何百ものタマシイを捧げながら『Cuphead』で兄弟2人のタマシイ取り立て生活
まさか、最近プレイした別作品で見た単語を、ここでも死ぬほど見ることになるとは思わなかった。
📃|『Cuphead』はどんな頭?
マグカップ。はい。『Cuphead』は2017年9月29日にWindows10、Xbox one向けにリリースされた2Dアクションゲーム。細かく言うと「ラン&ガンシューティング」というようなものになる。同様のジャンルの作品は『魂斗羅』や『メタルスラッグ』などになる。本作は約2年で500万本を売上げ、その後はmac、Nintendo Switch、PS4と様々なプラットフォームでプレイ可能となった。基本的にはステージが始まった瞬間にボス戦という特殊な作りになっており、アクションゲームの面白い部分を気軽に摂取できる。多くのステージは横スクロールアクションになっているが、一部のボスは『グラディウス』のようなシューティング形式のステージになっており、一筋縄ではいかないゲームになっている。
主人公はカップヘッドとマグマンの2人の兄弟。名前からわかるように、マグカップをモチーフとしたキャラクターだ。ある日、2人はカジノで大勝ちして、最後にオーナーであるデビルとカジノの金品全てと己のタマシイを賭けて大勝負するが、当然のように負けてしまう。2人は命乞いをし、どうにか助けてもらえないかと言うと、デビルから「明日の夜の12時までにカジノから逃げ出した債務者全員のタマシイを取り立ててこい」と命じられた。カジノから飛び出した2人は島に住んでいるケトルじいさんにアドバイスをもらい、タマシイを取り立てながらデビルに対抗できる力を身につける冒険に出ることになる。
以下のインタビューでは、影響を受けた作品として『ガンスターヒーローズ』や『魂斗羅スピリッツ』『ロックマンX』などが挙げられており、日本の作品も少なからず影響を与えていることがなんだか誇らしい。
💬|開発スタジオがイカれてる(褒め言葉)
開発はカナダのインディーゲームデベロッパー「StudioMDHR」。プレイせずとも、動画を見てるだけでもわかるグラフィックの凄まじさ。美麗な映像の作品に対して「映画を操作しているようだ」という言葉が添えられていることがよくあるが、本作は「アニメを操作しているようだ」という感じ。それもそのはず。ゲーム中のアニメーションは手書きのものであり、その数は45000枚近い数となっている。これは「ゲーム制作に使われた最も多い手描きセル画の枚数」としてギネス記録に認定されている。他にも「ラン&ガンゲームとしてボスの数が最も多い」や「ラン&ガンゲームとしてボスの変形回数が最も多い」といったものもギネス記録になっている。英語がよくわからないので自信はないけど合っているはず……。
イカれ具合というと、開発の仕方もなかなかキてるものがある。以下のインタビューにもあるように、開発に専念するために仕事を辞めたり、家を抵当に入れて開発資金を捻出するなど、7年に渡りギリギリの状態で開発を進めていたらしい。その苦労や努力がしっかりと作品に反映されいるのが素晴らしい。
⭕|まさに「アニメ」を動かしている感覚になれる魅力的なグラフィック
前述しているが、まずプレイして惹かれるのはグラフィックだろう。1930年代のアニメのような絵柄に不思議と懐かしさを感じる。原作があるかのような自然なグラフィックだが、特に原作はない。影響を受けたのは『ベティ・ブープ』や『ポパイ』などでお馴染みのフライシャー兄弟による作品らしい。同年代あたりの作品は、ディズニーで言うと1928年公開の『蒸気船ウィリー』、1933年公開の『三匹の子ぶた』、1937年公開の『白雪姫』といったところだ。リアルタイムで見ていた人は少ないだろうが、テレビの特集やファッションのデザインなどで目にしたことがある人も多いはずだ。
ちなみに、Netflixにて2021年中にアニメ化が予告されている。キャラクターが多いので、どう動くのかが楽しみだ。
⭕|文句なし!歯ごたえのあるアクション!
