見出し画像

労働環境は超絶ブラック!?『Spiritfarer』で「おくりびと」体験!

 人は死んだあと、体重が21g軽くなると言われている。これを「魂の重さ」として考えられたりもしていたが、最近※でもないは発汗によるものとかって話もある。まぁ、そんなことは置いておいて、今回はそんな「魂」を司る話

『Spiritfarer』は「迷える魂」の物語

 『Spiritfarer スピリットフェアラー』は2020年9月29日PS4XboxNintendoSwitchSteamでリリースされたアクションアドベンチャーゲーム。NintendoDirectのナレーションだと「スピリットファラー」って聞こえるけど、気のせいかな。Wikipediaでは「経営シミュレーション」と書かれているが、あながち間違ってはいない。Netflixエディションとして、スマートフォンでも遊べるようになっているので、気軽に楽しむことができる。

スマホ版でも変わらず美しい

 プレイヤーは主人公のステラとなり、相棒の猫であるダフォディルと共に「スピリットフェアラー」に任命されるところから物語は始まる。各地に存在する「迷える魂」を船に招き、彼らの要望を叶えながら気持ちの整理を進めていく。最終的には、全てを受け入れた魂を「エバードア」から成仏させることが目的だ。ジョウロやノコギリ、ツルハシなど、何にでも変形し使用できる便利道具の「エバーライト」を使いこなし、魂を導いてあげよう

ニコイチ

 開発はカナダのThunder Lotus Gamesサンダー ロータス ゲームスで、過去作には『Jotunヨトゥン』や『Sunderedサンダード』といったアクション性の高い作品が並んでいる。本作と同様に、グラフィックは手描きのアートやアニメーションとなっており、クオリティは保証されているようだ。

『Jotun』めっちゃ面白そう。

クリアまでは結構時間がかかる、ボリューミーな作品

 個人的には意外だったのですが、結構なボリュームの作品となっている。セーブデータには「依頼の達成率」が表示されるのですが、これが進まないのなんの。100%までやり込むとなると30〜40時間ほどはかかると思われる。

参考までに。

美麗でサクサクと動く、最高品質のグラフィック!

 タイトル画面から感じ取れる雰囲気はもうパーフェクト! ゲーム開始時にはアニメーションが差し込まれ、主人公のステラがアップで目覚めるシーンからカメラが引いてゲーム画面となるのだが、ほぼアニメーションそのまま操作できる感覚

目覚めるステラ
カメラが引いて、全体が見えるように。

 ムービー以外のゲーム操作中も滑らかでかわいらしいアクションを終始見ることができる。土に水を撒く動き、キッチンでオーブンから料理を取り出す動き、木を切り倒す動き……どれを取っても素晴らしいアクションが作り込まれている。本作で重要なアクションである「ハグ」では相手によってしゃがんだり、持ち上げたりと細かい。また、ハグされた相手の反応も、まるで生きているかのような反応で良い。

夜空を滑空するステラ

ゲーム初心者も安心の「やることリスト」

 現在、乗船客に頼まれていることや、次の船の改良に必要な資材などは「航海日誌」のメニューから確認ができ、「今、なにがどうなってるんだっけ」というのが一目瞭然となっていて良い。困ったらここを確認して、順番に処理していけば問題なく物語は進んでいく

各シーンに寄り添うキレイなBGMに癒やされる

 本作は音楽も注目ポイントの1つ。作曲者はカナダのMax LLMaxime Lacoste-Lebuisという方で、映画を撮ってたりもするらしい。彼の楽曲はモントリオールのメトロポリタン管弦楽団が演奏しているんだとか。道理で奥行きのある音楽なわけだ。全体を整えるストリングスや温かみのある笛の音色が特徴的で、イベントによっては勇ましさのある楽曲も用意されている。
 全体的にどれも捨てがたい楽曲が多いのだが、個人的にはゲームと同名の『Spiritfarer』や幻想的な『Meteoroids』なんかがお気に入り。

素晴らしいローカライズ

 海外のゲームを日本で発売するにあたり、ローカライズが必要になる。ローカライズはいわゆる「翻訳」のようなものだが、単純に訳しただけではダメで、販売する地域の文化に沿って訳す必要がある。そういった意味では、本作のローカライズは大成功している。造船所にいるアルバートは小粋なジョークをかましてくるのだが、このあたりはしっかりと日本の「ダジャレ」を取り込んでいる。しかも、ちゃんと全体の話の流れを汲んでいるので意味不明でもなく、自然に仕上がっている。あっぱれ。

うめ〜〜

 「和風の庭園」というような意味と思われる「Zen Garden」は、日本語の表示では「枯山水の箱庭」と訳されており、より日本人に伝わるような具体的な名称となっている

