もしかして思い出補正? 『聖剣伝説 Legend of Mana』を今やるとどうなのよ
今なおファンが多く、スクウェア時代の代表作の1つと言っても過言ではない。そんな不朽の名作が現代に蘇った。昔に一度プレイしたことがあるが、ほとんど記憶を失った状態で改めてプレイしたらどう感じるのか。それをまとめたのが今回のお話。
📃|『聖剣伝説 Legend of Mana』は外伝の外伝?
『聖剣伝説 Legend of Mana』は1999年7月15日にPlayStation向けソフトとして発売された作品。前作『聖剣伝説3』から約4年越しの新作は非ナンバリングの外伝的作品となった。以降は、このPS版を「オリジナル版」とする。
ちなみに、同年には『ファイナルファンタジーⅧ』や『サガフロンティア2』『クロノ・クロス』などのスクウェア作品がリリースされていた。エグいね。
名作として伝説的に語られながら約20年の月日が経ち、ようやく現行機でもプレイ可能となったのが今回の「HDリマスター版」だ。2021年6月24日にNintendoSwitch、PlayStation4、Steamでリリースされ、同年12月7日にはスマートフォンでもプレイ可能となった。
発売当初は「フォント」がオリジナル版と違う、という点がユーザーから問題視されていたが、それから約半年後にオリジナル版のフォントを追加するアップデートが告知され、ファンを唸らせた。本作に限らずだけど、過去の名作をプレイするハードルがかなり低くなったのが本当にありがたい時代だ。
▲フォントについて話題になったときの記事
💬|「オリジナル版」と「HDリマスター版」の違い
「HDリマスター」とある通り、グラフィック面が現行機向けに鮮明なものとなっており、現代の他のタイトルと比べても遜色ないものになっているのが一番に目に入る違いだろう。BGMはアレンジ版となっているが、設定でオリジナル版にもすることができるのが非常に好印象だった。「HDリマスター版だから」という部分ではないが、本作は北米版がベースになっているため、そもそもゲームのバランスが日本版から調整されている。以下はWikipediaに記載されていた主な変更点。
⭕|独特な世界観
本作はファ・ディールという世界の物語。様々な種族が多様な価値観で生きている世界。特筆すべきなのは「世界は見る人のイメージによって変わる」という設定。ゲームのシステムとして「ランドメイク」があるが、これは自分でワールドマップを作り上げていくようなシステムだ。マナの力を秘めた「アーティファクト」を自由に配置することで自分だけの世界が完成する。ゲームのシステムと世界観をうまく融合させた秀逸なデザインだ。
ファ・ディールに住む人物たちはまさに”独特”で、無邪気な発言やシュールなやり取りが非常に多く、最初は面食らってしまうが、次第に「そういうものなんだ」と受け入れられると思う。キャラクターは人間以外にも動物、植物、ティーポットなどをモチーフにしている。彼らの突飛でストレートな言葉は時に胸を打ち、「子供向けの絵本が大人に刺さる」という事象に似た感覚を覚えた。
ちなみに、2024年8月29日に発売予定のシリーズ最新作『聖剣伝説 VISIONS of MANA』のPVでは、本作のキャラクターが登場しているのが確認できる。面白そう。
⭕|温かみのあるグラフィック
本作は基本的にドット絵で描かれており、懐かしさと温かみのあるグラフィックになっている。それぞれのマップの雰囲気に合ったデザインは素晴らしく、絵本のような柔らかさも感じさせる。アーティファクトを配置したときは「飛び出す絵本」みたいでかわいらしくポコンッと出来上がるところも良い。
どのキャラクターもまさに「この世界に生きている」ような動きをしており、敵味方問わずに愛らしく思えるほど。ボス級のキャラは特に気合が入っており、過去作のボスのリメイクのような形で見ることができるのは感動的だった。
⭕|現代に合わせた、便利な追加機能
コンテンツが溢れる現代は「タイムパフォーマンス」が重視される傾向にあり、本作は同じマップを何度も行き来するようなシステムとは相性が悪い。それを打ち破るのが「エンカウントOFF機能」だ。名前の通りの機能だが、ダンジョンの道中で発生する戦闘のほとんどを無視することが可能になる。マップを切り替えるたびに敵が復活してしまうのを気にしないでいいのは本当にありがたい。
