教育とは「信念や価値観を育む」こと ベルナルデスキ
セリエAのユヴェントスに所属する、イタリア代表のフェデリコ・ベルナルデスキのインタビューをまとめた。このインタビューは、NIKEが主催した「若者のスポーツ参加を刺激する」ことを目的としているNIKE×学校のイベント後のもの。
若い時から世代別のイタリア代表に選ばれ続けエリートとして育ち、父親として子育てにも奮闘するベルナルデスキが「親の役目」「親子関係」、そして「現代の若い世代」について語った。
教育における本質的な部分を突く彼の考え方に、ハッとさせられる事があるように思う。
<プロフィール>
フェデリコ・ベルナルデスキ。イタリア・トスカーナ州出身のプロサッカー選手。26歳。セリエA、ユヴェントスFC所属、イタリア代表。
ポジションは、トップ下、サイドMF、WG、インサイドハーフ、ウイングバック。6歳から地元のサッカースクールでサッカーを始め10歳の時にACFフィオレンティーナに移籍。以後10年間、フィオレンティーナの下部組織にて育成期間を過ごすことになった。ユースでは得点王になるという活躍をし、キャプテンとしてもチームを牽引。その活躍が認められ、2013年6月18日にクラブと4年間の契約延長がなされた。一時期セリエBのFCクロトーネにレンタル移籍するも、クロトーネでの活躍が認められ、1年でフィオレンティーナに戻る。2017年7月24日、ユヴェントスFCに移籍、現在もプレーする。
謙虚に欲を抑える
インタビュアー
君の柔軟なメンタリティが僕にとても影響してるんだ。様々なポジションで君はプレーしている。
チームや監督の為に、一歩下がって要求に応えられるよう準備しているよね。その為には、謙虚で欲を抑えることが大切なのかな?
ベルナルデスキ
そうだね。君が最後に言った「謙虚で欲を抑えること」が僕のスタイルだよ。
フットボールはチームスポーツだからね。
例えば君に「本職ではない別のポジションでプレーしてくれないか?」というリクエストが監督から来た場合、チームのためにそれに答えなければならないんだよ。チームに良い結果をもたらす事に繋がる事だからね。だから「謙虚に欲を抑えること」は、いつも一番始めにあるものかな。
親の役割
インタビュアー
君はよく、両親との関係性を話すよね。君のお父さんとの関係。君が父親を見てきたのと同じように、いつか君の息子が君の背中を見て育ってくれる事を夢見てる?
ベルナルデスキ
そうだね。そうなって欲しいかな。
子供の人生にとって、親というのは基盤となる存在なんだ。親が子供に、基盤となる価値観や信念を伝える。親がいない子供がいたり、全ての子供がそういう教育を受けれるとは限らないかもしれない。けど、僕と同じように両親がいる人々に対しては、「親は子どもの成長過程で、信念やその価値を高める役割を担わなければならない」と僕は考えている。今話したことが、現代社会に少し欠けてきている事なんじゃないかな。
少し残念だよ。親が信念や価値観を子供に伝えることは基本的な事だと思う。
インタビュアー
ちなみに、僕の弟は僕たちと10歳も歳が離れているんだけど、両親は弟のやってることが理解できなくて、怒ったりする事があるんだ。上の世代が、若い世代についてもう少し深く知ろうとする事は重要だと思う?
ベルナルデスキ
もちろん。現代の若い世代は成長する必要もあるけど、それと同時に、自分たちを理解してくれて、時には守ってくれる、夢を叶えさせてくれる人が必要なんだ。そのバランスが大切だと思うね。一人の父親として話すけど、僕の娘が大きくなった時、今よりもっと沢山の事が変わっていると思う。だから、僕自身がしっかりしていなければいけない。娘に対する接し方やかける言葉を良く考えなければならないし、何を彼女に伝える必要があるのかを理解していなければならないね。
彼女自身にとってより良い人生を送れる事を祈っている。
信念と価値観を育む
インタビュアー
君から見て、現代の若い世代には何が足らないかな?君や僕が思春期の時期、テクノロジーが大きく進歩して世界を変えた。そこからテクノロジーの時代に突入した。そして君は、多くの人がなることができないプロサッカー選手になったよね。けど、君は思いあがることなく平静を保っていたように見える。どうやって自分をコントロールしたの?
