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第十五話 頭の中にあることを先に済ませる 「ねじれ女子の婚活物語」〜38歳OL マリエさんの場合

ファッションビルの中は、前回と同じようにたくさんの人で賑わいをみせていました。
マリエさんがスタバの方に向かおうとすると、りーくんの声が聞こえました。
「今頭の中にあることを後回しにしないで先に済ませていくと、物事は進んでいくよ」

「スタバじゃなくて、ワンピースのことね?」

「頭の中がぐるぐるしていて、スタバで美味しいもの何か食べても、心から味わえないでしょう?ワンピースが気になって。」

スタバでの食事は一人暮らしのマリエさんにとって決して安くはなく、ご褒美的なものなので、
確かにじっくり味わいたいお楽しみです。
マリエさんはりーくんの的確なアドバイスに従い、ワンピースを先に見に行くことにしました。

広々とした館内を歩いていくと、お目当てのセレクトショップがありました。
店員さんがレジの中でパソコンを操作しています。

「あ、誰もお客さんいない。中入ったら、絶対おすすめしてくるよ。」
マリエさんは尻込みします。

「じゃあ、まず、マリエさんが通販でよく買うお店に行ってみよう。そこで欲しいものを心で比較するといいかもだね~」
とリーくんが言いました。

マリエさんは、セレクトショップからちょっと離れたところにある、通販でよく利用するショップに入りました。

店内をぐるっとまわると、ワンピースコーナーがありました。
そこにかけてあるワンピースを手にとってみます。

素材はレーヨンで、今流行のデザインです。
でも手触りはセレクトショップの方が断然良かったのでした。

「‥絶対、あっちの方が可愛いし、素材がいい」

「だよねー。じゃあ、もう覚悟して、見に行こう」
りーくんがまるで口笛を吹いてるかのような軽い口調でいいました。


マリエさんはセレクトショップに入ると、レジにいる店員さんを見ないで、まっすぐにワンピースを見に行きました。
「まだ、売れてませんように。」

祈る気持ちでワンピースがかけてある場所へ行くと、そのワンピースはまだその場所に誇らしげにかかっていました。

マリエさんはワンピースを手に取り、鏡の前で自分と合わせてみました。

「お似合いですよ~」
後ろから急に声が聞こえて、横を見ると、さっきまでレジにいた店員さんがニコニコしてマリエさんを見ています。

(は、早いっ。もう後ろにいる‥)

「あの、着てみてもいいですか?」
マリエさんはがちょっと躊躇しながら言うと、
店員さんはにっこりと笑って
「もちろんです。そのワンピースは細身なんですけど、お客様はスタイルがよろしいから、サイズはMサイズで大丈夫かと思います。こちらへどうぞ」

(スタイルがいい?そんな言葉、最近言われたことない‥)
マリエさんはワンピースを持って、可愛らしい試着室に向かいました。

試着室の入口はカーテンではなく、可愛らしい白いドアです。

ドアを開けて中に入ると、広さもゆったりとしていて、洋風な椅子があったりと、とてもお洒落でした。


ワンピースはぴったりというよりも少し余裕があって、後ろのチャックもスルッと上に上がりました。
鏡には、とても上品で可愛らしいマリエさんが映っていました。

(わー。いい感じかもしれない)

「お客様、いかがですか?」
ドアの向こうから店員さんの声が聞こえ、マリエさんは試着室のドアを開けました。


「お似合いですね! Gジャンとかを着てもいい感じですよ」
と店員さんが言いました。

(Gジャンは以前買ったのが家にあるはず。)
ワンピースを着て、とても嬉しそうな自分の姿が大きな鏡に映っていました。

「これ、ください」
マリエさんは、はじめてこんなきれいなワンピース&高価な買い物を自分のためにしたのでした。

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スタバでチーズケーキを食べながら、心が満ち足りているマリエさんがいました。

隣の椅子には先ほど購入したワンピースが入った紙袋があります。
靴はあれで、バックはあれで‥と頭の中でシュミレーションします。

「ついに買っちゃったね。いい買い物したねー」
試着室の時は全く聞こえなかった、りーくんの声がしました。

「うん。なんか、こう、心がフワッとするというか」

「チーズケーキも美味しいでしょ?」

「うん。今日は、とっても贅沢な1日だったわ。なんだか、幸せ」

「マリエさんは、マリエさんの中のナイトを動かしたからね。良かったね。」
リーくんの優しい言葉を聞きながら、自分に満ち足りる、という感情を少しずつ味わいはじめたマリエさんでした。


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