他にはゲーム中に任意のタイミングでセーブできる「どこでもセーブ」も追加されている。セーブができないエリアもあるが、多くのエリアで使えるのでそこまで大きな問題はない。オートセーブもあるものの、中断する前に念の為セーブしておきたい質なのでめちゃくちゃ活用させてもらった。オリジナル版の名残で各地にセーブポイントが設けられているが、あれいらないよね。
⭕|ゲーム史上最高峰の音楽
本作の一番の強みはBGMと言っても過言ではないと思っている。「みんなで決めるゲーム音楽ベスト100」という企画で多くの楽曲が選出されていることからもわかる通り、名曲が非常に多い。作曲者は下村女史こと下村陽子。『LIVE A LIVE』や『スーパーマリオRPG』『キングダムハーツ』などなど、現在でも様々な作品に携わっている、私が敬愛する作曲者の1人だ。
HDリマスター版では「アレンジバージョン」と「オリジナルバージョン」の2種類が収録されており、プレイ中でも変更可能となっているという手厚いサポート。アレンジはオリジナル版からものすごい変化があるというわけではないが、とにかくリッチにしたようなイメージで、オリジナル版の良さをしっかりと残した、素直なアレンジになっている。
どの曲も良いのだが、ここでは個人的な好みで2曲挙げる。
1つはボス戦の『Pain the Universe』。『聖剣伝説2』の『危機』のような曲展開で、序盤はギターがメインの激しめな曲調だが、中盤からはメロディアスな曲調になっていく。ボス戦という緊張感のある戦闘を引き締める、最高のBGM。
もう1つは『港町ポルポタ』。同名の町の曲で、海辺に広がるキレイな風景とピッタリ合っている。ピアノがメインとなる楽曲で、洒落たモダンな曲調は何かが起こりそうな気配を感じさせる。
▲アレンジ版がなさそうなので、
オリジナル版のサントラを貼っておく。
❌|戦闘がだるいし、面白みがない
この作品の一番の悪い点だと思う。「アクションRPG」というジャンルに属しているにも関わらず、メインとなる戦闘が面白くない。自分の操作方法やプレイスタイルによる部分もあるかもしれないが、ひたすらに面白くなかった。
通常攻撃は複数の敵に同時に当てることはできず、攻撃アクションの隙が大きすぎるため反撃を喰らいやすい。また、奥行きがあるため、うまく攻撃がヒットしないこともあり、そのたびにストレスが溜まる。もしかして、下手なだけ?
必殺技や魔法も習得する必要性が感じられず、ほぼ通常攻撃だけでも問題なく攻略できてしまう。必殺技の習得条件は「隠しパラメータ」となっているため、意識しないと2つ程度しか習得できないのも問題。必要な情報は目に見えるようにしてほしかった。一部は『ロマンシングサガ』シリーズからの技も収録されていて、ファンサービスは感じられた。
ボス級のモンスターは技を放ってくるが、その前後は無敵時間が発生し、ダメージが与えられなくなる。しかも連発されることも少なくないため、戦闘のテンポが悪くなってしまいがち。こっちの技発動時も無敵時間が発生するのでお互い様っちゃお互い様だけども、バランスがよろしくない。
❌|システムの複雑さと不便さ
本作は他にも様々な要素が詰め込まれすぎなほど詰め込まれている。それをすべて楽しもうとすると大ボリュームになるのだろうが、普通にやっているとただのよくわからない要素でしかない。
サボテン日記
各イベントをクリアしたあとに「マイホーム」にいるサボテンに話しかけるとゆるーい視点でイベントについてまとめた日記を書いてくれる。この日記、まとめて書くことはできず、忘れて次のイベントをクリアしてしまうと後戻りできない要素になっているため、コンプリートを意識していると特に注意しなければならない。チュートリアルの説明系のイベントも日記の対象になっており、逃してしまうと2周目以降では回収できず、コンプリートが不可能になってしまうのが辛かった。自分は見逃してしまったので、終盤のデータを捨てて別データで最初からやり直した。
楽器・ゴーレム
武器や防具などを作成することができるが、本作の特徴として魔法を使うための「楽器」や味方として連れていける「ゴーレム」を作成することができる。
これが最初の説明以外は全くと言っていいほど触ることが無く、必要性が感じられなかった。前述した通り通常攻略する際には魔法に魅力を感じず、味方を連れて行く必要を感じられないくらい戦闘は簡単。今後に向けて「実験的に実装したかったのかな」と思ってしまうほどだった。「魔法だけで攻略」とか、やり込み要素を意識した可能性?
