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超かわいいのに、超難しい!? それでも『TUNIC』は超面白い!

※本記事はネタバレなしですが、あまり情報を入れずにプレイすることを推奨します。

 最近のゲームって、かなり丁寧な導入で、操作方法もいつでも表示されたり、次にやることが提示されたりと何かと親切で優しいですよね。

でもそれって、逆に過保護すぎると思ったこと無いですか?

 もっと自由に、手探りで進めたい。そんな思いに応えるのが、今回のお話。



📃|『TUNIC』は子キツネの物語

 『TUNICチュニック』は2022年3月17日SteamXboxなどでリリース、少し遅れて同年9月にNintendoSwitchPlayStationでリリースされた見下ろし型アクションゲーム。視点としては斜めから見下ろす感じなので、クォータービューとなっているのが特徴的。PS版については2024年5月のフリープレイ対象となっていたので、とりあえずライブラリに追加していた、という人も多いのではないだろうか。

ぽつん

 少し触っただけで伝わってくる『ゼルダの伝説』と「ソウルライク」なゲーム性を混ぜ合わせたようなシステム。各地に配置されている「説明書の破片」やアイテムを集めて、謎を解き明かしていくのが本作の目的だ。戦闘はシビアで、ザコ戦ですらヒリつく難易度。近年では珍しい、次に進むべき道がゲーム側から明示的に誘導されない作品で、カワイイ見た目に反して非常に硬派なスタイルとなっている。

死んだ場所には魂が残る

 開発はアメリカのインディースタジオ・Finji。元々はカナダのノヴァスコシア州に住む、一人の開発者が手掛けており、2017年のE3以降、いくつかのゲームイベントで展示していたところをFinjiがサポートするようになったという。当初は2019年中のリリース予定だったのが遅れていたようだが、そんなことを咎めることも忘れるほどの完成度になっている


⭕|ミニチュア感のあるグラフィックの「ゼルダライク」な見下ろし型アクション

 多くの場合、プレイヤーが一番最初に気にするのはグラフィックだろう。その点で言うと本作は完璧と言っても過言ではない魅力がある。可愛らしい世界観が好きな人にとってはクリティカルヒット間違いなし。かくいう自分も一瞬で虜になった

かわよ

 少しダークな部分もあるが全体的にデフォルメ感のある可愛らしさが詰まっており、何をするにもカワイイが溢れてくる。グラフィックが好みなら、絶対に触れたほうが良いこれは確信を持って言える

こわそう

 道中で暗い洞窟の中を進む場面も多々あり、暗闇から敵が襲ってくることもある。ゲーム内の設定で明るさを上げると、多少は見やすくなるかもしれないが、本当に気持ち程度なので参考にしてもらえればと思う。暗闇が本当に暗闇。

明るさ+0
明るさ+5

⭕|緻密に作り込まれた世界観

 本作は、やればやるほど世界観の作り込みに圧倒される。物語は主人公の子キツネが浜辺に打ち上げられているシーンから始まる。なんの説明もなく始まった物語の中、最初の手がかりとなるのは「説明書の破片」か「看板」だ。

なにこれ

 いろいろ調べてみると読める部分と読めない部分がある。読めない文字はユーザーから「Trunic」と呼ばれる独自の文字になっていて、これは「プレイヤーは違う世界の人」と認識させるような演出の1つのようだ。見知らぬ文字ばかりの世界は、まさに異世界に降り立ったかのような感覚を抱く。ちなみに、文字にはちゃんとルールがあり、それをマスターすれば解読することも可能となっているらしい。そんなんは無理

「説明書」といいながら「攻略本」の役割も果たす
拡大すると、紙の質感も完璧に再現されている

 また、文字とは別ににも秘密が隠されており、こちらは「Tuneic」と呼ばれている。「意味を持った音」が随所に盛り込まれており、詳細は省くが音階によって「音の文字」を実現している。一例としてはメインメニューの「New Game」を選択したときの音は「New」を表すものとなっていたりするのだ。この異常なまでの作り込みは普通にプレイしているだけでは気づきにくい……というかまず気づかないのだが、常人では考えられない領域の作り込みには敬服するばかりだ。

