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グローバル化(9):フラット化しない世界
米国・欧州を中心にグローバル協調から、自国第一主義・ナショナリズムへの揺り戻しが起こっている中で、グローバル経営に関する良著に出会えたので、今回はその本のご紹介。
VUCA時代のグローバル戦略
2020年に邦訳が出版されていたようなのですが、最近まで知りませんでした。著者のパンカジュ・ゲマワット教授は15年ほど前に出された「コークの味は国ごとに違うべきか」があまりに有名なので、久しぶりの続編として見逃されていたかもしれません。
本書を読み進めていると、前書と同様のフレームワークを使っていますが、最近の世界情勢やグローバル企業の事例が豊富にUpdateされています。
そして、その後のコロナ禍や不確実性(VUCA時代)を経て、教授のグローバル経営理論がより立証されています。
個人的には世界地図上にGDP規模の推移やIT/BPOサービス規模、新車登録台数などを面積比で表した図表とそこからの洞察がわかりやすく、市場としてみれば「世界はフラットではない」と改めて感じました。
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前作「コークの味は国ごとに違うべきか」の書籍と要約ブログも参考までに載せておきます。
グローバル経営の基本戦略
さて、本書並び前書であげられたパンカジュ・ゲマワット教授の基本戦略・フレームワークを紹介しておきます。
CAGEフレームワーク
完全に「フラット化した世界」ではなく、セミグローバリゼーションしている世界では、以下の4つの分析軸(差異)で考えることが、企業戦略上、重要だとされています。
C:文化的隔たり Cultural
A:行政的隔たり Administrative
G:地理的隔たり Geographical
E:経済的隔たり Economic
CAGEフレームワークによる分析は国レベルだけでなく、業種レベルや製品レベル、そして企業(経営)レベルでも有効だと本書では説いています。
もう少し具体的な事例・解説が以下に載っていましたので、こちらもご参照ください。
AAA戦略
こうした国ごと・民族ごとの差異をグローバル経営の中でどう乗り越えるか、活かしていくのかについて、教授は3つの戦略を提示しています。
Adaptaion:適応戦略 差異を調整する(多様化・絞り込み・外部化等)
Aggregation :集約戦略 差異を克服して国境を越えた規模と範囲の経済
を利用する方法を見出す
Arbitrage:アービトラージ戦略 差異を逆に利用する
UNITED組織
最後にこうした世界市場の隔たりを克服して、グローバル企業の結束力を高めるためには、組織構造や経営陣の人員構成以外にも、以下の5つの分野に注目すべきとしています。
Unifying Culture : 求心力のある企業文化
Networked Innovation : ネットワーク化されたイノベーション
Technology enablers: テクノロジー・イネーブラー
Expartriation and mobility:海外派遣と人材移動
Development programs: 人材育成プログラム
フラット化する・しない世界
本書では世界が完全にフラット化するには数十年というより数百年単位でかかる、未来永劫来ないことを前提として、現代の企業はセミグローバリゼーションを念頭にグローバル戦略を考えなければならないとしています。しかし、教授は世界がフラット化の方向に進むことを真っ向から否定したわけではないようです。
その意味では「フラット化する世界」を世に出したトーマス・フリードマン氏は慧眼のジャーナリストだったと思います。
一方、トランプ大統領が就任した米国だけでなく、欧州でもナショナリズムが勢いづいているのは世界経済にとっても世界平和にとっても不気味な足音を感じてしまいますね。
最近、こちらの本も購入して、ちらちらと眺めているのですが、いまも続くガザ地区やウクライナでの紛争だけでなく、過去からいま現在でも世界各地で紛争や戦争は絶えたことがありません。それぞれの理由や背景はさまざまですが、平和な日々が世界の多くの人々に訪れることを心から祈っています。