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第十六話 一歩一歩進むということ 「ねじれ女子の婚活物語」〜38歳OL マリエさんの場合
次の日の日曜日。
マリエさんは全国でも有数の大手結婚相談所に来ていました。
婚活をしている人なら誰でも知っている会社です。
ホームページを見て、料金的にはちょっとお高め。
でも、専用アプリのほか、相性診断、自動マッチングシステムやお役立ち情報随時更新ブログなど、サービスがたくさんある。
そんな印象でした。
出迎えをしてくれた椎原さんは歳が50代後半ぐらいで、優しい笑顔の方です。
左手の薬指には結婚指輪をしています。
「お待ちしておりました。こちらにどうぞ」
マリエさんは個別に衝立があるブースに案内してもらって、ゆったりとしたソファに座りました。
テーブルには「お飲み物」とかかれたペーパーが置いてあり、コーヒー アイスorホット お茶 紅茶など、選べるようになっていました。
椎原さんが入ってきて
「お飲み物は、何がよろしいですか?」
とマリエさんに聞きました。
「紅茶をお願いします。」
というと、椎原さんはにっこり笑って、「お持ちいたしますね」と、言って紅茶を淹れに行きました。
テーブルの上には昨日と同じく、いろんな資料が置いてありました。
さすが全国規模とあって、専用アプリ他、様々なシステムがあるようです。
婚活パーティ専用のシステムもあるようで、全国で行われる婚活パーティーの日時案内なども置いてありました。
(どこでもパーティーってやってるんだなあ‥私はもう、嫌だなあ)
マリエさんはかなり前に一回、友人と一緒に婚活パーティーに参加したことがありました。
その時は男性10名、女性10名で、女性は椅子に座ったままで、10分経過したら男性が椅子を移動する、というようなシステムでした。
マリエさんは軽い気持ちで参加したのですが、「婚活を目的とした」初対面の男性と10分話すというのがこんなにキツイんだ、というのを初めて知った体験でした。
会社の面接の方がよっぽど楽だと感じたのを今でも覚えています。
そんなことを考えていると、壁をトントンと叩いて、椎原さんが戻ってきました。
椎原さんは良い香りの紅茶をテーブルにスッと出して、
「お休みの日に、わざわざありがとうございます。」
と言って、丁寧にお辞儀をされました。
(ここはなんか丁寧だなあ。いい感じかも)
マリエさんはそう思って、昨日と同じように、まずは内容を伺いに来たことを椎原さんに伝えました。
「そうんなですね。ありがとうございます。弊社は、ホームページにも記載しているのですが、
自社会員がとても多いことと、プラスIBJとも連携しているので、会員様の数は相当な数になります。その中で選んでいただけるので、良い出合いになる確率も高くなると思います。」
「そうなんですね。私はあんまりコミニュケーションが上手ではないので、アドバイスとかいろいろ伺いたいのですが」
「アドバイスですか?」
さっきまで、ニコニコしていた椎原さんが真顔になりました。
「基本的に私どもからアドバイス、というのは行わないことになっています。
もちろん、会員さんからお尋ねになられたら、こちらも回答させていただく形ですが、
いろんな婚活に役立つ情報を、専用アプリにのせているので、それを見ていただいてご自身で活動していただく形です。申し込みはお互いでしていただいて、お見合い場所とかのやりとりもお二人でしていただく形です。会員数が他の相談所さんよりも圧倒的に多いので、大丈夫ですよ」
(そうかー。システムがきっちりしているから、モタモタしているタイプの人は置いていかれる感じかしら‥私みたいな‥ここでもないな)
そのあと雑談を少しして、椎原さんにお礼を伝え、マリエさんは事務所を出ました。
「ぜひご検討くださいね。お待ちしております。」
そう言って、椎原さんはマリエさんに期間限定キャンペーンチラシとパンフレットの入った袋を渡したのでした。
青空の広がる街中をゆっくりと歩きながら、マリエさんはぼんやりとさっきの相談所のことを考えていました。
「さっきのところは、どうだった?」
りーくんの声が聞こえました。
「なんか、アクティブな人がたくさんいそうな相談所だったよ」
「アクティブねー。会員がたくさんいるってことは、結婚していない会員さんもたくさんいるってことだもんね。」
「ああ、そうともいうよね」
「どうするの?決めた?」
「うん、そりゃー、ハッピーウエディングさんしか、もうないでしょう。崖っぷちな私には」
「そうなんだー」
リーくんが笑いを我慢しているような声で言いました。
そして続けて、
「ちゃんと自己分析できてるじゃん。婚活は、自分をわかっていることがすごく大切だからね。
いろんな相談所に行ってみて良かったね。合うところが自分でわかったんだから。」
「自分に合う、かあ‥ 自分のことは、行動してみないとわからないことばっかりだなあ。」
マリエさんは少しずつ進んでいる自分を感じていました。