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経済書(10):日本の成長戦略

今回は比較的最近出された日本の成長戦略について、政府・コンサル会社のレポート・書籍を紹介したいと思います。

経済産業政策新機軸部会

まず始めに政府の産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会から第3次中間整理が2024年6月に公表されました。

https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shin_kijiku/pdf/20240607_3.pdf

あまりメディアでは取り上げられていませんが、報告書を読んでみると、政府からの提言として、かなり気合の入った包括的な内容でした。

経産省は、日本経済が進むべき将来見通し(シナリオ)をまとめた。経済産業政策新機軸部会の第3次中間整理(案)によると、「失われた30年」が続くと日本は40年ごろに新興国に追い付かれると警鐘を鳴らす。一方、足元の日本経済は投資も賃金も物価も伸びる成長型経済へ移行しつつあるとも指摘。「政府も一歩前に出て、大規模・長期・計画的に投資を行う」とした。企業は政府支援も受けつつ、国内投資に目配りしたい。

出典:日刊工業新聞 2024/5/2 社説  

前提となる2040年までのマクロ環境分析も世界の地政学リスク、人口動態と雇用問題、インフレ継続、為替(円安)、設備投資・政府補助、賃金水準と幅広くカバーしています。

それらを見据えて、政府としては「GX、DX、グローバル・経済安保、健康、地域の包摂的成長」といった新機軸に戦略投資・支援していく方針を打ち出しています。

2022年6月にも中間報告がされていますが、こちらは以下のWeb記事も参考になるかと思いますので、興味があればご覧ください。


デロイト・トーマス・グループ

次に日本の成長戦略について、コンサル会社がどんな提言をしているか見ておきたいと思います。

まずデロイト・トーマツ・グループが出した「価値循環の成長戦略」です。こちらは前年に出た「循環価値が日本を動かす」の続編のようですが、本書でも十分に同社の提言内容が理解できるかと思います。

未来の日本は確実に人口減少していく。その状況下での最重要課題は
「1人当たり付加価値の向上」であり、労働投入量が減っていっても時間当たり生産性を伸ばすことで潜在成長率を伸ばしていく。つまり、日本全体で生み出す付加価値を高めることにあると提言しています。

そのためにカギとなるのが「ヒト・モノ・カネ・データ」の循環により、新たな価値を生み出すにあると説いています。
この考え方を彼らは「人口減少下でも一人ひとりの豊かさや幸福感の持続的な向上を実現し得る」成長のシナリオ「循環型成長モデル」と呼んでいます。

そして、今後、日本全体で付加価値を高められる新市場、日本の勝ち筋として、7つの「成長アジェンダ」を掲げています。
1.モビリティー 2.ヘルスケア  3.エネルギー 4. サーキュラーエコノミー
5. 観光 6. メディア・エンターテインメント 7.半導体

前述の経済産業政策新機軸部会の中間報告とは5,6は経済産業省の管轄でないからかもしれませんが、それ以外の5領域はほぼ合致しています。


A ・T・カーニー

もう一つ、別のコンサル会社の提言も見ておきたいと思います。A・T・カーニーが主要業界別に成長戦略の提言を行った書籍です。

本書で取り上げられている産業・業界は以下の14です。
①通信、②生成AI、③メディア・コンテンツ、④化学、⑤半導体、⑥重機械・産業機械、⑦エネルギー、⑧ヘルスケア、⑨不動産、⑩観光、⑪FMCG、⑫アパレル・ラグジュアリー、⑬小売、⑭銀行

各業界の章は、現状や課題分析に始まり、今後の見立て・戦略的な提言をコンパクトにまとめています。

つぎに、業界横断テーマとして、以下の7つが上げられています。
⑮サステナビリティ、⑯M&A、⑰E2Eオペレーション改革、⑱サプライチェーン、⑲デジタル、⑳企業価値創出、㉑組織変革

いずれも同社の現役コンサルタントによる最新の知見が盛り込まれていて、他業界の事例であっても事業戦略部門にいる方には業界分析のフレームワークとしても参考になるのではないでしょうか?

まとめ

これらの資料や書籍を見ていると、「失われた30年」と言われてきた日本も捨てたものじゃない。
技術力を有し、勉強熱心な国民性を持つ日本が、新たな成長戦略をもって未来に臨んでいけば、企業も個人も付加価値の高い豊かな未来を築けるはずと期待しているのですが、皆さんはいかがでしょうか?


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