY」は逆にやり辛さがあるので「EASY」くらいがちょうどいいと思う。
内容としては結構キツイ表現もあるので、万人にはおすすめできないが、気になっている人はプレイすることをおすすめする。PSPlusに加入してる人は、2021年12月のフリープレイ対象になってたのでライブラリの底に眠ってるかも。
🏆|険しいトロコンへの道のり
プラチナトロフィーを目指す人は100時間近い時間がかかることを覚悟しておいたほうが良い。先に書いたが、ミニゲームの壁が高く、それ以外にも面倒な周回作業やメインストーリー攻略中に効率よくミッションをこなしていかないと時間がどんどん増えていくことになる。また、一部時限トロフィーもあるので、ネタバレを気にしないのであれば攻略ページを凝視したほうが良い。逆に、ミニゲームさえ突破できれば、あとは時間をかければトロコンも容易となる。がんばろう。
それでは。
おわり。
なんでこのゲームのキャラクターはいつもテレビ電話なんだ。
📃|本作から3年後の世界ーー『LOST JUDGMENT:裁かれざる記憶』
続編にあたる作品、『LOST JUDGMENT:裁かれざる記憶』も気になるので紹介しておく。『JUDGE EYES』をプレイするまで興味がなかったのですが、こっちもまた面白そう。『龍が如く7』とも繋がる部分があるのかな。機会があればプレイしたいが、トロコンは目指さない(戒め)。