▲プレイ後に読んだほうがいいかも


⭕|何気ないものに意味がある、こだわり抜かれた仕掛けと謎解き

 通常クリアするにはそこまでではないが、本作のすべての要素を見ようとすると思ってる10倍、いや100倍くらい難しい謎解きが用意されている。もちろんゲーム内にはヒントが散りばめられているのだが、生半可な気持ちでは解けないレベルとなっている。それは、特に意味が無さそうなオブジェクトや記号、敵の配置など、様々な形式で用意されており、答えを見た時には「こんなのわかるわけねーだろ」と思わず声を荒げてしまうような仕掛けの数々。中には、前述した「音の文字」までもがヒント、もしくは答えになっている場面もある。

意味深な壁画

 しかし、世界観を十分に守りながら、開発者が丁寧に仕掛けたヒントの数々は度肝を抜かれるものばかりで、謎解きの解説を見ると今度は「すごすぎる」と感動してしまうほどだ。特に終盤の大仕掛けはすごすぎて目眩めまいがしたくらい今までやってきた作品の中でも、断トツで一番と言ってもいいほどの仕掛けで、圧倒的な凄みを感じた


⭕|癒やし効果を感じるくらいにBGMのヒーリング具合が良い!

 本作のBGMはピアノシンセサイザーを基調としたものが多く、非常に穏やかでキレイなメロディが特徴的。ゲーム開始直後に世界に放り出されるが、そのまま立ち止まって聴き続けたくなるほどに惹き込まれる音楽になっている。探索しているうちに自然と音楽が切り替わっていたり、同じメロディを別のアレンジで聴かせたりと、かなり芸が細かい「音」の要素がカギになっていることもあり、本作では「音」も大事にしていることがしっかりと伝わる完成度で、随所に配慮やこだわりを感じた

 どの曲も聴いていて気持ちよくなるのだが、個人的には物語の初期から聴ける『Memories of Memories』『Redwood Colonnade』『SunsetBreakfast』あたりがお気に入りだ。


❌|ストレスマッハ! 「ノーマル」が普通じゃない、超絶シビアな難易度!

 グラフィックや音楽に惹かれて始めた人を突き落とすのが本編の難易度。本作は「ノーマル」と「イージー」の2種類の難易度が用意されているが、「ノーマル」でもかなり難しく設定されており、何度もゲームオーバーになって身体に動きを覚えさせる「ソウルライクな一面がこれでもかと見せつけられる。

他のゲームと同じ感覚で「ノーマル」を選ぶと
地獄を見るぞ

 いや、マジで本作の「ノーマル」は、他のゲームでの「超ベリーベリーハード」くらいだと思っておいた方が良いいや、マジで

上手く配置された敵

 アクションゲームに慣れている人はいくらかマシだとは思うが、ボス戦はもちろんのこと、道中のザコ戦も苦戦する難易度。ザコ敵はプレイヤーを認識すると執拗に追ってくる上にフィールドは大きなマップになってるので逃げ切るのも中々に難しい2回ダメージを喰らうだけでゲームオーバーになったり、セーブポイントから遠く離れた場所でやられたときの徒労感など、ストレスが溜まる場面がかなり多いため、腕に自信があるなら「ノーマル」、そうでなければ素直に「イージー」にしたほうが良い。まぁ、ゲーム中にいつでも難易度変更はできるので、ピンチになったり、ボス戦のときだけ難易度を下げるなんてやり方でも良いと思う。

本作を嫌いになる前に、自分で難易度を調節しよう

難しい分、ボスを倒せたときの達成感はひとしおだ

 ボスの攻撃モーションは予備動作が少ないことも多く、避けきれないことも多々あった。また、敵の攻撃パターンによってはこちら側が攻撃をする隙がなく、反撃しようとすると逆に大ダメージを喰らってしまうので、ずっと逃げ回らないといけなくなるのもキツかった

 私は「プレイヤーはチビチビとしかダメージを与えられないけど、敵は数回の攻撃であっさりとプレイヤーを葬る」みたいなバランスのゲームが苦手……というかかなり嫌いで、本作の戦闘面はマイナスなイメージが強いかもしれない


💬|それでも、ほぼ確実にクリアできる超強力なアクセシビリティが完備!