ベルナルデスキ
常に、僕は地に足をつけていた。そして、自分の前にある事に集中できていたね。地に足をつけることは、僕のような人生を送る事において一番大切な事なんだ。自分を見失うのは簡単なことだからね。なぜなら、たくさんの出来事や誘惑が一気に押し寄せてくる。それらをしっかり管理するのは簡単じゃないよ。もちろん、道の外に外れる誘惑が多く、自分をコントロールするのが難しかった時期も僕にはあったし、それを乗り越えるのは簡単じゃなかった。けど、その人にしっかりとしたベース、本物の信念や価値観があれば、誘惑に勝つことは簡単になると思うんだ。だから、基盤となる信念や価値観をしっかりと育むことがとても大切なんだよ。僕たちが今よりも少し若かった頃には、今言ったことをより重視していたように感じるね。若い世代が、基盤となる信念や価値観を持つことは素晴らしいことであると同時に、本来あるべき姿なんじゃないかな。なぜなら、僕たちやそれよりも若い世代が未来を作るからね。
「誰か」を目指さない
インタビュアー
僕たちの世代や、下の世代は将来の心配をしているよね。テクノロジーについてはよく知っていて、うまく使いこなせているんだけど、フィジカル的な成長が遅れている。まだ成長しきっていないよね。プロになる為には、成長を「待つ」事を理解すれば十分なのかな?
ベルナルデスキ
僕はまず、一つ言いたい事がある。
全ての人には、それぞれの人生がある。
夢とか実現したい事がね。
今はネットが発達して、インターネット上に有名人が増えたよね。子供たちは、その有名人を見てその有名人のようになりたいと願う。
けど、その有名人のようになれなかったら「自分は失敗した」と感じてしまう。本当は失敗なんかしていないのにね。それぞれが自分の夢や目標を育み、そこにたどり着くまでの道を引き受ける必要があると思うんだ。「誰かを目指す」のではなく、「より良い自分になる」ことが世界で一番素晴らしいことなんじゃないかな。これが真実だよ。誰かを目指して同じになろうとするのではなく、より良い自分になることを目指して欲しい。
これがまず基本的な事だと思う。
成長という観点から見ると、僕の成長もとても遅かったんだ。成長が遅くて、かなり僕自身が苦しんだよ。学校内でもサッカーの面でもね。
テクノロジーの能力がある今の世代の子供たちには、自分の理想に向かって前に進み続け、諦めないで自分の未来を信じて欲しい。
これが本当に大事なことなんだ。
最後に
途中で話していた「基盤となる信念や価値観をしっかりと育む」事、「誰かを目指して同じになろうとするのではなく、より良い自分になる」事は、根本にあるものだが、私たち日本人に一番欠けている事だと感じる。
学校では、個人としての信念や価値感形成よりも、
「みんなと同じであること」で評価され、なんの疑問も持たず、先生の言う事を聞く子供が評価される。
理想やあるべき姿があたかも正しいように、町や広告、人々の考えの中にも作り上げられ、自分であることよりも作られた理想を目指す事が極端に美化されてしまっている。
そんな環境に身を置いて窮屈さを感じている子供は山ほどいるだろう。
そこで私たちは何ができるのか?
自分は何を信じるのか、自分にとって何が大切なのかを思い出す必要があるのではないか。
そして、それを自分の言葉で伝える必要があるように思う。
一旦立ち止まって考えてみようではないか。
自分の信念はなんなのか?
自分のしていることは、自分の中から育まれたものなのか?
それとも、、、
自分のしていることは誰かに押し付けられたものなのか?
このインタビューは、自分たちの生活を考え直すきっかけを与えてくれる。
元のインタビュー動画はこちら
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