経営戦略総論(7):起業家から事業家へ
今回は最近になって購入し、読了した書籍「起業大全」から読後録とそこから考えたことを投稿したいと思います。
起業大全 事業化に向けて(1→10)
すでに2年ほど前、2020年7月に発刊されていたようなのですが、寡聞にしてこの本の存在を知りませんでした。
1か月ほど前にネット記事で読んで興味をもったので、図解(スライド)も多いことから書籍版を購入して読んでみました。B5判で416頁はかなりのボリュームで、内容的にも「大全」に相応しい本かと思います。
この本の著者 田所雅之氏は複数のスタートアップを立上げ、ベンチャーキャピタルのパートナーも経験しているいわゆるシリアル・アントレプレナーの方のようです。
この書籍ではビジネスを立ち上げた後、この製品・サービスで事業を進めていこう!というある程度の方向性が見えた段階(Product Market Fit)以降、いかに事業を成長路線に持っていくかについて、スタートアップ・バランスドスコアカードとして整理し、経営者・事業家の視点で網羅的かつ詳細にガイドしています。
私自身は大手企業の中で長年、事業責任者や事業企画の仕事を担っていますが、1~9までの要素をそれぞれ理解し、有機的に結合させることの重要性は骨身に沁みて理解しています。事業モデルや成長段階における組合せ要素の最適化や整合性について自身の権限の及ぶ範囲で慎重に配慮してきました。(組織開発フレームワークとしてのコングルエンス・モデル)
この本ではベンチャー企業の成長期(1→10)において、売上も組織が大きくなっていく中でも成長スピードを緩めないためには何を成すべきか?
起業時とは異なる個別戦略の必要性と考え方、それらの整合性について、近年の経営理論とその実践をベースに体系的に書かれた書籍としてベストなものだと思います。
ビジネスアイデアからProduct Market Fitまで (0→1)
さて、著者の田所雅之氏はこの著書の前に「起業の科学」というビジネスアイデアからPMF(0→1)までの進め方についても、2017年に本を書かれていて、こちらもベストセラーになったそうです。
私自身は大手企業側でベンチャー界隈とは少し距離があったので、こちらも存じ上げていなかったのですが、著者のスライド紹介サイトを見て、なるほどな。と関心しました。
デザイン思考においても、アイデア出しのフレームワークが整理されてきていますが、イノベーション(2):ビジネスモデル|Nobu-san|note
起業においても「一か八か」から、先達・有識者による有益なフレームワーク・ステップが提示されることは起業を目指す方々にとって本当にありがたいことですね。
最近では大学時代から起業を目指す学生さん・卒業生に対して、様々な知識や有識者ネットワークを紹介する大学側のスタートアップ支援プログラムも数多くあるようです。私が学生時代には考えられませんでしたが、これからの日本にも若い実業家、ユニコーンが数多く出てくることに期待しています。
事業家
さて、最後にこの本で書かれているように「起業家」(ベンチャー企業)もはある段階(PMF以降)から、「事業家」に進化して、複数CXOを軸とした経営体制にうまく移行していかないと事業がスケールせず、会社の成長が止まる。最悪の場合、数多くのライバル会社も出てくる中で沈んでいく可能性が高いようです。
以前のnoteで、イノベーションをテーマにした私の投稿の中でも、
ベンチャー投資が盛んな米国ではインベンター(発明者)と
イノベーター(変革者)の役割分担、それぞれをサポートする
仕組みが産業構造としてしっかり根付いているのではないかと
考えられます。
と記載しましたが、
成長期における事業企画・事業責任者は事業管理者ではなく、自らもイノベーター(変革者)として創業者やCEOを支え、一緒に事業の大胆なスケールアップを目指せるかどうかが最も大切。と改めて感じました。