ペットの捕獲、精霊のメダルの収集
ダンジョンの中でランダムで発生するのが「ペット捕獲イベント」と「精霊との遭遇イベント」。
「ペット捕獲イベント」はモンスターのヒナがいるので、それを捕まえるとペットとして一緒に冒険することができる。「精霊との遭遇イベント」は楽器を奏でて精霊の機嫌を取って、油断したタイミングで話しかけると楽器作成で必要な「精霊のコイン」が手に入る。
もうね、どっちもシステムがわかりにくいし、やたらと時間がかかるしでストレスが溜まる一方だった。必須じゃないのが救いだが、ただただ面倒な作業だった。
リング・りんぐ・ランド
「ポケットステーション」で遊べたミニゲーム。最強武器を作ろうとすると、その素材がこれでしか手に入らないためプレイが必要になるのだが、いかんせんテンポが悪い。システムとしてはすごろくみたいなもので、ルーレットは目押しすることで好きな数字を出すことができる。押すタイミングが悪いのか、狙ったところからズレたりズレなかったりが頻発して、かなりストレスが溜まった。良くも悪くも、当時のままなのだろうが、あまりにもだった。上手い人はサクサクできるのだろうか。
アイテムのソート機能が無い
本作には11種類もの武器が用意されているが、手に入れたものをソートする機能が無いため、目的の装備が非常に探し辛い。おそらく入手順に積み重ねられているので、気がつくと種類も性能もバラバラに並んだ状態になってしまい、他の武器を試してみようと思えなくなる。なんでこういうところは不便なんだろう。
⭐|名作には違いないが、良いところも悪いところもふんだんに詰まっていると感じた一作
正直なところ、手放しでおすすめできるかと言われると躊躇ってしまうと思う。グラフィックや音楽、独特な世界観など、雰囲気の部分は文句なしに最高だが、メインのゲーム部分がキツイ。
戦闘に関しては既に書いているが、ダンジョンは似たような地形が多く、マップも無いので迷子になりやすいのもつらい。ダンジョンによってはいくつか手順を経て進まなければならない場所もあり、最深部からワールドマップに戻りたいときはそのパズルを逆手順で戻しながら入口まで戻らないといけないのがかなりな手間で、ある程度自分でマップを記憶をしていないと戻るのも一苦労。リレミトくれや。「HDリマスター版」では戦闘を省略できる分、だいぶ遊びやすくなっているが当時はどうだったんだろう。
個人的には「遊べるサントラ」というような感覚で、音楽を聴くためにプレイしても良いと言っても過言ではない。『moon』なんかもそうだったが、「リマスター」というのは基本として「あの頃のまま」にすることが正義なので、不便だとしてもあえてそのままのシステムをにしているんだと思う。なので、現代の便利すぎな現代のゲームと比べると悪い点も目立つのも仕方がないことなのかもしれない。
いつかリメイクすることがあったら、必ずやってみたいと思えるほどの魅力はあるのは間違いないと言える。その時はきっと、グラフィック・音楽・システムのすべてが最高の究極的な作品となることだろう。
いろんなメディアで本作に言及している記事では、常に絶賛する意見しか見てないので、それに反発するように今回は少し文句が多い内容だと思われる。不快な気持ちにさせてしまったら大変申し訳ありません。あくまでニワカで、ライトな遊び方をした個人的意見ということで、どうか穏便に。
それでは。
おわり。