素晴らしいお仕事。

お使いや各種材料の管理、育成、乗船客のご機嫌取りが大半を占める

 ストーリー部分が見どころではあるが、各島にいるNPCノンプレイヤーキャラクターからの依頼の遂行調理や鉱石の加工、野菜の育成乗船客のお腹の空き具合を確認して適切な料理を提供してハグをするといったご機嫌取りに多くの時間を割くことになる。ここが結構好き嫌いが分かれるところかもしれない。早くストーリーを進めたいのに、素材が足りなくて進められなくてヤキモキすることが多くて、むず痒い時間が終始続いていく
 また、キャビンには夜から朝まで寝られるスペースがあるが、前述の通りにやることがたくさんあるため、何日も寝ずに朝から晩まで24時間働き続ける必要があります。あまりにも無法地帯。

朝まで釣りコース

やることが多すぎるのに、不便すぎるシステム

 本作の非常に残念なポイント。狙ってやってるのかはわからないが、このあたりは人を選ぶところかと思う。主観的に言うと『どうぶつの森』のような感覚で、「不便さも楽しむ」というようなコンセプトなのだろうか

水やりは1つずつやらないといけない

 畑や菜園では種を植えるポイントが3つあるが、1つずつに水やりをしてあげないといけないのが非常に面倒。後半になったら一気に水やりできるとか、何か改良されるのかと思ったら、最後までそのままのシステムだった。水やりの回数が少なくなるような改良はあったものの、そのときはもうエンディング直前だった

ミニゲーム的なイベントが面倒

 一部の素材は特定の場所で発生するミニゲームに挑戦することで得ることができる。2〜3分程度だが、それが非常に面倒。1回やればある程度の素材が手に入るものもあるが、アクション性が高く、全然素材が手に入らないものもある

船の移動先の設定や設備の建築などは決まった場所でしか作業ができない

 これ、地味にしんどい。ゲームを進めていく中で船はどんどん大きくのだが船尾にある作業場所は変わらない。そのため、どんどん船首からの移動時間が増えていくようになる。後半になるほど不便が増すって、どういうこと?

毎度キャビンに行かないといけないのが辛い。

誰がどこにいるのかわからない

 各地で見つけた魂を船に乗せて行くわけですが、それぞれのルーティーンや気分で船の上を歩き回るようになる。ただ、彼らが船のどこにいるのかが全くわからない。なので、船の上を駆け回って探すしかない。部屋にいたり、菜園にいたり、ふらふらとしすぎて探すのに一苦労する

なにしとんねん。

空腹の訴え方が腹立たしい

 皮肉っぽい、回りくどい言い方で空腹を訴えかけてくる乗船客に苛立いらだちを隠せない。「ここではお願いしないと食事が出てこないのかい?」みたいなことを何回も言われると、「じゃあ、あんたが料理してみぃ!」って怒鳴りたくなる。毎日自動でご飯が出てくると思ってたら大間違いやぞ

うるせえ!

各地の島の名前はプレイヤーの記憶頼み

 依頼で「○○に行ってきて」と頼まれたりするのだが、船の移動先を選択する地図画面ではカーソルを当てないと各地の名前が表示されないため、うろ覚えの場合は1つずつカーソルを当てて名前を確認していかなければならない。当然後半になればなるほど移動範囲が広くなるため、覚えることも多くなる。地名を確認していくうちに「あれ、なんて名前のところに行くんだっけ?」となり、再び確認するために画面を戻したりしなければならなくなる(アホ)。もう少し手心というか、なんというか。どうにかならんかったんか

目的地 is どこ。

「死」や「別れ」を考えさせられる名作だが、万人にはおすすめできない

 ネタバレになってしまうので、多くは語れないのだが、現実でも大切な人を残して、自分が先立ってしまったことを想像してしんみりしてしまった別れのシーンはゲーム史上でも最高クラスに美しく、切ないものとなっていて、ぜひともプレイして乗客を送り出してみて欲しい

エバードア。

 ただ、その反面、ゲームシステムのついては先に書いたとおり不親切なところが非常に多く目につくので、終始忍耐力が試される。これは、他にいろんなゲームを経験している人ほど如実に感じてしまうのではないだろうか。

ひと休み、ひと休み。

 ストーリー重視で、キャラクターに感情移入できる人育成系、牧場管理系みたいなちまちまコツコツとしたゲームが好きな人にはおすすめ。個人的には、プレイして良かったとは思うが、肌に合わない部分も多々あった。グラフィックや音楽は最高に好きなので、いろいろと改善した新作が出たらやってみたいものだ。良いところも悪いところも書き足りない感はありますが、今回はこんなところで。

ハグする瞬間は、胸が「キュッ」となる。


 それでは。

 おわり。

上手くやらないと2周コースになるので、
トロフィー狙いの場合は気をつけて。


あなたが私をサポートすると、私はあなたからサポートされることができます。