前評判の通り、2Dアクションとしては最高峰の作品。いままで数々のアクションゲームをプレイしてきたが、本作のアクションは非常に快適で、複雑過ぎずシンプル過ぎずな良い塩梅となっている。ボスとの戦闘は2分ほどで終わるようになっているため、やり込む際にも丁度いい長さになっていて良い。使う武器やお守りがほぼ固定化してしまうのはしょうがないが、各ボスやステージによって使い分けることができる余地はある。また、武器は2つ装備でき、それぞれ特徴があるので、プレイヤーのスタイルによって選択肢が広がるような工夫がされている。アクションゲーム好きは間違いなくプレイしたほうが良い。
シューティング苦手すぎて、ファミコン時代みたいな攻略方法してた(勝てなかった)。
💬|難易度高めだけど、簡単なモードもあるよ!あ、難しいモードもあるよ!
本作は高難易度アクションゲームとしても有名だが、実は難易度選択がある。各ステージでは「シンプル」「レギュラー」を選ぶことができ、アクションが得意でなくとも簡単なモードで遊ぶことも可能となっている。ただ、「シンプル」で進めても最終ステージに挑むことはできないようなので、まずは練習してから「レギュラー」に挑戦すると良い。きっと進めていくうちに「レギュラー」から攻略できるようにプレイヤー自身に経験値が貯まってレベルアップしていることだろう。10回や20回では勝てないことは当たり前のようにあるので、諦めずに戦い続けよう。1度クリアすると「レギュラー」から少し難易度が上がった「エキスパート」に挑戦できるようになるので、ついでにそちらもプレイしよう。
⭕|負けたときの状況の魅せ方が素晴らしい
本作は敵の体力が見えないようになっている。画面上には自分の体力と技ゲージくらいの最低限の表示のみで、非常にスッキリしている。そのため、どれだけダメージを与えたかはボスの行動パターンや形態の変化でなんとなく把握するしかない。これだけ聞くと「なんだかゲーマー向けだな」と思ってしまうかもしれないが、そうでもない。HPが0になり、負けた後にはどれだけダメージを与えていたのかがわかるような「進行度」が表示される。
スタートとゴール、そして途中のパターンと形態変化の回数がわかるようになっており、自分があとどれだけ頑張れば勝てるのかがわかる。負けるたび、徐々にゴールに近づいていくのを感じると「あと一歩!」という感覚でプレイを続けるモチベーションになる。面白い。ただ、残り1mmみたいなパターンを目にすることも多いので、そこで心を折られないように気をつけて……!
⭕|強力なボスを撃破したときの「A KNOCKOUT!」が気持ち良すぎる
もうね、これが気持ちいいの。脳からドバーッて何かが溢れ出てしまうの。特にHPが残り1の状態で、ギリギリ耐え忍びながら、必死で攻撃し続けて、「早く倒れてくれ!」と願いながらアクションをしているところで鳴り響く「カンカンカン!」というゴングの音と「A KNOCKOUT!」というボイスが最高。画面いっぱいに文字が出るのも良すぎる。最後まで溢れ出るのが止まらなかったので、枯れるかと思った。
⭕|米ビルボードのチャート1位を獲得したのも納得の音楽
本作のBGMは、ジャンルとしては「ジャズ」となっている。ウキウキするような曲であったり、ボスとの緊迫感のある曲であったり様々だが、使い回されている音楽がほぼ無いのがすごい。「ボス戦」となると、大概のゲームは決まった「ボス戦のBGM」があるものだが、本作は全てのボスに固有のBGMが付いている。それぞれの世界観に合わせた音楽で、繰り返し聴いていても飽きがこないような気持ちの良いBGMになっている。本当に素晴らしい。
見出しに書いたとおり、アメリカのビルボードでの「ジャズチャート」で1位を獲得している。これは、ゲーム音楽としては初めての快挙。正直、曲だけ聴いていたらゲーム音楽だとは思えないようなクオリティの楽曲ばかりが揃っている。ゲーム中ではBGMをフルで聴くことはないと思われるので、サントラで堪能するのが良い。
