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第六話 マリエさんの元彼 「ねじれ女子の婚活物語」〜38歳OL マリエさんの場合

(ちょっとぷらっと行ってこようかなあ)
明日は初めての結婚相談所に行く日曜日です。

予定のないマリエさんの土曜日は、いつものように暇な時間がたっぷりあります。

マリエさんの土日の過ごし方はだいたい近所のショッピングモールをうろうろして、
スタバでおひとりさまのお茶をすることでした。

スタバのニューヨークチーズケーキが大好きで、いつもはそれを目当てに行きますが
現在ダイエットでようやく2キロほど体重が落ちています。

(うーん、クッキーで我慢という手もある。ま、とりあえず行くか)


いつも通りのジーンズにセーターという格好で、ショッピングモールへ。

土曜日はいつも人でいっぱいです。

いつものように洋服屋さんや雑貨屋さんをウィンドーショッピングしながら、お目当ての
スタバへ。

今日も順番待ちのお客さんの列ができています。

一番最後に並んだマリエさんは、4人ほど前に並んでいる人の中に、見覚えのある後ろ姿をみつけました。

背がヒョロっと高くて少し猫背。

肩に引っ掛けるタイプの小さめの鞄は、マリエさんがプレゼントしたものです。

(タカシくんだ‥!)

なんと、三年前にマリエさんの元を去って行った元彼のタカシだったのです。

横には、小さな背丈の髪の長い女性がいました。

ふと、彼が左手をあげた瞬間、その細くて長い薬指に細い指輪が光っているのが見えました。

(えっ?)

マリエさんは自分の心臓の鼓動がバクバクと動きだすのと同時に、頭の先から血の気が引いていくのも感じました。

(ま、待って。三年しか経ってないんだよ? どうして?)

後ろに人が何人か並び始めていましたが、マリエさんは顔を確認したい衝動にかられました。

(間違いかもしれない。間違いであって!)
並んでいた列を飛び出し、一番前のレジの方に小走りで進みました。

レジの横にはコーヒー豆やカップなど、お持ち帰り用グッズの販売棚がありました。
マリエさんはその棚の前に立ち、棚にあったコーヒーの豆の袋を手に取って、見ているフリをしながら少しだけ後ろに首を向けました。

ちょうどいい角度で、元彼タカシの顔が見えます。

横の女性と笑いながら何か話をしています。
女性は、フワッとした笑顔の、可愛らしい人でした。

ふと、何かの瞬間で、女性の左手が見えました。

マリエさんは、その薬指に、細い指輪が光っているのを確かに見たのでした。

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そのあと、どんな風に行動したか、マリエさんはあんまり覚えていません。

気がついたらモール内の二階にある、もうひとつのカフェのタリーズにいて、
何も頼まず、席に茫然と座っていたのでした。

ハッと我に帰り、
(あ、私なんにも頼まずに座ってた。なんか、買ってこよう‥)

よろよろと席から立ち上がり、レジの方に行きました。

レジはやはり少し人が並んでいて、マリエさんはその最後尾に並びました。

スタッフの人が、並んだ人にメニューを渡しながらマリエさんの方にも近づいてきます。

そしてマリエさんにメニューを渡すと、ちょっと心配そうに言いました。
「大丈夫ですか?」

マリエさんは笑ったつもりでメニューを見ると、文字が霞んでよく見えません。

涙が頬を伝っているのにようやく気がつきました。

マリエさんはボロボロ泣いていたのでした。

(ああ、私泣いてるんだ。もう、家に帰ろう)
メニューを定員さんに返し、駐車場の方の方に戻りました。

車の運転席のドアを開けながら、涙がさらに止まらなくなっていました。

(あの人、結婚してたんだ)

頭の中は、さっき見た元彼タカシの笑い顔と、可愛らしい笑顔のお嫁さんの顔でぐるぐると回っていました。

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