 前述したとおり、超難しい作品だが是非とも触って欲しい作品でもある。

困った

 そんな悩みを解決するのが「アクセシビリティ」というオプション。「画面の揺れを減少」や「ダメージ時のフラッシュを減少」など、ゲーム中の様々な設定をできるのだが、その中でもひときわ輝いているのが無敵モード」。その名の通り「無敵になれる」機能だ。

どんな状況でも、絶対に死なない

 通常プレイ中に、ピンチになったときに発動させるのでも問題ない。特にデメリットも何もなく、「アクションでミスって死ぬ」というストレスから解放される神がかった機能。「戦闘のシビアさ」は損なわれるが、本作の魅力は他にもあふれているので問題ない。気にせず使おう

手厚い

❌|あまりにも放任すぎて、ゲーム勘が無いと死ぬほど苦労することになる

 「無敵モード」を使ったところで解決しないのがこの問題だ。本作はまさに初代『ゼルダの伝説』のようにいきなり世界に放り出される。

今では考えられないスパルタっぷり

 そこからどうやって進めるのかは、プレイヤーの「経験値」に委ねられている。良く言えば「自由」だが、悪く言うと「自由すぎる」のが問題
 多くの作品は「こうやって進めるんですよ」という導線があり、無意識的にそれに乗っかることで次にやることがわかってくるのだが、本作にはそれがない。そのため、何をすればいいのかわからないままやめてしまう人も少なくないのではないだろうか。

 私は「ここは今進むべき場所であっているのか」「他に攻略するべき場所が他にあるのではないか」という悩みをずっと抱きながらいろんな場所を行き来していたのが辛かった。たぶん、決まったルートはないので気にしないでもいいのだろうけど、それすらもわからない時間がストレスだった

 「自力で模索しながら、様々な要素に気づいていく」という部分が大きな魅力だが、難しい場合は取っ掛かりだけでも攻略情報を得ていくのが良いと思う。楽しむためにやってるんだから、ストレスを減らすのは大事

新しいマップに足を踏み入れたときのワクワク感は良い

 ちなみに、PS5では独自の機能として「コミュニティーゲームヘルプ」というものがあり、攻略はもちろんのことトロフィーや謎解きについてもかなり手助けしてくれるらしい。私がやったのはPS4版なので詳細はわからないが、すごすぎる機能


💬|自力でクリアするのに約◯時間かかった

 あくまで参考値になるが、自分が初見で、攻略情報を見ずに、難易度「ノーマル」でとりあえずラスボスを倒すまでにかかった時間約24時間。ボス戦はかなり苦戦してたし、次に行く場所がわからず迷子になりまくったし、手間取る場面が多かったかなと感じた。攻略情報を見たり、アクセシビリティを活用すれば半分以上短縮した時間でクリアできると思う

終盤で撮った時間

⭐|難易度的に人を選ぶが、個人的にはグラフィックも音楽も超良くて、生涯を通しても最高傑作の1つ!

 超難しいけど、その分サポートも充実していて、多くの人が触れても意外と問題ない仕上がりになっている。そういったサポートではどうしようもないのが攻略ルートだが、このあたりは無理せずに攻略情報を得たほうが良い。ただ、「手探りで進む楽しみ」が本作の魅力なので、取っ掛かりだけ見ることをおすすめする。

 自力で攻略していた私は、10時間以上プレイしているにもかかわらずキャラクター強化のやり方を知らなかったり、なんなら基本でもあるダッシュ移動すらも理解していなかったくらいのていたらくだった。そのため、中盤まで勝手に初期状態での縛りプレイをしていたのでかなり苦しめられた。その反面、「手探り感があるなぁ」と非常に面白く感じられた部分でもあった

なんて?

 美しいグラフィック、心地の良い音楽、手触りの良いアクション、歯ごたえのある難易度、自分で謎を解き明かせたときの高揚感……子供の頃に味わって忘れていたと思われる感情を改めて呼び起こし、「ゲームってこんなにも面白いんだ」と再認識させてくれた。そういう意味でも、個人的には心に残った名作になった。

本当にプレイして良かったと思える作品

 まだプレイしたことない人は、是非ともこの感覚を再び味わってもらいたい。

死ぬ気でやってると、死ぬ

 それでは。

 おわり。

ちょっと気にする部分はあるが、時限要素がないので
比較的楽な気持ちで臨めた


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