⭕凄まじいこだわりの|翻訳
本作は英語の作品が翻訳されている。「ローカライズ」は簡単に言うと「翻訳」となるが、正確に言うと少し違う。販売する地域の文化や習慣などに合わせた翻訳を行うのがローカライズだ。それが本作ではかなり力が入っている。
自然すぎて、パッと見は「普通じゃん」と思ってしまうが、これは全て手描きのフォント。各言語で、それぞれのフォントを用意しているのだ。また、負けた際のボスの「勝ちセリフ」にも注意を払い、ダジャレや毒気のあるコメントも文句なしのクオリティ。原作の雰囲気を崩さず、しっかりと翻訳した言語になっているのは感動モノ。プロのお仕事を感じる。Nintendoで公開されているインタビューでも少し触れられているので、是非見てもらいたい。
⭐|最上級のグラフィックとサウンドに難関を乗り越える気持ちよさを混ぜ込んだ名作
アクションゲーム好きなら遊んだほうが良いと間違いなくおすすめできる作品。ボスの行動パターンは複雑なものは少なく、覚えるのもそこまで辛くない。「高難易度のアクションゲーム」の入門には丁度いい難易度となっている。2人プレイも可能なので、1人で無理なら友達とプレイするもの一興だ。私は1人でしかやったことないですが……。
私は過去に『I wanna be the Guy』や『Wings of Vi』などの高難易度アクションゲームをクリアしていたので、本作の難易度はそこまで高いとは感じなかった。474回、リトライしてますが……。
トロコン難易度はアクションが得意であればそこそこレベル。全ステージでA以上の評価を得るのは面倒だが、HPをキープするのが難しいだけで、他でカバーすれば問題ない。個人的には「ミニ飛行機」の状態でボスを倒すのが1番の難関だったかもしれない。
延期となってしまっているが、これからDLCで完結編が配信されることも予定されている。今からプレイし始めても遅くないので、ぜひ!
それでは。
おわり。
追記:成し遂げたぜ、全ボスSランククリア!
一通りクリアしたあと、せっかくなのでSランククリアを目指してみた。Sランクは全ての評価が最高に良いと獲得できるランクで、Sランクを獲得したステージの旗には「S」という文字が刻まれる。
「ワールド1くらいならいけるかもしれないけど、後半になるほど厳しそうだなぁ」と思いつつ寝る前にちょこちょこと倒し続けて、ようやく全ボスパーフェクトクリアを達成。
攻撃パターンとしては「レギュラー」とそこまで大きくは変わらないので、パターンを身体で覚えて叩くのみでした。やはりキツイのはシューティングのステージ。思った通りに動かせなくて、何度もリトライしました……。アクションの方は幽列車が体感的に一番辛かった。とにかくうれしー!
追記:DLCの配信時期が発表!2022年6月末!
日本時間の2021年12月10日の9時頃から始まっている「The Game Awards 2021」にて発表された。様々な新作の発表などが話題となるイベントだが、まさかの『Cuphead』の最新情報が。2022年6月30日予定ということで、まだまだ先になるが、楽しみすぎるー!
追記:ボリュームは少なめながらも、満足度の高いDLC!
6月30日の22時、すぐさま購入してプレイしました。久しぶりということもあり苦戦はしましたが、無事にクリアできました。ボスの数は少ないけれども、安定のクオリティで歯ごたえのある戦いができる仕上がりとなっていました。
上級者向けには、特殊な「お守り」を使うことでリスクを背負っての戦いをしなければならないものもあり、単純にクリアする以外にもやりこみ要素があって良かった。
新キャラの「チャリス」は制限があるものの非常に強力で面白い。チュートリアルをやってなかったせいもあって、最後の最後までミカワシロールの存在を知らなかった……。頑張れば1日で終わってしまうレベルのボリュームですが、大変に良い作品でした。